tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

雇用ポートフォリオ

2007年09月18日 10時53分17秒 | 労働
雇用ポートフォリオの再検討
 ポートフォリオというのはもともと「紙挟み」のことですが、転じて、投資家が自分の債券、証券、権利証などを一冊の紙挟みに入れておいて、常に何にいくら投資しているかが解るようにしておくという意味から、「投資内容の組み合わせ」の意味使われるようになったようです。
 さらには言葉の便利さから、いろいろな分野に転用され、「プロダクト・ポートフォリオ」といえば、わが社ではどういう製品を何パーセントずつ生産するかという組み合わせに、また標記のような雇用の組み合わせにも使われるようになりました。
 
 「雇用ポートフォリオ」は、正社員、パート・派遣、契約社員、定年後の嘱託社員などを、それぞれ何パーセントぐらいの組み合わせで雇用すれば企業にとってもっとも有利かといった意味で、1980年代後半から日経連(現日本経団連)が使い始めたようです。
 1995年に日経連が出した「新時代の日本的経営」という提言の中で、バブル崩壊後の長期不況の中では、正社員重視を見直し、パートや契約社員などを適切に活用しないと経営が困難になると、詳細な解説をつけて主張したことで、急速に一般化しました。

 その後、日本企業は、なかなか賃下げの出来ない正規社員を、退職者不補充や希望退職募集などで減らし、替わりにパートなどの非正規社員を増やして平均賃金水準を下げ、コストの削減、物価の引き下げに努力して来ました。非正規従業員の数は大方の予想を大幅に超え、雇用者全体の35パーセントほどまで上昇しました。

 こうしたコスト引き下げ努力で、今世紀に入ってからは、世界一高いといわれた日本のコストや物価も、国際水準に近づき、製品によっては国内で生産したほうがアジア進出より有利といったケースも出てきました。
 これはある意味では、非正規社員の賃金 が低いから可能になったという面もあるわけで、 正規社員の賃金水準では、なかなかそうはいきません。

 このところ、正規社員と非正規社員の賃金格差が問題になっています。そうした中で、これまでのコスト引き下げで多少収益力も回復した企業では、非正規社員でも仕事が出来れば資格も時給も引き上げるとか、選抜して正社員にするといったことも増えているようです。

 日本経済の回復基調とともに、これまでの非正規社員重視の「雇用ポートフォリオ」のあり方も、その中身となる人事制度のあり方も、次第に見直しされていくのではないでしょうか。企業の自然な努力で、格差問題の改善が進むのを期待したいと思います。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿