tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

変動相場制と日本経済/実体経済:前回の補遺

2023年07月05日 13時42分44秒 | 経済
前回は日本の政府、日銀が「為替レートの変動についてあまりにも受け身ではないか」と気になると書きました。

第一に指摘してのは、為替レートがプライスメカニズムを通じて適切な水準に落ち着くなどという事は期待できない現実です。

嘗ては「マネーの世界」実体経済の活動の潤滑油として、いわば実体経済活動の摩擦を減らし経済活動がスムーズにするという役割が中心でした。

しかし今は違います。マネーマーケットの資金量は実体経済の取引額と何ケタも違うような巨大なものとなり、マネー経済だけで成り立つビジネスも盛況でその失敗が実体経済に深刻な打撃を与えるようなマネー経済vs実体経済の、必ずしもwin=winではない関係になっています。(リーマンショックなど)

為替レートは長期には実体経済の反映かもしれませんが、短期には(ときにはかなり長期にも)マネー経済の動きで決まり、実体経済と乖離する事も「常態」でしょう。

そして、マネー経済のマネーも実体経済のマネーも同じものですから、為替レートの変動は一国の実体経済の物価、端的には消費者物価にも直接影響します。

各国の政府は、物価の安定には大変な神経を使っています。今のアメリカ、ヨーロッパの情況を見れば明らかです。

しかし、アメリカが消費者物価安定のために金利引き上げをやれば、それは直ちに為替レートの変動を齎し、諸外国の物価安定に大きな問題を生じます。途上国などでは急激なインフレの発生につながります。

いずれの国においても、物価の安定は政府・中央銀行にとっての至上命令ですが、いわば、それぞれの国の経済力のレベルを表すはずの為替レートが、経済実態と関係なく急激に変わるようなことでは、当該国にとっては(メートル原器の長さが伸び縮みするようなもので)当然経済活動の混乱を齎します。

どの国にとっても、物価の安定が大事であれば、当然どの国にとっても、為替レートの安定は同様に大事なのです。

こうした為替レートの変動は、マネーマーケットにとってはビジネスチャンスにもなるわけですから、変動相場制は、マネービジネスを育てるという面では、大きな役割を晴らしているのでしょう。

しかし、ご承知のように、マネービジネス、マネー経済は、本来、付加価値を移転させるだけで、付加価値を創出することはないのです。
人類社会の豊かさを増進する原資は、経済活動で付加価値として創りだされるのです。マネーゲームが生み出すキャピタルゲインは、付加価値ではないのです。

変動相場制がもたらす為替レートの変動について、国際経済社会がいかに考え、取り扱うかは、こうして資本主義の根幹、その存在意義に関わるものだという事を、改めて確り考える必要があるのではないでしょうか。

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