主因は賃上げ圧力の弱まり
随分前ですが、 インフレの原因について書きました。
主要な論点は、次のようなものでした。
貨幣数量説というのがあって、物価は物資の量とお金(貨幣)の量の関係で決まる。単純に言えば、モノの量が変わらなくて、おカネの量が2倍になれば、物価は2倍になる。これは解り易いのですが、現実の説明にはあまりなりません。
では、現実になぜインフレが起きるかというと、理由は限られていて、第一に戦後の日本のように、物資が絶対的に不足している場合ですが、いまの時代、主要国では、ぼあり得ません。(最近「マスク」に関しては少しばかりありました)。
そのほかの理由で起きるとすれば、まず「輸入インフレ」があります。輸入品が値上がりして国内物価に影響するのです。例えば、原油価格が上がって、国内で電気代、ガス代、ガソリンや灯油代が上がるといった状況です。これは最近の日本でもあります。
ただし原油が値下がりすれば逆になるので、永続的なインフレにはなりません。
もう一つは、国内で起きるコストプッシュインフレです。コストといっても、一般的には賃金コストで、「賃金コストプッシュインフレ」です。
実は、これが世界各国で起きるインフレの太宗を占めていたのです。
典型的なのは、輸入物価が上がって、輸入インフレが起きた場合、その分生活が苦しくなるので、賃金を上げろという事になります。経営者も、物価が上がった分は補填してやらないといけないな、という事で賃上げをします。そしてその分コスト高になりますから、値上げをします。
値上げをすると、またその分は補填してやらなければという事になって、所謂「賃金と物価のスパイラル」が起きます。
かつては、労働組合運動の力が強かったり、物価上昇分は補填するという制度があったりして(エスカレーター条項などといわれます)、主要国でも石油危機で原油価格が上がったのをきっかけに、賃金・物価スパイラルが起きていました。
しかし、その後わかってきたのは、賃金が上がって物価を上げようとしても、国際競争で物価が上げられないという現実です。その結果が「 スタグフレーション」でした。
アメリカもヨーロッパ諸国も。 これで徹底的に苦しみました。
その結果、よその国より余計に賃上げをすると、結果は自分に降りかかってくる事が解り、労働組合も、その現実を無視することが出来なくなったのでしょう。元気のいい賃上げの動きは影を潜めて来ました。
世界中で賃上げの労使交渉がニュースになるようなことはなくなり、日本でも春闘は静かで、厚労省の主導で最低賃金だけは毎年3%目標で上げて来ましたが、今年はコロナで引き上げはやめたようです。
無理な賃上げ(国の生産性上昇率を超える賃上げ)が無くなれば、インフレはほとんどなくなるという事が労使も国民も解ってきたのでしょう。これがインフレが流行らなくなった最大の原因のようです。
最近でもインフレをやっている国々といえば、目立つ例を上げれば、ベネズエラ、アルゼンチン、イラン、トルコなどですが、これらの国々は、それぞれの事情で、為替レートが急落した国々です。当然輸入物価が自国通貨では大幅に上昇します。
併せて、国際関係などのために経済状態がよくないと、政府も企業も国民の生活の悪化を防ごうと、賃上げを容認せざるを得なくなり、結果、物価と賃金のスパイラルが起きて経済が一層悪くなっているのです。
一昨日の総務省発表の消費者物価統計を見ても、日本では、政府・日銀の掛け声にも拘らず、インフレの様相は殆ど見えないようです。
政府は不本意でしょうが、国民にとっては結構なことです。
随分前ですが、 インフレの原因について書きました。
主要な論点は、次のようなものでした。
貨幣数量説というのがあって、物価は物資の量とお金(貨幣)の量の関係で決まる。単純に言えば、モノの量が変わらなくて、おカネの量が2倍になれば、物価は2倍になる。これは解り易いのですが、現実の説明にはあまりなりません。
では、現実になぜインフレが起きるかというと、理由は限られていて、第一に戦後の日本のように、物資が絶対的に不足している場合ですが、いまの時代、主要国では、ぼあり得ません。(最近「マスク」に関しては少しばかりありました)。
そのほかの理由で起きるとすれば、まず「輸入インフレ」があります。輸入品が値上がりして国内物価に影響するのです。例えば、原油価格が上がって、国内で電気代、ガス代、ガソリンや灯油代が上がるといった状況です。これは最近の日本でもあります。
ただし原油が値下がりすれば逆になるので、永続的なインフレにはなりません。
もう一つは、国内で起きるコストプッシュインフレです。コストといっても、一般的には賃金コストで、「賃金コストプッシュインフレ」です。
実は、これが世界各国で起きるインフレの太宗を占めていたのです。
典型的なのは、輸入物価が上がって、輸入インフレが起きた場合、その分生活が苦しくなるので、賃金を上げろという事になります。経営者も、物価が上がった分は補填してやらないといけないな、という事で賃上げをします。そしてその分コスト高になりますから、値上げをします。
値上げをすると、またその分は補填してやらなければという事になって、所謂「賃金と物価のスパイラル」が起きます。
かつては、労働組合運動の力が強かったり、物価上昇分は補填するという制度があったりして(エスカレーター条項などといわれます)、主要国でも石油危機で原油価格が上がったのをきっかけに、賃金・物価スパイラルが起きていました。
しかし、その後わかってきたのは、賃金が上がって物価を上げようとしても、国際競争で物価が上げられないという現実です。その結果が「 スタグフレーション」でした。
アメリカもヨーロッパ諸国も。 これで徹底的に苦しみました。
その結果、よその国より余計に賃上げをすると、結果は自分に降りかかってくる事が解り、労働組合も、その現実を無視することが出来なくなったのでしょう。元気のいい賃上げの動きは影を潜めて来ました。
世界中で賃上げの労使交渉がニュースになるようなことはなくなり、日本でも春闘は静かで、厚労省の主導で最低賃金だけは毎年3%目標で上げて来ましたが、今年はコロナで引き上げはやめたようです。
無理な賃上げ(国の生産性上昇率を超える賃上げ)が無くなれば、インフレはほとんどなくなるという事が労使も国民も解ってきたのでしょう。これがインフレが流行らなくなった最大の原因のようです。
最近でもインフレをやっている国々といえば、目立つ例を上げれば、ベネズエラ、アルゼンチン、イラン、トルコなどですが、これらの国々は、それぞれの事情で、為替レートが急落した国々です。当然輸入物価が自国通貨では大幅に上昇します。
併せて、国際関係などのために経済状態がよくないと、政府も企業も国民の生活の悪化を防ごうと、賃上げを容認せざるを得なくなり、結果、物価と賃金のスパイラルが起きて経済が一層悪くなっているのです。
一昨日の総務省発表の消費者物価統計を見ても、日本では、政府・日銀の掛け声にも拘らず、インフレの様相は殆ど見えないようです。
政府は不本意でしょうが、国民にとっては結構なことです。