tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2017春闘の判断基準を考える

2017年01月11日 12時24分33秒 | 労働
2017春闘の判断基準を考える
 経団連の2017年版経労委報告の最終案も決まったようで、政府の賃上げ奨励、政府主導路線、連合のキャッチフレーズ「底上げ・底支え」、経団連の「賃金引き上げについての昨年より踏み込んだ表現」(経労委報告発表待ち)がいわば三つ巴になって、年度末に向けて戦わされて行くことになるでしょう。

 賃上げの景気刺激、経済成長への効果については政府が最も気にしているのかもしれません。政府は出来るだけ賃上げが大きい方がいい、総額人件費が増えれば、それが消費増加につながるだろうし、場合によってはコストアップでインフレにつながっても、目標の2パーセントインフレに近づくので、それでもいい、といった願望でしょう。
 
 経団連は、政府の端的な賃上げ指向に一応賛成しながら、経済の先行きがますます不安定化する中で、賃金の固定的な部分(月例給)は出来れば余り挙げたくない、しかし現状利益は高水準、労働分配率も下がっているので「上げられるところは…」いろんな形で上げてほしい、その上で、政府があれだけ言うのだから、ベースアップも視野にというところをどのくらい強く言うか辺りに工夫を凝らすといったところでしょうか。

 連合は、基本的には賃上げは多い方がいいが、日本経済との整合性も考え、定昇プラスベア(2%+2%)を基本線に、スローガンとして掲げる「底上げ・底支え」、格差の是正、サプライチェーン全体の付加価値の適正分配(中小へのしわ寄せを認めない公正取引)を昨年に続けてより明確に掲げ、中小企業への力点、非正規労働者の賃金上昇を重視しています。

 それぞれの立場に属する方は、矢張りそれぞれの立場を肯定するのかもしれませんが、「支払い能力シリーズ」でも述べていますように、政労使、三者とも最も重要で、共通な目的は日本経済の安定した、少しでも高い経済成長の実現でしょう。
 GDP,あるいはGNI(国民総所得)が、賃金、利益、税収すべての原資なのですから。

 という事で、この政労使共通の目的に最も適した主張はどれかという事を、僭越ながら考えてみましょう。

 政府は、賃上げが増えれば消費が増えると単純です。インフレになって消費が増えてもいいというのかもしれませんが、それでは生活水準は上がりません。
 しかも統計で見れば、このところ毎年賃金は上がっていますが、消費は減っている状態です。原因は「 消費性向」が低下しているからです。
 その原因として指摘されているのが 格差社会化と将来不安(特に雇用不安)です。これを政府は殆ど解っていないようです。

 経団連は、大企業の利益を代表する団体ですから、企業の安定発展が最も気がかりでしょう。人件費は主要な固定費(実は日本経済最大の固定費)ですから、この増加には慎重でしょう。人件費を払えば消費が増えるといっても、増える人件費の方が大きければ減益です。政府の顔も少しは立てるというのが精いっぱいではないでしょうか。

 連合の賃上げ要求が抑制的(経済とのバランスを意識する)なのは、多多ますます弁ずの欧米労組との考え方の違いでしょう。「底上げ・底支え」で格差是正を狙うのは、日本経済成長への重要な視点でもあり、成功すれば、消費性向の改善につがるものです。
 中小・非正規の賃上げ注力もその一環で、関連する下請との公正取引の主張は立派です。
 一つ、非正規の賃金上昇が前面で、非正規の正規化が、些か弱く見えるのは残念です。
 統計上は「不本意非正規」は少ないのですが、出来れば正規という潜在願望はもっと強いはずです。
 正規と非正規は 賃金の決定基準が違います。連合にはもっと非正規の正規化に力を入れてほしいように思います。

 さて、政労使、三者のどれが、本来の「あるべき春闘」の姿に近い主張なのでしょうか。

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