tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

就職内定率上昇、よかったですね

2021年11月19日 22時47分02秒 | 労働
日本独特の統計に「就職内定率」というのがあります。
大学卒については民間企業にリクルートが毎年、翌年の卒業者について毎月発表しています発表しています。こんな統計を取っているのは多分日本ぐらいでしょう。

日本では、企業は先ず良い人を採ろうというので、来年卒業する学生を、卒業前から試験や面接をして「採用内定」を出します。
学生は来年4月から行く会社が決まりますから、学生生活の最後を安心して過ごせます。

大変結構だと思うのですが,安倍政権肝いりの「働き方改革」では、仕事の経験もない即戦力にならない学生を纏めて採用するなどは無駄だと考えているようです。

しかし、日本の大学や企業の考え方からすれば、人生で授業料を払って勉強する時期から、社会のために働いて給料をもらう時期という大転換の時期ですから、その移行期をスムーズにすることは非常に大事だと考えるわけです。

人間一人前になったら、社会のために働いて、社会の役に立っているという証拠が給料だという事でしょう。

欧米では若年層の失業率は平均失業率の2倍ぐらい高いのが一般的で、それだけ、「授業料支払」から「給料の受け取り」への転換期で躓いているということになります。

欧米では、新卒一括採用はありません。職務給(ジョブ型賃金)が一般的ですから、仕事ができる即戦力でないと就職ができません。

日本では無垢の素材(人材)を採用して、企業が、仕事や社会人としての生き方を、新入社員教育を皮切りに教え込んでいくという社会人教育と職票教育を引き受けてくれているのです。

なぜ日本の企業はそこまでやるのかといいますと、日本企業は基本が人間集団で、企業というのは人間が集まって協力してやるもの、つまり人間中心だと考えているからです。

欧米企業は、基本的に職務が中心の組織で、それぞれの職務に、それができる人がついて稼働する、つまり人間は職務遂行のために必要という職務中心主義です。

こうした違いは、日本と欧米の伝統文化の違いからきていることです。日本のように企業は人間の集まりという文化の中では日本型の採用システムが合理的です。いい人を集めたいという事で新卒一括採用が一般的なのです。

その日本で、「働き方改革」が推奨するように、企業が新卒一括採用をしなくなるとどんなことが起きるでしょうか。

新卒の時点で、企業という人間集団に参加出来なかった人が増えるでしょう。、社会に役立つ仕事が働きながら身につくという企業の教育訓練システムかラ疎外され、無技能でもできる単純業務を転々とするのが社会人のスタートになる可能性が高くなるでしょう。

若年層失業が欧米並みに増えるでしょうし、企業内教育のシステムに乗れない、職業能力の蓄積の出来ない人が増えるでしょう。

日本でも、偶々就職氷河期に卒業した人の中にはそうした不運に見舞われた人が出てしましました。昨今「80・50問題」などと言われるケースがそうです。

もう舶来崇拝の時代はとうに過ぎているはずですが、日本の伝統文化、それに根差す日本の企業文化といった人の心につながる問題の十分な理解もなく政策を考えるような事の無いようにお願いしたいものです。

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