今年の春闘は、労使がそろって確りと賃上げをし、これまで長い間元気のなかった消費需要を盛り上げ、投資、消費のバランスのとれた安定成長経済に転換しようと考えていると思っています。
しかし、日本の労使がそう考えていても、日本経済に大きな影響を与える国際経済という現実があります。
日本は、自国経済のバランスを労使の判断で適切に運営しながら、国際経済が日本経済に与える影響に上手に対応し、出来れば上手く活用して、これまでの長かった長期の低成長経済からの脱却を果たさなければならないようです。
「プラザ合意」から始まって、日本の経済外交は失敗の連続でした。もうこれ以上失敗は出来ませんし、絶対失敗しないという意気込みで、内外情勢をつぶさに分析し消化して、さすが日本、いざとなればここ迄出来るのかと言われるような転換をする好機でしょう。
好機と書きましたが、客観的に見て、今の日本経済の状態は、そうした転換を可能にするのに必要な条件が国際競争力、対外黒字や国民の経済社会再建の意欲など具合よく揃っているように思うのです。
話を具体的にしていきますと、この所、国際資本が、日本の復活を予想して短期資金も長期資金も、日本に流れ込んでいます。
目立つのは国際投機資本の動きです。その効果でしょう、日経平均は1988年のバブル破裂直前の数字を超え、来週には40000円を超えそうな勢いです。
国内の投機筋はまだまだ日経平均は上がると色々なデータを出して更なる上昇を期待しています。この動きを日本としてどう受け止めるかという問題がありあります。
日経平均の上昇を望む人は多いと思いますが、問題は「もうか、未だか」をどう読むかです。やり方によってはバブル再来で、行くところまで行って破裂という可能性もあるわけで、それは失敗の典型でしょう。マネー経済が活発なときは企業に資金量は大きくなり、ますが、破裂すれば消滅です。
必要なことは、「奇貨置くべし」で、タイミングよくその資金を実体経済の成長に向けて、いかに上手に転換、活用するかでしょう。重要なのは勿論日本企業の経営戦略ですが、それを誘導するのは金融政策でしょう。バブルは放置すれば、破裂するまで続くのです。
折しも、アメリカは政策金利の引き下げの必要を感じており、日本はゼロ金利からの脱出を望んでいるのです。そしてこの動きは。投機に必然的に随伴する過度のボラティリティ―を伴う可能性が大きいのです。経済専門家も危険性は十分認識していると思います。
それは、株価と為替レートの2つの分野で共時性を持つのです。日本は、1990年前後の「地価と株価」のバブルの崩壊で典型的な形での失敗を経験しています。あの時は円高が先行していましたが、今回は円高も同期するということになるのでしょう。
今日の経済学、というより経済活動では、巨大に育ち過ぎたマネー経済の崩壊が実体経済に大きな負の影響を与えることは、リーマンショックが実演してくれた通りです。
今日のマネー経済の活況を、いかに上手に実体経済の健全な動きに繋げられるかどうか、日本企業労使、それに(今の政府では頼りになりませんが)金融政策当局としての日銀が、いかに巧みに事を運ぶか、折に触れて見ていきたいと思っています。