tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

累積する赤字財政は何処に行くのか(5)

2020年12月06日 23時00分30秒 | 経済
インフレになれば国債の価値も下がる
 国債というのは原則その国の通貨建てで発行されますから、その国がインフレになれば、国債為替市場でその国の通貨は安くなり、国債はその国の通貨建てですから、例えばドル換算で見れば(ドルの価値は安定と仮定)国際的にみて、その国の国債の価値は低下することになるというのが自由経済の原則でしょう。

 その国の国民にとっては、額面金額は同じですから、物価が上がった分価値が下がったことになるのですが、インフレ率の高い国は金利も高いので、国債の利回りの方が金利より高ければもとは採れるという事になるでしょう。

 日本の経験のように戦前は2000円あれば家が建ったのですが、戦後は米一升が200円以上なんてことになり、家を建てようと貯金して国債を1000円持っていたけれども、戦後償還になった時は、1週間の米代にも足りなかったというような事で、「国債は紙屑」などと言われたわけです。

 表面的な現象としては、インフレ昂進ですが、その背後にある経済の現実は、日本中の都市はほとんど焦土となり、生産設備は破壊され、あらゆる資源は飛行機や軍艦、戦車や、弾薬となってほとんどが海の藻屑となって何もない、男は兵隊に行って農地も荒廃、食料も絶対的に不足という中で「お札や国債は腹の足しにはならない只の紙切れ」という経済実態があったからです。

 戦争でなくても、国の経済政策が失敗すると、似たようなことは起こり得ます。
 最近の例ですと、一時は世界最大の石油埋蔵量を誇り経済発展も著しかった南米ベネズエラですが、反米と社会主義を掲げ、自国中心の経済運営を目指した結果が、政治体制の未成熟、利権政治の横行、技術力の不足などで石油産出量は2000年の10分の1ほどに低下してしまいました。

石油の利権や輸出で獲得する外貨で廻っていたベネズエラ経済は外貨不足になり、「米ドル建て」の国債・石油会社の社債の金利負担が過重になり、輸入制限をやった結果、食料・医薬品のなどの必需品の不足などでインフレが累積的に昂進、今年は物価が10万倍というインフレになると予想されています。ただし国債はドル建てですから紙屑にはならず、利払いは自国通貨(ボリバルフェルテ)では今年は去年の10万倍の利息支払いになるわけです。

 このように、いろいろな事例を見て来ますと、MMTが成立するのは一定の特殊な条件のもとでしか可能ではないと言えそうです。貨幣が金から紙幣になり、さらにデジタル化してくといった制度やシステム上の変化は、どうも関係ないようです。

 貨幣、通貨、国債も含めて、これらは結局、社債の価値が発行企業の経営上他愛をあらわ鵜様に、発行する国の実体経済を映す鏡であり、実体経済と違うものを鏡に映したり、鏡の力で実体経済を変えるといたことは、やっぱり不可能なのではないかと思われてきました、。

 次回は、経済外交政策としての、通貨の切り上げ、切り下げと、物価、国債の問題について見ていってみましょう。