tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

良いインフレ、悪いインフレ

2022年01月04日 16時18分48秒 | 経済
政府・日銀が2%インフレのターゲットの旗を掲げても殆ど上がらなかった消費者物価がこのところ動き始めたようで、インフレを心配する消費者の声もあります。
「悪いインフレ」「良いインフレ」といった言葉げマスコミに登場したりしています。

解説者などの話を聞いていますと、「賃金が上がらないのに物価が上がるのは悪いインフレです」などとの説明があるようです。
確かに賃金が上がらないのに物価が上がれば、消費者にとっては悪いインフレでしょう。 

最近の物価の上昇は1つには海外の資源などの物価が上がっていること、2つには円レートが1ドル=102~3円から104~5円と円安になって、その分輸入物価が上がること、その2つの要因が重なっていることが指摘されています。

どちらの原因も消費者にとっては困るのですが、海外の資源価格が上がるという問題は、世界共通ですから、世界中の消費者が同様に困るので、日本だけが困るのではありません。いわば仕方ない値上がりで、そのうち資源価格が下がれば終わります

それに対して、円安になって、輸入品の値上がりで物価が上がるのは日本だけ物価が上がるわけで、日本の消費者だけが困るので確かに日本にとって悪いインフレです。

しかし、かつてプラザ合意の「円高」に苦しみ、苦肉の賃下げをしたのに比べれば、円安で日本の競争力は強くなり、コロナが無ければ、外国から多くの観光客や買い物客が来るはずで、プラスの面もあります。

考え方によっては、円安が続くなら、その分だけ賃上げをしても、日本の競争力は落ちないので、賃上げで対抗することも可能という「打つ手」もあるのです。

ですから「悪いインフレ」といてもいい面もあるわけで、一概に「悪い」と言ってしまえない面もあるのです。

インフレの原因にはもう2つばかりありまして、今年は不作とか不漁とかで物価が上がる、場合ですがこれは、お天気やお魚の都合によるので、悪いインフレですが、人間は耐え忍ぶしかなく、来年の豊作、大漁を願うのみです。

最後の1つは、賃金を上げ過ぎて値上げになる「賃金インフレ」です。
最初に述べた政府、日銀の「2%インフレターゲット」ですが、その含むところは3%の賃上げをして2%物価が上がれば、1%分は生活が向上してみんなハッピーという事のようです。

確かにそれは結構ですが、もし、2%賃上げして2%インフレだったら、生活水準は変わりません。
3%賃上げしてインフレが2%で済むためには、1%の生産性向上が無ければなりません。
 
こう考えてみると、毎年同じ事をやっていて、資源価格が上がったり、円安になったり、自然現象で不作や不漁になったり、賃上げを頑張ったために物価が上がって元の木阿弥だったりするのは、すべて「消費者にとっては」悪いインフレという事でしょう。良いインフレなどというのはないのです。

良いのは生産性の向上で、生産性を向上させれば、その分は物価が下げられるのです。
豊作や大漁になるのは「天」が生産性を挙げてくれるのですが、それだけではなくて、人間にも生産性を上げる能力があります。日本人は、もともと、それに優れているはずです。

そして。生産性さえ上げれば、賃上げをしてもその分物価上がりませんから、多少物価が上がっても「この程度なら良いインフレだ」などと言えるということになるのでしょう。