tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日本の国債が紙屑になる条件(6)金融の部

2020年12月16日 22時50分16秒 | 経済
日本の国債が紙屑になる条件(6)金融の部
 金融の問題は、今日、世界中で未踏の時代に入っていて、アメリカをはじめ、何処の国も暗中模索、試行錯誤を繰り返しているのではないでしょうか。

 かつては、金融は実体経済を支え、実体経済の活動がスムーズに進むようにとの潤滑油の役割をしていました。その金融が、実体経済から独立し、証券の価格の変化や金利の動きを利用して「キャピタルゲイン」を稼ぐマネー資本主義という世界を作り上げました。

 これは概念的には、ギャンブルの一種で、カードの数字やさいころの目などの代わりに実体経済の活動の諸種の指標を利用するというものです。そしてこれも経済活動だと言い張っているだけです。

 純粋にギャンブルならまだいいのですが、マネーマーケットで動くカネが巨大になると、その金の力で実体経済を動かす事ができるようになります。
 例えば特定の会社の株を売り込んでその会社を倒産させたり、経済的に弱い国の通貨を売り込んでその国の経済に致命的な影響を与えることも出來ます。

 ソロスの率いるヘッジファンドの力を見せつけたと言われる、かつてのアジア通貨危機などはその良い例でしょう。

 さて、日本が世界でも異常な巨大な国債発行残高を持っているという事で、「いつかは日本の国債は紙屑になる」という意見が以前から出ていることは皆様も疾うにご承知のことと思います。

 今年度の国家予算は初めて100兆円を超えたと言われましたが、今年度政府が発行する国債は、第3次補正を含めると112兆円になるようです。

 もともと2020年度の予算では、政府の税収などの総収入は70兆円で、国債発行で33兆円を国民から借りて103兆円の予算でしたが、更に79兆円の借金をしてやっとコロナ対策も出来たという状況です。

 正直言って、そんなに借金をして返せるの?という感じですが。元々返す気はなく「出来るだけこれ以上の借金は増やさない」という目標も達成できない(プライマリーバランス回復めども立たず)事は広く知られています。

 常識的に言えば、「返せない国債は紙屑」という事になる可能性はあるのですが、他方で、「国民が返せといわなければ問題ない」という見方(MMT)もあります。
 現実に国民は返せとは言わず、資産として持っている積りのようです。実は国債の半分近くはもう日銀が買って持っているのです。

 すでに触れましたように、もしこれを外国人が持っているとすれば、日本の国債は全部売って、アメリカや中国の国債に乗り換えるといったことが起きる可能性もあって、「日本国債暴落!!」もありえますが、外国の保有は1割以下のようです。

 そして何より心強いのは、日本は国際経常収支が常に黒字で、マネーマーケットでは、円の価値は上がりこそすれ下がることはないという見方が定着しているのです。

 日本の国債残高が巨大という問題は、国内問題で、外国から見れば日本は常に黒字の資産大国なのです。

 こう見て来ますと、現状、日本の国債が紙屑になるかという問題は、国内問題としては起こりえても、国際問題としては極めて起きにくいだろうという事が出来ます。

 これも既に書きましたが、もし日本経済が経常収支で赤字になるような状態になれば、円安になり円売りで国債の価値も暴落という可能性もないわけではありませんが、そこに行く前に、現状では、円安で日本の国際競争力が回復し、日本経済が力を取り戻すというプロセスが多分起きるでしょう。

 もし将来、日本の実体経済が完全に弱体化していて、日本の主要産業が、今のアメリカの「ラストベルト」のようになっていたら、その時は多分日本経済破滅、「国債紙屑」の時となるのでしょう。

 なぜ日本は経常収支がいつも黒字なのかについては、 日本人の国民性が大きく影響していることも知られていますが、マネーマーケットがカードやさいころでなく、基本的に実体経済の動きがギャンブルの指標ですから、実体経済における技術開発、生産力の維持が出来ている限り、国債紙屑の条件は成立しないでしょう。

 しかし、今の日本にとって、それが次第に難しくなって行く可能性は、今の様な、先見性のない経済政策が続けられれば、早晩起こり得るのかもしれません。

 繰り返しますが、MMTが成立するのは、日本経済が、技術開発能力と生産力を維持しているからで、今の日本政府に、それが本当の意味で解っているかどうかが心配というのが現実ではないでしょうか。