tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

賃金→物価→為替レートの関係(前回の補遺)

2022年01月21日 17時04分18秒 | 経済
前回は日本の物価はあまりに上がらないので、インフレに悩む国からは、「お前だけ物価が上がらず競争力が強くなうのは困る、何とかしろ」と言われるようなことになるのは、日本としてもまた大変困るという事を書きました。

具体的には「プラザ合意」のように、競争力の強い分だけ「円高にする」のはどうかと言うような事になる場合がこれから多くなるのでないかという気がします。

かつて、中国が対米輸出の首位を独走した時のような事も考えられます。
あの時は、アメリカが、中国に人民元の切り上げを要求し、中国が「人民元の価値は中国が決める」 といって反発したこともありました。

トランプ政権になって、それは「世界の国々がアメリカに物を売って儲けている」「アメリカは損ばかりだ」「中国を始めそういう国からの輸入には高い関税をかけろ」という関税戦争に発展しています。 

中国は、人民元高にしたら日本の円高と同じになるとよく勉強していて、その分は自分達で使った方が良いと考え、一時最低賃金を大幅に上げたりしました。

中国の真似をするわけではありませんが、円高を強いられて、デフレ不況で苦しむより、賃金を上げて自分たちの所得を増やし、その結果競争力が多少弱くなる方がよほど楽で得だということになるという発想は「変動相場制」の中ではだんだん常識になるのではないでしょうか。

その場合重要なのは,①賃上げすればインフレになるのか、②インフレにするタイミングと程度はどうとるか、の2つではないでしょうか。

① の賃上げでインフレになるかの答えは出ています,インフレの8割ぐらいは賃金インフレと言えるでしょう。(2割は輸入インフレなど)
② のインフレにするタイミングと程度ですが、他国より早くインフレにしないことと程度は他国の程度に近くしかし超えないとするということでしょう。
  (このバランスは、短期ではなく中・長期で考えるのがよいでしょう)

そうすれば、国際競争力はそれなりに維持ができますし、国際競争上の有利さは自国経済の繁栄と成長に使えるわけです。

変動相場制の下では、為替レートは為替取引の売買のバランスで決まります。
以前は実体経済を反映する部分が大きかったのですが、今は金融工学に象徴されますように,世界中の大小・無数の投機資本・投機家の思惑の絡み合いの中で決まりますから「何かあれば円」などとレッテルを張られるのは危険です。

半分冗談めかしましたが、 長い目で見れば、経済も賃金決定も労使関係もそうした関係の中に住むことになってしまったというのが現実でしょう。

勤倹貯蓄で賃上げは常に控えめ、インフレを起こさない様にすれば発展する国になれるというのは「固定相場制」の時代の事だった、というのが今の世界経済なのではないでしょうか。

変動相場制の中で、巧みに良い位置を占め、経済運営に成功することは、固定相場制の時よりもずっと難しいという事ではないでしょうか。