このブログでは、毎月の消費者物価指数の動きを追っていますが、お米の価格に異常な動きがあると気付いたのは昨年8月の消費者物価指数の発表の時です。
それまで順調に下がって来ていた「生鮮とエネルギーを除く総合」が、対前年同月比で1.9%と2%のインフレ目標を切った所から上昇に転じ2.0%になったのです。
この数字の発表は9月の20日ですが、皆様ご記憶のように8月には日銀が、物価の安定が確認されたという事で政策金利の上昇の方向に政策変更を発表した直後です。この時の消費者物価指数の調査では「うるち米」が30%の値上がりで、理由は流通の問題で新米が出れば収まるというのが政府の説明でした。
若しコメの値上がりがなければ0.1%ほど低かったのではと書いて、日銀の見ているコアコア物価の安定は確実という見方をサポートしています。
ところが、その後の状況は全く違って来ました。毎月の消費者物価指数の発表ごとにお米の価格は上がり対前年の値上がり幅は30%が50%、60%、70%と際限なく上昇、ことし2月15日にはこんなグラフを載せ、米価値上がりの異常さを示しました。
政府の説明は、その後もコメの作柄は平年並み、「値上がりの原因は流通段階のトラブル」などと納得いく説明はなく、マスコミや民間調査機関などから中間業者が高値で買っている、現場では品不足で、買い手が増えて行方不明のコメがある、などの状況が報道されました。それなのに政府は年末までだんまりでした。
その後、政府は一体何をしているのだという世論を背景に、農水省が備蓄米放出を発表したのは半年遅れの先月になっての話です。
備蓄米の放出は、なるべく値下がりしないように(?)少量で、買い戻し条件付きとか言われました。
そんな中で注目を引いたのは、大手の外食チェーン何社かが、コメを国産から輸入に切り替えたというニュースです。
外国産でも、国産に引けを取らないような味の出せるコメもあり、国内産がこんなに値上がりしては、外国産の方が安いという事のようです。
これはどういう事でしょうか。まず価格決定要因で一番基本的な需要と供給を見てみましょう。
まず需要ですが、コメの需要は統計を見れば傾向的に年々減少しています。主食用のコメの需要量は2010年には820万トン、2020年には704万トンです。昨年から今年にかけては700万トンから691万トンと予測されています。
一方生産量も減少傾向ですが、2023年1,136万トンで、これで主食用、米菓や酒造りなどを賄っているのです。昨年の作柄は平年並みです(以上は農水省資料)。
これが需給の概況ですから、最も価格決定に基本的なコメの「需要と供給」の面から考えますとコメ不足や値上がりは到底考えらえません。
パンやうどんが値上がりしたから割安になった米食に日本人が戻ったという説もあるようですが、皆様のお宅ではどうでしょうか。
70%も値上がりしたコメ値札は恨めしいがそれでもでも、やっぱり否応なしにコメを買って夕食は米の飯という家庭が多いのではないでしょうか。
インバウンドが急増して寿司を沢山食べるからコメが足りなくなるという珍説まで出ましたが、親切に計算してくれえる人がいてせいぜい3万トンぐらいだそうです。
そうなると、やっぱり農水省が言うように、流通段階の問題になりそうです。だれか影響力のある人か組織が、「コメが足りなくなる」という情報を流し、流通段階のどこかが在庫を増やしたという事でしょうか,行方不明のコメがあるとの情報もありましたが日本人の主食のコメの流通管理はどうなっているのかという事になります。
さてそうなりますと、何処かに備蓄されたコメがあり、それが値上がりの元凶(あるいは結果)という事になるのでしょう。
そうであれば、次に起きる事は何でしょう。需要が増えないものを持っていれば、値段が高いうちに売らなければという事になるでしょう。先日TVで早場米の田植えをやっていました。トラクターの人は「6月には新米の出荷です」といっていました。コメが値上がりしてので、作付面積は増えるようです。
何処かに備蓄されたコメはどうなるのでしょう。古米古古米は、値段が下がります。行方不明のコメが突如出て来たらお米の値段は暴落の可能性が大きくなります。
今回のコメの値上がりを経済理論から見ればこうなるしかないと思うのですが、誰か、7割上がったお米の価格を維持することが出来る人か組織があるのでしょうか。
このブログは、自由経済原則に従って、米価暴落必至論に与します。