ぴんから兄弟の宮史郎さんが亡くなった。わたしは、べつにファンではないし、わたしの帯広駅前のレコード店は、演歌が不得手だったから、訃報に悲嘆にくれるというわけではない。だが、母が店長のステーション・デパート店では大いに売れた。70年代の初頭、わたしたちの会社には、ありがたい商品だったのだ。だから、ある感慨がある。
なんどか書いたが、わたしは、長いあいだ一般の音楽ファンとは違う聴き方をしてきた。しなければならなかった。好きか、嫌い、良いか悪いではなく。売れるか、売れないか、という判断だ。素人のヒット予想ではない。音楽産業の末端でレコードを売って、その利益で、酒を飲み、子供を育て、生活している。真剣なんだ。仕事だから。
わたしの嫌いな音楽、嫌いなミュージシャンが売れる、という現実も知っていた。
だから、レコード屋をやっているあいだ、音楽ファンとしては、とても不幸な聴き方をして、音楽に関わっていたわけだ。(興行は、好きなものしかやらなかったから、これが救いだったかな)