Ommo's

古い曲が気になる

日本のジャズ・フェスで、ジミー・スミスが「モーニン」を演奏した

2009-07-26 | 日記・エッセイ・コラム

 

きのうは、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズの「モーニン」のことを書いた。youtube にある、日本のジャズ・フェスティバルでの「モーニン」が、なかなかいい。オルガンのジミー・スミスがフューチャーされたブルーノート・ビッグバンドの演奏だ。日野皓正さんも参加している。1990年8月26日、Mt.フジ・ジャズ・フェスの映像だ。 

    ジミー・スミス&ブルーノート・ビッグ・バンド moanin' http://www.youtube.com/watch?v=aYosYlqiBOk&feature=related

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高校生のとき、帯広のジャズ喫茶「エース」にいくと、かならずのようにジミー・スミスの「ザ・キャット」がかかった。

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ジミー・スミス(1923~2005)。ハモンド・オルガンを弾くジミー・スミスは、日本でも人気が高かった。

                   

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わたしが、帯広駅前でレコード屋をはじめた、その年、ウェス・モンゴメリーが亡くなった。このヴァーヴ盤のジミー・スミス&ウエス・モンゴメリーのアルバムは、3年前の発売だったが、よく売れていた。

よく売れていた、といっても、そこはジャズのこと、数はしれてる。サイモンとガーファンクルのアルバムが、月に100枚売れるとすると、このジミーとウエスのアルバムは、3枚くらい、という感じかな。それでも、北海道、帯広の店でジャズのアルバムが、月3枚も売れるのはすごいことなのだ。

そのころ、ヴァーヴ盤のほとんどは輸入盤だった。国内プレスするほど売れなかったのだろう。日本ポリドール(日本グラモフォン)が輸入して、日本語のライナーノートをつけて販売していた。

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このヴァーヴ盤の「California Dreaming 」 は、わたしが高校生のときに国内盤が発売になった。ウェス・モンゴメリーの大ヒットの序章のようなアルバムだった。ジャケット・デザインは、いままでのジャズのジャケットにはない雰囲気だった。あとのCTIのシリーズの先駆的なジャケットだろう。曲は、スタンダードやポップスを選んで、オーケストラをバックにウェスのギターが演奏される。1966年のことだ。

このヴァーヴ・レコードでのウェス・モンゴメリーの成功もあって、プロデューサー、クリード・テイラーは、新レーベルCTIをつくる。

そのA&M(CTI)の最初の大ヒットが、ウエス・モンゴメリーのシリーズだった。それはもうジャズのレコードの売れ方ではなかった。

一般の音楽ファンにバカ売れするのが不満なのか、サウンドが軽いと気に入らないのか、ジャズ評論家には不評で、ボロクソに書かれた。ちょうどフリー・ジャズが持ち上げられていたときでもあった。このウェス・モンゴメリーの音楽は、イージーリスニング・ジャズといわれた。

しかし、音楽評論家がなに言おうと、そんなことは一般のお客さんに何の関係もない。売れに売れた。

きっと、クリード・テイラーも、ウェス・モンゴメリーも、もう“ジャズ”をやってるつもりはなかったのだろう。

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このCTIレーベルの3枚のアルバムが大ヒットしている、そのさなか、ウェス・モンゴメリーは突然亡くなった。心臓発作といわれているが、さまざまな説がある。45才だった。

ウェス・モンゴメリーが亡くなったあとも、このCTIのアルバムは売れつづけた。わたしがレコード屋をやめる、CDの時代になるころでも、この3作は基本在庫だった。

ウェス・モンゴメリーが切り開いたギター音楽のジャンルは、ジョージ・ベンソンが引き継いだといえるだろう。

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ウェス・モンゴメリー(1923~1968)

     ウェス・モンゴメリー Jingles http://www.youtube.com/watch?v=IXOrj7QAc8M&feature=related

     映画「Get Yourself a College Girl 」の中で演奏するジミー・スミス http://www.youtube.com/watch?v=99DpjjJ22UA&feature=related 

                       

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ジミー・スミスやキース・エマーソンやリック・ウェイクマンが弾いてるハモンド・オルガンは、エレクトーンやシンセサイザーとは根本的に違う。電子音じゃない。ごく機械的、物理的な音源を増幅している。歯車状の回転する円盤(トーンホイール・ジェネレーター)の磁界の変化を電磁マイクで拾うのだ。エレキ・ギターの弦とピックアップの関係とおなじようなものだ。

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ジミー・スミスが使っているB-3というハモンド・オルガンは、91枚の円盤(トーンホイール)が、モーターで回っている。だから、電子オルガンというより、電気オルガンか、電動オルガンというべきだろう。増幅と音色変化のための電気回路には、真空管アンプをつかっている。

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これは、Pari.E社のオルガンのトーンホイール。

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ジャズやR&Bやロックの場合、このハモンド・オルガンに、レスリーの回転スピーカーを好んでつかう。レスリーのロータリー・スピーカーは、ボックスのなかにモーターが2個はいっていてスピーカーを回転させる。独特の揺れのある音をつくる。

これも電子的に音を変化させるのではなく、ごく機械的、原始的に、スピーカーそのものを振り回して揺れのある音をだしている。だからハモンド・オルガンとはよく合うのだ。いまもオルガンのほかに、ギターにもつかわれているから、製品が発売されている。

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高音用のスピーカー(ツィーター)、この機種ではベルトで駆動されて回転する。下段の低音用スピーカー(ウーファー)は、円筒が回転する。円筒に隙間が空いてる。

1970年代、ハモンドは、この機械的なトーンホイールをつかったオルガンの生産を終了した。世の中のほとんどすべてのキーボード楽器は、シンセサイザーなどのように、電子発振音をつかったものになってしまった。

ハモンドは、日本の鈴木楽器製作所が買収して、スズキ・ハモンドになり、ここでハモンド・オルガンを製造している。しかし、もうトーンホイールはつかっていない。トランジスタ回路でサンプリングしたデジタル音をつかっている。だから、かってのハモンドの力強い音は再現できてない、ともいわれる。それで、日本でも古いハモンド・オルガンが人気があるらしい。

ところがいま、ベルギー人のRarieという技術者が、イタリアで、ハモンド・オルガンとまったくおなじトーンホイール・ジェネレーターをつかったオルガン、Electromagnetic Organ を生産している。Rari.E というメーカーだ。電気回路は、トランジスタではなく、真空管をつかっている。

ハモンドのブランドを買収して、エレクトロニクスのテクニックで、ハモンド音を再現しようとする、日本人。発明された1930年代当時のメカニックそのままを再現して、ハモンド・オルガンの音をよみがえらせようとする、ヨーロッパ人。音楽や楽器に対する考え方、音楽商売の姿勢の違いがよくでている。

                       

ハモンド・オルガンは、軽量で持ち運びができる、パイプ・オルガンに近い音の楽器として、発明家のローレンス・ハモンドでよって開発された。1934年に発売になると、パイプ・オルガンが買えない貧しい黒人地区の教会で普及した。だから、最初からゴスペルとともに歩んできた楽器だった。ジミー・スミスのような黒人のオルガン・プレヤーには子供のころから身近な楽器だったはずだ。R&Bやゴスペルにハモンド・オルガンがよくつかわれたのも、黒人にとって慣れ親しんだサウンドだからといえる。

        Pari. のエレクトロマグネティック・オルガン K-61 とRotary ・スピーカーhttp://www.youtube.com/watch?v=6ybYzTsQ360

   おなじくPari.K-61とレスリーのスピーカー147による「青い影」  http://www.youtube.com/watch?v=VCIN1OJkNbg&feature=related 

   ススキ・ハモンド http://www.suzuki-music.co.jp/product/14.htm

   イタリアのオルガン・メーカー、Pari.E http://www.parieorgan.it/     


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