tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

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平均消費性向は上がったが:家計調査2023年5月

2023年07月07日 14時44分38秒 | 経済
今日、総務省から家計調査の2023年5月期の「家計収支編」が発表になりました。

昨年来上昇傾向を示していた(2人以上勤労世帯の)平均消費性向が4月、前年比で低下したのを受けて5月の動きを心配していましたが、結果は90.2%という事で前年同月比2.6ポインとの上昇でした。

これで一安心、消費の堅調傾向は続くかなと思い、早速関連指標の動きを見てみました。
しかし、その結果は、どうも納得のいかない事が多く、手放しで喜んでいいのかどうかとも思われるものです。

平均消費性向の推移(2人以上勤労者所帯)

                   資料:総務省統計局「家計調査」

上のグラフでご覧のように、4月に前年比で下がって、昨年来の堅調な消費に変化でるかと思われましたが、5月の90.2%で4月の落ち込みを挽回した形です。そして過去二年もそうですが、5月というのは1年12か月の内で最も消費性向が高くなる月なのです。

3月は年度末で種々の支出が重なる、5月はゴールデンウィークで消費が増えるという傾向がはっきりで、6月、12月はボーナスが出るので、消費性向は低くなることもご理解の内でしょう。

それにしても、5月は春闘の賃上げが給料袋(今は振り込み)に反映する月で、今年は賃上げ率も高かったはずだからその影響はどうかと見てみました。平均消費性向は勤労者世帯ですから、一般所帯と違って、収入の方もチェックできるわけです。

その結果は予想外でした。世帯の実収入は昨年5月比で4.0%、世帯主収入で3.5%、定期収入で2.5%のマイナス(減少)なのです。

これは名目値で、物価上昇を差し引いた実質値では、それぞれ7.5%、7.0%、6.1%の大幅マイナスです。そして消費支出そのものも名目値で-1.0%、実質値で-4.6%と共にマイナスになっているのです。

収入が減ったが消費の節約が追い付かず、平均消費性向が上がってしまったとも受け取れるような状態です。

収入は増えないのにゴールデンウィークもあって物価上昇の中で、ついつい消費が増えてしまった、「来月からは少し節約しなければ・・・」、という事になりそうな感じです。

しかし、おかしいな、高めの春闘賃上げがあったのに、名目の定期収入が減っているのは。という事で、同じく今日、厚労省から発表になった「毎月勤労統計」の5月速報から賃金指数の動きを見てみました。
毎月勤労統計の賃金の時系列の動きは「賃金指数」で見ることになるわけですが、調査産業計の現金給与総額の前年比で、「一般労働者」3.0%、「パートタイム労働者」3.6%の上昇となっています。

毎月賃金統計は企業の支払う賃金で、家計調査は世帯に収入支出の調査ですから、統計数字の性格は違いますが、家計調査でも勤労者所帯の所帯主の収入という項目は毎月勤労統計の賃金指数と類似の性格のものでしょう。

毎月勤労統計では前年比プラス、家計調査では前年比マイナスというギャップは些か予想外です。
来月以降の数字の中から何らかの答えが出て来るのでしょうか、見ていきたいと思います。