tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日本で国債が紙屑になる可能性は

2020年12月07日 23時09分39秒 | 経済
累積する赤字国債は何処に行くのか(6)
今回の推論は、先ず、前回の続きになりますが、世界の多くの国の中でも自国通貨の価値が切り下がること(日本なら円安になること)を恐れる国と、逆に自国通貨が切り上がる事(日本なら円高になること)を嫌う国があることは良く知られています。

 自国通貨が切り下がることを恐れる国は、どちらかというと技術力、生産力で後れを取っている途上国に多く、国際収支は赤字傾向で、インフレ率が高くなりがちな国に多いようです。

一方、自国通貨の価値が切り上がる事を嫌う国は、比較的高い技術力、生産力を持つ国で国際収支は黒字傾向、インフレ率はあまり高くない国という事になりましょう。

理由はもう既にお解りと思いますが、工業生産でも食糧生産でも外国に頼る場面が多く、自国通貨が切り下がれば輸入物価はそれだけ高くなり、多分それは直ちに国内の賃金水準などコストプッシュインフレに転嫁され、一層の為替レートの低下を招き、輸入インフレと国内インフレのスパイラルを容易に引き起こして正常な経済活動が破壊される可能性があるからでしょう。

一方、技術力、生産力も高く、国際収支も黒字基調といった国は、為替レートの切り上げは、自国の競争力を弱めるので望ましくないわけで、たとえ為替が切り下げられても、それは国際競争力の強化につながり輸入インフレと国内インフレのスパイラルが起きる前に、輸出が好調になり経済成長を牽引する可能性が出て国際収支の黒字が増え、為替レートの下落を止める事が確実視されるからでしょう。

前回見ましたベネズエラの例は前者で、後者の典型的な例は日本や中国でしょう。アメリカは万年赤字国ですが、基軸通貨国という特別の地位にありますので、本心ではドル安を望みながら、時に強いドルを掲げたりして使い分けているようです。

さてこうして分類をしてみたうえで、国債の巨額の発行という問題の行く末を見てみたいと思います。

世界一の石油埋蔵量を誇るベネズエラが、いかにして最悪の経済転落の道をたどってしまったのか考えて、直ぐに解ることは、同国の政治が世界の現実に追い付いていないという事でしょう。
最強の資源である石油をすべて我が物にしようとして、外国の資本を追い出してみたものの、日進月歩の採掘技術、重質油のクラッキング技術(もともとベネズエラの原油は重質なので水素を加えて軽質化の要あり)、から装置のメンテ技術も不十分であることに加え、利権の独占をはかる独裁政権と特定資本。そして国債は$ドル建てといったことで、経済崩壊のお膳立ては揃っているという事ではないでしょうか。

日本とは、正に正反対の状況といえばそうかもしれません。しかし、こうした他国の経験の中から、もし日本で「国債は紙屑」という事が起きるとすれば、それはどういう原因で、どういう状況の中で、と考えるヒントはあるような気がします。

 日本の政治、経済、社会の中にも、その萌芽のようなものは、実は種々見られるのです。
 しかし現状では、まだまだ国民の行動が確りしていえるので、その芽は育ってきていないようです。では安心していいのかというとどうでしょうか。
 その辺りも検討して置かなければならないようです。