★飛び込み記事です★
■お椀:毛蟹のしんじょう、おくら、加賀太胡瓜
四品目、この美しい椀の蓋をとるまでに、楽しい学びが、いくつもありました。
時計を巻き戻してみましょう(ニッコリ)。
お道具だてが運ばれてきます。五徳の上には濾紙をはさむ笊、下には硝子鉢。
「三つの節で、これから出汁をひきます。」
丁寧に選び、鰹節をかく木山さん。うん、香りが幸せ。お客様から歓声がこぼれます。でも、これは我が家にもある香り(笑)。
おや? 一律ではなく、あえて長短厚薄を、分けて掻いているように感じました。
「まず、あらぶしを、それから、かれぶしを掻きました。どうぞ。」
ひとひらづつ、順番にお客様に手渡して。時間差で節の違いがわかるよう、二週されて。
しゃりしゃり。鼻に抜ける香り。
うん。あらぶしには、鰹だった強さが未だあるように、私は味わいました。
うん、かれぶしは、いつもの鰹節、掻き立ての鰹節。ただし、我が家のよりは、ぐっと上等で、上手に掻いたなぁ(笑)、と実感する旨さがありました。
荒節(あらぶし)はカビつけ前、本枯れ節(かれぶし)はカビつけ熟成を何度も繰り返し、さらに寝かせて好みに加減していくもの。
鰹節は用途に応じ、様々な特徴をもって育てられ、使われています。料理に応じて、その用途は違う、という事実はわかっていたつもりでした。
が、木山でこの夜、改めて考えました。我が家、鰹節をかきます。出汁をひくためと、最後にかけるための、二種類の鰹節を使っています。昆布も椎茸も理由をもって使い分けてきました。昔からの日本橋の乾物屋さんで、もう、長いこと、そうしてきました。(微笑)
だから、出汁をひく様を目前で体験する、のは、何故か? 正直、最初は不思議に思いました(笑)。
ですが、あらぶし、かれぶしと、その個性ある味を、改めて噛んできて、はっ!としました。
「三つで出汁をひく」といった…。
ここに、もう一つ、何かをあわせて、出汁を組み立てるって、考え方を、いま見せて貰っている、んだ。
何を足す?
あれぶしは生きる鰹の強さ、かれぶしはきちんとした旨さ、あと、いるものは何? 華やかさ? 異質の甘さか? いや待て、椀つゆが、そんなに主張するか?
……… 木山さんが、掻いたのは、まぐろぶし、でした。
ひとひら。また、手渡されて。しっとりした堅さを感じたような、鰹節と違う甘さ、旨味の質をもつような…。
長く綴ってきましたが、実は短時間だと思います(笑)。ここで、写真を思い出しました(笑)。
行平には、熱感のある昆布出汁があり、そこへ掻きたての、あらぶし、かれぶし、まぐろぶしを、手ばかりしながら加えていきます。
火をかけない。呼吸を数えて、味をみて、そして濾紙笊を通す。
金色の出汁が、硝子鉢に満ちています。
そうか、昆布出汁に鰹節系の複雑さを、えぐみ無しに載せる組み立てなのか?
木山さんが、金色の出汁をすこしづつ、ついでくれました。
あらぶし、かれぶし、まぐろふし、昆布の合せ出汁。深い香りと、風味ある液体です。滋味といえる。しみじみします。
ですが、まだ、椀のつゆではない…。
硝子鉢は調理場にいきました。味見したちょくも下がりました。
このはかない味を覚えて、待とうと思いました(ニッコリ)。
かくして、最初の写真に至ります(ニッコリ)。
お椀の蓋をとる。豊かな香りに深呼吸。目に美しい。静かに一吸い…ああ、美味しい……。
……… 塩! 塩をもって、出汁は汁(つゆ)となるっ! ああ、真実だ。いま、出汁は立体になる。組み上げた品が味を形つくる。
椀種の吟味はあれど、それに先立つ汁の形が独立にある。だから、椀種をおき、汁をはる、と考えるのか!
さらに、椀種とのコラボレーションを見込んだ、汁の形も、又、出来ていなければならないのか。
これは怖い……凄みある仕事。ああ、だから、西さんのお椀だけの本には、情念を感じたのだな…。
会席のお椀は花と、ずっと楽しんできました。出汁も、我が家では毎日ひきます。でも、気づかなかった…。
本で読んでいたはずの知識が、一気に繋がった瞬間でした。
吸物であるという意味の深さ♪
そして、味噌汁の意味も考えてみようと思いました。くつくつと具材を煮て、そこに味噌を溶きいれる意味も。
料理は常に科学です(ニッコリ)。
様々な言葉が頭の中を飛び交いながらも(笑)、しっかり、お椀を楽しみます。
しんじょうのフンワリは幸せ♪ それを含みながら、吸うつゆは、もっと幸せ♪でした。
(長い長いテキストを読んで下さって、ありがとうございました。ニッコリ)
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