tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

土地と株:バブルにもいろいろあって・・・

2020年12月29日 22時59分20秒 | 文化社会
土地と株:バブルにもいろいろあって・・・
 今日も日経平均は上がってバブル崩壊以来の最高値を更新しました。
 コロナのお蔭で経済成長率はマイナスなのに、こんなに株が上がるのはバブルだという方も増えています。
 
 素人の常識からすれば、経済がリーマンショックを上回るような落ち込みをしている中で、株だけが順調に上がっていくというのは「やっぱりバブル?」と考えるところですが、証券界の専門家はだいたいバブルとは言わないようです。

専門家が「バブルではない」というのだからバブルではないのかというと、経済学者の中には、「政府と日銀がこれだけの赤字財政、目いっぱいの金融緩和をやっているのだから、株が上がるのは当然、実体経済と全く違った方向を向いているのだからこれはバブルです」という方もいます。

 30年前、日本はバブルの崩壊を経験しました。1990年には株の暴落、1901年には地価の暴落が始まりました。日本経済は平成長期不況に入りました。

 この時のバブルは株、土地、書画骨董、ゴルフの会員権、そのたいろいろなものが値上がりしました。中でも、 最も日本社会に問題を起こしたのは「地価の上昇」でした。

 当時思ったのは、「株やゴルフ場の会員権が値上がりしても、それで一般サラリーマンに実害があるとは限らない」しかし、「地価が上がると、若いサラリーマンは家が持てなくなる」つまり「サラリーマンの生活設計そのものが成り立たなくなる」もともと「人間は土地の上に住まなくてはならないのだから、生活の基盤である土地を投機の対象にして、マネーゲームをやるのは良くない」だから「政府は地価のバブルだけは起きないようにすべきではないか」といった事でした。

 今回の株価上昇を見ますと、株の上がり方も為替の動きを見ながらかなり慎重ですし、地価上昇は一部に限られ、ゴルフ場、リゾート会員権、書画骨董など特に目立った動きはないようです。おそらく前回のバブル崩壊の経験から多くのことを学んでいるのでしょう。

 それにしては株価だけが例外的に上っているのはなぜかといことになりますが。そこには前回のバブルと違った特殊な状況があるからと言えそうです。

 前回は、 土地神話があり、地価の上昇は企業の含み益を大きくするという事も踏まえて、企業収益(特に大銀行の)の好調、それを支える日銀のアメリカの示唆による金融緩和につられ、専門家から素人まで、投機に参加したようでした。
 今回の株高のベースは、円高阻止のための異次元金融緩和と政府の国債大量発行を日銀の既発長期國債購入で可能にすると同時に、アメリカの量的緩和に対抗するための日銀のETF購入という、いまの日本に絶対必要な為替政策に乗ったものです。

 そんな意味で、今回の株高は、国際情勢にも振り回されかねない微妙な問題も含みながら、日銀の上場企業の大株主化を見込んだ、いわば玄人だけの舞台という事になっているのではないでしょうか。今回の相場では、素人が大儲けという例は余りないようですし、 GPIFでさえ簡単に利益は出せないようです。

 いわば、投資専門機関、あるいは玄人筋中心の限られたバブルでしょうか、ただこの株高を何としても維持したい政府のNISAやiDeCoの推奨もあり、経済政策がうまくいかず、賃金も上がらない中で、自助努力で資産蓄積をという政策が、今後どの程度のものになるかこれも見る必要があるのかもしれません。

 しかし、歴史の経験から言えば、株式市場の盛況は、 所得格差、資産格差の拡大という結果が一般的なようですので、経済政策の王道としては、もう少しまともなものが次第に必要になるように思われるところです。

 バブルというのは、潰れて初めて分かるという事が多いようですが、今回は、コロナ後の経済回復、恐らく国際的に同時的なものになると思われますが、その中で日本経済も成長軌道を取り戻すという「将来の回復の先読み」というかたちで、「バブルじゃなかった」 と巧く終わる事できればベストでしょう。

 問題はそのために、今の政府に何ができるかという事のようです。