tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

カルロス・ゴーン氏の晩節

2018年11月24日 11時54分06秒 | 労働
カルロス・ゴーン氏の晩節
 今回明らかになったカルロス・ゴーン氏の事件については未だ捜査の途上で、明確になったものではありません。
 しかし、大筋はマスコミ報道の通りでしょうか。ゴーン氏本人の問題、フランスと日本の対応の差など、何かいろいろと考えさせられることが多いような気がします。

 我々のような普通の日本人にとっては、あれだけの評価と名声を得て、個人的には十分と思われるような報酬を得ながら、なぜ更にあそこまでカネに固執するのかといった問題、それはルノーでは起きずに日産で起きたという点、事件発覚後の日本とフランスの世論や対応の違い、などなど、良く解らないことが沢山あります。

 個人的は、「残念な事件」といった感じを持つところですが、これは日本人的な感覚という所でしょうか。
 過日も書きましたように日産自動車の業績急回復について「日産の従業員が優れていたから」といったコメントをし、「 日本人の良きフォロワーシップ」を理解しての発言と多くの日本人を感激させました。
 
 その一方で、日本企業のトップとしては破格に高い年間10億円という報酬を、自分の働きに対しては過少という認識を強く持っていたようです。
 この自らの業績と報酬のアンバランスの感覚は、やはり日本人の感覚と差があるように思えます。

 この感覚が、マネーゲーマーたちの巨額報酬に影響されたものか、生まれ育った家庭や国々の教育や文化によるものか解りませんが、日本の経営者の場合には、業績を上げた企業トップでも、それによって、従業員をはじめとするステークホルダーたちが喜び、自分に対し尊敬や感謝の念を持っていてくれるという事に、より大きな喜びを感じているのではないでしょうか。

 トップが自分の上げた業績は自分に帰属すると言うのであれば、従業員にとって、優れたトップを迎える意味はなくなります。
 日本の賃金体系は「 2倍働いて給料2割増し、3倍働いて3割増し」などといわれるように、社会的慣習として、格差社会化を抑制する文化が出来上がっているのでしょう。

 誰かがこうした日本文化の根底にあるものをゴーンさんに教え、ゴーンさんがそれを多少でも理解していれば、ここまでの違法行為は起きなかったのではないでしょうか。

 そんな文化は日本だけで外国には通用しないというご意見もあると思います。とすれば、その文化の違いはどこから来るのでしょうか。フランスではピケティが格差社会化を批判しています。

 やはりこうした日本文化は人間社会にとって良い文化なのでしょう。
 偶々わが家の床の間には「得失一時栄辱千載」という軸がかかっています。これは日本だけの文化ではないのかな、などと思っています。

 ゴーンさんも、こんな事が無ければ稀代の優れた経営者として後世に名を遺したのではいかと思うと何か残念です。