tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2023年度GDP政府年央試算の検討

2023年07月22日 11時17分59秒 | 経済
2023年度GDP政府年央試算の検討
一昨日、内閣府から2023年度の政府経済見通しの年央試算が発表になりました。

2023年度の政府経済見通しは、1月に閣議決定され発表されていますが、今回は同じ閣議決定ですがその後の状況変化を勘案、新たに年央試算として発表されたものです。

前書きでは、世界経済の下振れリスク、物価上昇、金融市場の変動等を要注意としながらも、「賃金と物価の好循環」を目指すとと もに、人への投資、グリーン、経済安全保障などの分野における官民連携で の国内投資の持続的な拡大を図ること等により、成長力の向上と家計所得の 幅広い増加に裏打ちされた「成長と分配の好循環」の実現を目指す、と述べています

しかし、すでにマスコミでも報道されていますように、今回の試算では、実質経済成長率は1月発表の1.5%から1.3%に引き下げられているのです。

民間企業の動きや、消費需要の活発化などの現状を見れば、敢えて引き下げる状況ではないように感じますが、何が引き下げの原因なのか見てみますと、多少意外な点があるように思えます。

先ずこの所の成長を支えているように見える民間消費支出ですが、1月試算の2.2%増から1.6%増に引き下げ、民間住宅も1.1%から0.3%に、民間企業設備も5.0%から3.0%に引き下げられています。

その結果、民間需要の経済成長率への寄与度は2.0ポイントから1.4ポイントに低下です。
正に民需不振で経済成長鈍化の様相です。

残るのは公需(政府需要)と外需(貿易収支)ですが、公需の方は前回の見通しマイナス0.5ポイントからプラス0.2ポイントに増加、民需が駄目なら公需で補うという感じです。

そして外需はマイナス0.1ポイントからマイナス0.3ポイントに拡大(貿易赤字拡大)の見通しです。

結局寄与度のポイント数は内需(民需と公需)で1.6ポイント、外需がマイナス0.3ポイントの合計1.3ポイントで経済成長率1.3%が成り立っているのです。

消費需要の伸びを小さく見ているというのは物価上昇に食われてという事なのでしょうか、消費者物価の上昇率は1.7%から2.6%に大幅修正(見通し甘かった)になっています。

民間企業設備についても大幅引き下げで、5.0%の見通しを3.0%に引き下げています。半導体関連投資の盛況、ソフトウェア投資の活況、産学協同のスタートアップの活発化や日銀短観の企業の投資態度などから見ると些か首をかしげます。

それに引き換え、公的固定資本形成はマイナス0.5%(減少)の見通しが2.2%の増加に変わっています。この半年の間に、政府は、固定資本投資を大幅な増加に見直したという事になります。

これが防衛装備の増強と関係するのかは触れられていません
若しそうであれば、これは、上記の「成長と分配の好循環」には役に立たないものでしょう。この数字は、引き続き今後も注意が必要なところです。