tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

家計の貯蓄1800兆円は何のため?

2018年08月22日 20時35分47秒 | 経済
家計の貯蓄1800兆円は何のため?
 今年の3月末の日本の家計の金融資産残高を日銀の資金循環表で見ましたら、1829兆円でした。半分より少し多い961兆円が「現金・預金」です。
 
 概算で言えば、500兆円のGDPの3.5倍、国家予算100兆円の18倍という事になります。

 この貯蓄1800兆円は安全なのでしょうか。株や投信などは値段が上がったり下がったりしますから、損する危険性もありますが、現金はちゃんと管理すれば(しまい忘れたり泥棒や振り込め詐欺に狙われなければ、あと火事は怖いですね)安全でしょう。預金は通常元本保証ですから安全だという事になります。

 しかし今は問題があります。それはゼロ金利です。物価は少しずつですが上がっています。政府は2%上昇を目標にしています。物価が上がれば現金は勿論、ゼロ金利の銀行預金も目減りします(ゼロ金利で2%の物価上昇が5年続けば100万円は実質90万4千円に目減りします)。
 
 かつて「 人間と資本:資本蓄積の行き先」を書きましたが、成熟した蓄積社会で蓄積した資産を増やすというのは結構難しいようです。
 政府もそれを知っていて、ペイオフ制度を導入したり、公的年金では「マクロスライド方式」を導入したり、企業年金でも「確定拠出」などという制度を作ったりします。
 お金がたまったら、「あとは左団扇で」という事には、どうもならないようです。

 そう考えていきますと、世界の多くの国が羨むような1829兆円という膨大な金融資産をため込んでも、日本国民は安心できないのです。
 頼みの綱の国も、国民からカネを借りるのには熱心ですが(国債発行)「利息はないと思ってください」というのが今の状況です。

 折角お金をためてもあまり役に立たないので、仕方なしに自分の貯蓄に自分で利息をつけている(貯金の積み増し)人が多いので、消費が増えないようです。
 つまり、折角貯めた1,829兆円は、どうもあまり生きていないという事になっているようで、考えてみれば残念な限りです。

 経済学で言えば、貯蓄は投資されて新しい経済価値を生み、社会が豊かにそして快適になって、生産の所得も消費も高度化し、つまり経済発展が実現していくという事になるのでしょうが、この所全くそうなっていません。

 アベノミクスなども、本来そういう事を狙ったのでしょうが、国債を発行して国民の貯蓄を借り上げ政府なりに使った結果は、経済成長の実現には程遠く、政府の赤字が増えるばかりという惨状です。

 国民が本当は何を求めているのかをよく理解し、それに応えることが、日本社会をより豊かで快適にし、経済発展につながっていくという目指すべき政治と経済の活動の連鎖が、どこかで変な方向に曲がってしまっているように思われてなりません。

 ここまでやってきてどうにもならないのですから、同じ事を繰り返しても駄目でしょう。ここはひとつ、政府の勝手な思い込みではなく、改めて、国民の意見をよく聞いて、新規蒔き直しの社会政策、経済政策を、新たに作り直す必要がありそうです。
 どうもこのままでは日本はじり貧ではないでしょうか。民間企業などが、何とか元気に頑張っているというのに、政府の舵取りの拙いのが残念です。

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