tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

G7の最低法人税率15%合意の進展に期待する

2021年06月07日 20時50分47秒 | 国際経済
G7の最低法人税率15%合意の進展に期待する
 先週、イギリスで行われたG7 で、国際的な最低法人税率を15%とすることが合意されました。
 今後G20、更に140が国程の協議に参加する国の理解を得るプロセスを進めることにあるのでしょうが、こうした国際的な協調、協力体制が進展することを切に願う所です。

 日本の法人税率は現在23.4%ですが、かつての経済成長期には40%を超えていました。その後アメリカのレーガン減税を真似て下げ、アベノミクスになって、景気テコ入れでさらに下げて来たのが現在です。

 アメリカは現在21%、バイデン大統領は、大幅な財政支出の財源に28%を意図しているようです。

 国際的な最低法人税率も、アメリカは最初は20%程度を考えていたようですが、結果的には、より多くの国が合意できるように15%となったようです。

 今後のプロセスも大変でしょうが、G7では各国とも、これまでの(企業誘致のための)法人税率引き下げ競争の弊害を除去し、国際的に健全で安定した企業経営の実現に必須という視点から、一様に賛成で、アメリカFRBのイエレン議長の「世界中で公平性が確保されることになる」という評価は象徴的でしょう。

 従来は収益性の高い企業を誘致し、自国に税収や関連する利益をもたらそうという意図から(典型的にはタックスヘイブン)、法人税引き下げ競争に歯止めがない状態でしたが、こうした国際的なルールが重視されるようになれば、経済面の国際競争はより合理的で公正かつ安定したものになることは明らかでしょう。

 しかし、今後の合意達成のプロセスは、これまでの環境の歯止めのない状況を活用した国も少なくないのですから、主要国やOECDなどの一致した合意への努力が必要でしょう。

 このG7の合意には、もう一つの重要なテーマがありました。それは、いわゆるGAFA等の超巨大な多国籍企業についての法人税制をどうするかという問題です。 

 こうした企業にすれば、上げた利益を法人税の安い国の子会社に移転集中すれば、法人税はうんと安くなるという事でした。
 一方、税金は、実際に収益を上げた国で支払うべきという立場から「デジタル課税」の問題が起きて来ていたわけです。

 子会社などの事業所のあるそれぞれの国が、我が国で出した利益にはわが国で課税するという事で、それぞれにデジタル課税の仕組みを考えるというのが実情でした。

 当然国別に税制が違えば不公平が起きます。これをどうするかという問題が法人税の引き下げ競争と絡んできます。

 この問題についても統一的に処理しようという合意がなされ、各国別のデジタル課税制度については、統一的な課税の在り方と適切に調整する方針が打ち出されています。

 GAFAなどの経営者の間でも、現状では特に異論はなく、国際的に調整された統一システム支持の意向のようで、G7の合意のスムーズな前進が期待されるところです。

 日本から出席した麻生副総理・財務相も、今回の合意については「よくここまで来た」という感慨のようで、日本としては全面協力体制でしょう。

 最近の国際情勢は、何かにつけて自国中心の動きが見られる中で、こうした合理的な国際協調・協力の枠組みを打ち出すことが出来たということは、今後の国際社会の在り方の中で、新たな希望を見出したと考えるべきではないでしょうか。

 それにつけても、主要国にリーダーには、世界を困らせるような人が居てほしくないと、平和と安定を求める大部分の地球市民は、つくづく感じる所ではないでしょうか。