tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

雇用の危機からの早期脱出を:働く人間の視点から

2014年05月13日 22時32分32秒 | 労働
雇用の危機からの早期脱出を:働く人間の視点から
 20円幅の円安が実現し、企業が何とか一息ついてから1年、企業マインドの改善は求人の増加にも表れ始め、有効求人倍率は、リーマンンショック後の0.4台から漸く1を越えるまでに回復しました。 
 
 幸いなことに、当面また急激に円高が進むといった状況は予想されていません。ということは、日本経済は多分回復基調を維持し、その中で、有効求人倍率も1を超えるような状態が維持される可能性が高いということです。

 そうした意味で、雇用の危機は些か遠ざかったということかもしれませんが、これは平均という数字の中でのことで、よく言われますように、現実の世界は「平均」に当て嵌まる人びとはあまりなくて、大体は偏りが大きいのが普通のようです。

 雇用という問題、人間が仕事に就くということが、単に賃金を貰えるかどうかといった単純なことではなく、仕事の中で自分を磨き、人間の成長、社会の安定などなど、広く社会全体の問題に関わるものであることを考えれば、雇用の中身を確りと見ていくことが大事ではないかと思うわけです。

 そんな意味で、残されているいくつかの問題を挙げるとこんなことがあるのではないでしょうか。これらはすべて雇用についての危機感に関わるものでしょう。

① 正規従業員、非正規従業員の問題をどの様に考えていくか。
② 企業の海外展開と国内の雇用の問題をどうとらえるか。
③ 外国人労働力導入の積極化論議をどう考えるか。
④ 大幅に存在すると見られる求人と求職のミスマッチ(仕事の選好み)をどうするか。
⑤ 働くことによる積極的な社会貢献の意義をどう考えるか。
などなど。
 
 こうした問題は、勿論働く人だけの問題ではなく、最近規制緩和論議の盛んな政府の政策の問題、それも、一般教育、職業教育から、雇用・職業に関わる各種の政策まで幅広い分野に及び、同時に企業の雇用についての理念や方針と密接に関わるものです。

 しかし同時に、日本人一人一人が「働く」ということについて、どれだけ確りした考え方を持つかが、こうした問題の望ましい方向を定めるために、大きな役割を担っていることも否定できなしでしょう。

 日本人は、キリスト教をベースにする西欧の考え方(労働は原罪への償い)とは違って、「働くこと」について肯定的・積極的な意義を認めて来ました。「仕事とは人としての道を究めること」よく言われる「○○道」といった思想です。

 経済が長らく停滞したとはいえ、豊かになった日本、経験した長期不況という悪条件、その中で生まれ、た働くことについての暗いイメージ、さらにマネー万能というアメリカからの洗礼などに囲まれ、日本人の本来の「働くことについての考え方」も一部かもしれませんが、汚染されているように思われます。

 自分たちが働くことによってこそ、明るい社会が開けていくという、前向きなイメージと気概を持って、日本経済社会の新たな発展と、人類社会への貢献を主体的に考えるような仕事観を改めて確立することが、雇用の危機からの脱出の仕上げに必要なのではないでしょうか。