tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

資本蓄積と経済発展:2つの道筋(2)

2018年08月24日 17時16分57秒 | 経済
資本蓄積と経済発展:2つの道筋(2)
 前回、資本が蓄積された社会、特に個人(家計)に金融資産が蓄積された場合、社会の動きとしても、個人の動きとしても、蓄積された資本をいかに増やすかという目標に向かって進むことになるのですが、これが格差社会化を招いたりして必ずしもうまく行かないのではないかという指摘をしました。

 例えば、日本の場合、戦後の借金をしながらの高度成長でしたが(東海道新幹線建設では世銀の融資を受けました)、1980年代の蓄積社会には、アメリカ国債の最大の保有国などと言われました。

 さぞかし利息が付いただろうと思うのですが、1985年のプラザ合意以降、円高が進んで、円の価値はドルに比べて2倍になりました。これはアメリカ国債の価値が円で言えば半分になったという事です。ギリシャやアルゼンチンではなく「覇権国・基軸通貨国アメリカの国債」を持っていても、こんな資産の損失が起こるのです。

 今世紀の初頭、アメリカは「グリーンスパン・マジック」などと言われる金融手法で好況を続けました。世界中の銀行がアメリカの証券を買いました。しかしその証券の中には「サブプライムローン」という毒が入っていて、格付け会社が揃ってトリプルAをつけていたのに価格が暴落、世界中の銀行の資産に大穴が空き、日本でもメガバンクは3行という金融再編になりました。資産運用でアメリカの証券を組み込んだ投信などを買った家計は大損でした。

 こんな経験に懲りたのでしょうか、日本の家計は元本保証の銀行預金選好です。
 これに対して、前回も指摘しましたように、アメリカやイギリスの家計は、株式や投信といった証券投資が主流です。
 
 いずれにしても、経済の発展の原則を考えれば、蓄積した資産は新たな経済活動に投資し、その活動の成果の中から、利息や配当、株価の値上がりといったリターンを得るという事を誰しも考えるのです。

 こうした資産運用のプロセスの説明は、蓄積した資本(家計の資産)が投資されて新しい経済価値(付加価値)を生むために使われるという「正常な経済」についてのもので、それが、銀行への預貯金という道を通るか、直接家計から企業に投資されるかは、「間接金融」か「直接金融」かの違いはあっても、本来の目的も成果も共通です。
 ここでのテーマは、蓄積資産の辿る「2つの道筋}という事ですが、上の場合は蓄積された資産が、まともな経済活動による経済成長を経て、その結果更なる蓄積が進むという「第一の道筋」の説明です。

 ところがここで、新傾向の経済活動が起こることになります。「第二の道筋」です。こちらの道筋と第1の道筋の違いはこんなことです。
第一の道筋:蓄積資本⇒生産活動への投資⇒経済成長⇒蓄積資本増
第二の道筋:蓄積資本⇒金融活動への投資⇒資本利得/損失⇒資本蓄積増/減

 第一の道筋は資本は生産活動に投下され、経済が拡大しその中からリターンを得る「インカムゲイン」による資本蓄積の増です。
 第二の道筋は資本はマネーゲームに投入され、カネがカネを生む方式の「キャピタルゲイン」による資本増、あるいは減です。(経済そのものの大きさは変わりませんからGDPはゼロサムで、得した人裏側で同じだけ損した人がいます。)

 資本の活動としては全く違った形(端的に言えば、実体経済(GDP)に貢献する活動と、資本の所有者が変わるだけのカネの動き)ですが、ここで大事なのは、どちらの方法でカネを稼いでも「懐に入れば同じカネ」という現実です。

 しかし、「懐に入ったら同じカネ」と言ってしまっていいのでしょうか。
 「それでいいのだ」とお墨付きを与えたのが「マネー資本主義」の思想で、そのツールが「金融工学」ということでしょう。
 でも本当に、人類社会として、それで良いのでしょうか。結論は、すでに皆様お解りと思いますが、次回もう少し論じたいと思います。

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