tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「経済成長」か「格差社会化阻止」か:政労使の対応

2016年01月30日 11時04分41秒 | 経済
「経済成長」か「格差社会化阻止」か:政労使の対応
 今春闘で目指す「より良い社会」とは、どんな形の「より良い状態」が望まれるのでしょうか。
 政府は(財界も)「デフレ脱出を確実にする」、「経済の好循環を目指す」と言っています。
 このブログでは繰り返し述べていますが、日本経済はすでにデフレは完全に脱出しています。もともと日本経済がデフレになったのは、プラザ合意の円高のせいです。日本の賃金も物価も、世界一高くなったので、それが国際水準に鞘寄せする過程がデフレでした。

 しかし、今の$1=¥120円あたりの水準で、「円高のせいで日本の物価は高い」という人は多分いないでしょう。デフレの原因は消えたのです。
 真面目に働き、世界トップクラスの技術開発力を持ち、生活を楽しむことも知っている日本人が作る日本経済社会では、再び円高にならない限りデフレの心配はありません。

 あえて心配すれば、日本人が過度に貯蓄に走り、消費不足になることでしょう。それでも真正デフレ(物価が傾向的に下がり続けること)にはならないでしょう。もう、デフレ脱出は終わっているのです。

 もう一つの政府の言う、経済の好循環ですが、これは経済学的に言えば、「貯蓄=投資」と「消費」とがバランスよく成長する均衡成長(balanced growth)に近づくことでしょう。
 この点については今の日本経済の状態には、当面、投資の遅れがあるとと思います。

 政府は、企業の資本蓄積の増加に対して投資が遅れているのはまずいということで、企業にもっとどんどん投資をせよと要請しています。
 しかし今の企業の資本蓄積の増加は何から来たのでしょうか。その太宗は、2回にわたる20円幅の円安によるwind-fall profit(思わざる利益)でしょう。

 これをどう使うかは慎重に考えなければなりません、まさに「奇貨居くべし」で、いま企業は、その蓄積資本の活用について、中・長期の計画の検討中でしょう。偶々金ができたからと無駄遣いすることは禁物です。
 この資本蓄積をベースにして、堅実な技術開発、設備の高度化に繋げていく能力は日本企業には十分備わっていると思います。
 その実現には、あえて些かの時間をかけ慎重に計画するべきでしょう。

 現政権は選挙もあり、何はともあれ「はやくはやく」と民間労使を急かせますが、昔から「急いては事を仕損じる」という諺もあります。
 多少時間はかかるかもしれませんが、日本企業の大勢は、誤りない方向に進んでいくとtnlaboは見ています。

 その意味では、経団連が、最後のところで「年収ベースで昨年以上の賃金上昇を」と言っているのは、「本当の本気」ではないように思います。
経団連も、非正規労働者の正規登用や中小企業も含む多様な労働環境の改善を政策課題に掲げていますように、格差社会化には懸念を持っています。賃金を上げられるところはどんな形でもいいから上げて、上げられないところとの格差が拡大することは健全な消費拡大にもプラスではないのではないかという気持も持ちながら、政府の顔を立てているように思えてなりません。

 次回は労働組合サイドについてみていきたいと思います。


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