資本蓄積と経済発展:2つの道筋(1)
日本の家計の金融資産(貯蓄)がこの3月末で1829兆円あり、その半分強が現金・預金だという事を前回見ました。
これに関してよく指摘されるのが、
「日本人は(利息も付かない)貯金ばっかりしているが、欧米人はリスクを取っても資産の増える可能性の大きい株式や投信などの証券・債券に投資している」
「日本人はその点資産のポートフォリオ管理という意識で遅れている」
といった解説です。
かつて、金融庁がNISAについての説明をしている資料でも、そんな視点がはっきり出ています。
この資料の中で金融庁は日本とアメリカ・イギリスの家計資産のポートフォリオの違いを図にしています。数字だけ載せますと
・日本:現金・預金52%、保険・年金29%、株式投信15%、その他4%
・アメリカ:現金・預金14%、保険・年金31%、株式・投信29%、その他26%
・イギリス:現金・預金24%、保険・年金59%、株式・投信12%、その他5%
となっています。
但し、保険・年金の中で、株式・投信で運用しているものを含めますと、株式・投信のシェアはアメリカ45%、イギリス36%、日本19%と日本の少なさが目立ちます。
こうしたデータを示して、NISAの普及を図るという事は、おカネがたまったら、銀行に預けるより株式や投信で運用することを勧めているという事でしょうか。
でも、本当に株式や投信で運用する方が、進んでいるのでしょうか。単に、欧米の方が進んでいるという根拠のない舶来崇拝ではないのでしょうか。
確かに日本では嘗てから「貯蓄から投資へ」という事がよく言われます。証券会社が言うのなら商売ですからよく解りますが、政府や金融の専門家がこぞっていうのは良く解りません。
理由は「銀行に預けて、銀行が専門家の目で見て投資するよりも、素人が自分で投資をしたほうが経済が発展する」という理屈の説明がないからです。
という事で、学校や何かで、「投資についての教育をすべきだ」という意見もあります。
いろいろな事を教育するのは良いことでしょうが「投資の教育」という事になりますと、また一つ大きな問題が出てきます。
それは、いま欧米を中心に、世界では、投資と投機を区別しない考え方が一般的になってしまっていることです。
このブログでは最初から言い続けていますが、 「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」を区別しない考え方が広まり投資と言い条、その実態は投機で、ゼロサムの中で富の奪い合いをし、富める者がますます富む、社会の格差拡大を促進するといったことが一般化しつつあるのです。
マルクスやピケティが旧・新の「資本論」で正義感をもって告発している社会の格差化傾向を促進するのが、今の「貯蓄から投資へ」という標語の背後にあるとしたら、前述の金融庁のNISAの紹介(宣伝)も同列の要素を含むことになります。
こう書きますと、「それは言い過ぎ」「投資と投機は違う」といったご意見が必ず出てくるでしょう。長くなるので、その点は次回に譲りたいと思います。
日本の家計の金融資産(貯蓄)がこの3月末で1829兆円あり、その半分強が現金・預金だという事を前回見ました。
これに関してよく指摘されるのが、
「日本人は(利息も付かない)貯金ばっかりしているが、欧米人はリスクを取っても資産の増える可能性の大きい株式や投信などの証券・債券に投資している」
「日本人はその点資産のポートフォリオ管理という意識で遅れている」
といった解説です。
かつて、金融庁がNISAについての説明をしている資料でも、そんな視点がはっきり出ています。
この資料の中で金融庁は日本とアメリカ・イギリスの家計資産のポートフォリオの違いを図にしています。数字だけ載せますと
・日本:現金・預金52%、保険・年金29%、株式投信15%、その他4%
・アメリカ:現金・預金14%、保険・年金31%、株式・投信29%、その他26%
・イギリス:現金・預金24%、保険・年金59%、株式・投信12%、その他5%
となっています。
但し、保険・年金の中で、株式・投信で運用しているものを含めますと、株式・投信のシェアはアメリカ45%、イギリス36%、日本19%と日本の少なさが目立ちます。
こうしたデータを示して、NISAの普及を図るという事は、おカネがたまったら、銀行に預けるより株式や投信で運用することを勧めているという事でしょうか。
でも、本当に株式や投信で運用する方が、進んでいるのでしょうか。単に、欧米の方が進んでいるという根拠のない舶来崇拝ではないのでしょうか。
確かに日本では嘗てから「貯蓄から投資へ」という事がよく言われます。証券会社が言うのなら商売ですからよく解りますが、政府や金融の専門家がこぞっていうのは良く解りません。
理由は「銀行に預けて、銀行が専門家の目で見て投資するよりも、素人が自分で投資をしたほうが経済が発展する」という理屈の説明がないからです。
という事で、学校や何かで、「投資についての教育をすべきだ」という意見もあります。
いろいろな事を教育するのは良いことでしょうが「投資の教育」という事になりますと、また一つ大きな問題が出てきます。
それは、いま欧米を中心に、世界では、投資と投機を区別しない考え方が一般的になってしまっていることです。
このブログでは最初から言い続けていますが、 「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」を区別しない考え方が広まり投資と言い条、その実態は投機で、ゼロサムの中で富の奪い合いをし、富める者がますます富む、社会の格差拡大を促進するといったことが一般化しつつあるのです。
マルクスやピケティが旧・新の「資本論」で正義感をもって告発している社会の格差化傾向を促進するのが、今の「貯蓄から投資へ」という標語の背後にあるとしたら、前述の金融庁のNISAの紹介(宣伝)も同列の要素を含むことになります。
こう書きますと、「それは言い過ぎ」「投資と投機は違う」といったご意見が必ず出てくるでしょう。長くなるので、その点は次回に譲りたいと思います。
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