エンゲル係数上昇の主因は?
今回もまた総務省の家計調査ベースの問題を取り上げました。3回ほど前に40歳代サラリーマンの貯蓄が、9年前の同世代に比べて 大きく減ったことを見て来ました。
今、日本経済は、基本的には成長段階に入る条件が整ってきた中で、消費不振が成長の大きな足かせになっているという困った問題がありますが、この辺りの問題のコアは当然「家計の消費行動」にあるわけですから、日本経済の順調な成長のためにも、問題点を見ていかなければならないという意識が今回も背後にあります。
今回はエンゲル係数の問題です。ご承知のように、エンゲル係数というのは消費支出の中で、食料への支出が何%あるかという数字で、貧しい時は食い物が一番大事で「学生の頃、俺、カネがないからエンゲル係数50%の生活」などと冗談を言ったものです。
今の日本の家計ではエンゲル係数は23%程度で安定という状態で、所費支出の中で、食料への支出は4分の1以下という状態ですが、この1、2年それが上昇し、4分の1の25%に達し、日本人の生活は貧しい時代に逆戻りといった変化が、統計上では現実に、「家計調査」で出ているのです。
具体的な数字を見ますと、(総務省「家計調査報告年報」)
総世帯 2,008年23.2%、2015年25.0%
単身世帯 2,008年23.0%、2015年25.1%
2人以上世帯 2,005年23.0%、2015年25.0%
内、勤労者世帯 2,005年21.5%、2015年23.6%
といった状況で、どのグループをとっても、エンゲル係数の上昇は明らかです。しかも時系列の流れを見ますと、2013年までは大体安定した動きで、2014年、2015年に至って突如上昇するという事になっています。
2014年は、黒田日銀総裁が 異次元金融緩和を開始、為替レートが$1=¥80から100円に2015年には120円になって、アベノミクスが始まった時期で、春闘の賃上げも再開され、人手不足と相まって、所得は上昇し始めた時期です。
さらに付け加えれば、所得は増加しても、消費が増えないという「消費性向低下」が顕著になった時期です。国民所得統計では2015年度には雇用者報酬は前年度比1.5%の増ですが、総所帯の平均月額消費支出は前年の251千円から247千円に減っています(家計調査)。
消費を増やさず貯金して、生活を切り詰めるという意識が家計を支配し始めたという事でしょう。
その中で食費は、あまり切り詰められないようで、食料の中ではっきり減っているのはコメと酒類の消費ぐらいで、生鮮食品(値上がり)も加工食品(お惣菜が売れる)ばかりでなくほとんどの品目で伸びています(上記総所帯の平均食費2014年→2015年:60.272円→61.833円と2.6%増)。和食が無形文化遺産になったせいもあるのでしょうか。
その代わり、自動車関係費は大幅減、耐久消費財、住宅関係、教養娯楽、雑費(身の回り品・サービス)、小遣いなどが減って、2014、2015年、上記の様に消費支出が減っています
さらに検討をする必要があるかと思いますが、エンゲル係数の上昇はやはり家計の 消費性向低下のためで、将来不安からの家計費切り詰め指向が、あたかも所得低下、家計が貧しくなったかのような統計上の特徴として現れた、という事のように読めそうです。
繰り返し指摘している将来不安による消費性向の低下、中堅世代の貯蓄残高の大幅減少、といった「失われた20年以来の日本経済・社会の歪みが、格差社会化の中で改善、解消されてこないことへの不安感、焦燥感が背後にあるように感じられます。
今回もまた総務省の家計調査ベースの問題を取り上げました。3回ほど前に40歳代サラリーマンの貯蓄が、9年前の同世代に比べて 大きく減ったことを見て来ました。
今、日本経済は、基本的には成長段階に入る条件が整ってきた中で、消費不振が成長の大きな足かせになっているという困った問題がありますが、この辺りの問題のコアは当然「家計の消費行動」にあるわけですから、日本経済の順調な成長のためにも、問題点を見ていかなければならないという意識が今回も背後にあります。
今回はエンゲル係数の問題です。ご承知のように、エンゲル係数というのは消費支出の中で、食料への支出が何%あるかという数字で、貧しい時は食い物が一番大事で「学生の頃、俺、カネがないからエンゲル係数50%の生活」などと冗談を言ったものです。
今の日本の家計ではエンゲル係数は23%程度で安定という状態で、所費支出の中で、食料への支出は4分の1以下という状態ですが、この1、2年それが上昇し、4分の1の25%に達し、日本人の生活は貧しい時代に逆戻りといった変化が、統計上では現実に、「家計調査」で出ているのです。
具体的な数字を見ますと、(総務省「家計調査報告年報」)
総世帯 2,008年23.2%、2015年25.0%
単身世帯 2,008年23.0%、2015年25.1%
2人以上世帯 2,005年23.0%、2015年25.0%
内、勤労者世帯 2,005年21.5%、2015年23.6%
といった状況で、どのグループをとっても、エンゲル係数の上昇は明らかです。しかも時系列の流れを見ますと、2013年までは大体安定した動きで、2014年、2015年に至って突如上昇するという事になっています。
2014年は、黒田日銀総裁が 異次元金融緩和を開始、為替レートが$1=¥80から100円に2015年には120円になって、アベノミクスが始まった時期で、春闘の賃上げも再開され、人手不足と相まって、所得は上昇し始めた時期です。
さらに付け加えれば、所得は増加しても、消費が増えないという「消費性向低下」が顕著になった時期です。国民所得統計では2015年度には雇用者報酬は前年度比1.5%の増ですが、総所帯の平均月額消費支出は前年の251千円から247千円に減っています(家計調査)。
消費を増やさず貯金して、生活を切り詰めるという意識が家計を支配し始めたという事でしょう。
その中で食費は、あまり切り詰められないようで、食料の中ではっきり減っているのはコメと酒類の消費ぐらいで、生鮮食品(値上がり)も加工食品(お惣菜が売れる)ばかりでなくほとんどの品目で伸びています(上記総所帯の平均食費2014年→2015年:60.272円→61.833円と2.6%増)。和食が無形文化遺産になったせいもあるのでしょうか。
その代わり、自動車関係費は大幅減、耐久消費財、住宅関係、教養娯楽、雑費(身の回り品・サービス)、小遣いなどが減って、2014、2015年、上記の様に消費支出が減っています
さらに検討をする必要があるかと思いますが、エンゲル係数の上昇はやはり家計の 消費性向低下のためで、将来不安からの家計費切り詰め指向が、あたかも所得低下、家計が貧しくなったかのような統計上の特徴として現れた、という事のように読めそうです。
繰り返し指摘している将来不安による消費性向の低下、中堅世代の貯蓄残高の大幅減少、といった「失われた20年以来の日本経済・社会の歪みが、格差社会化の中で改善、解消されてこないことへの不安感、焦燥感が背後にあるように感じられます。