tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

勤労者所帯の消費性向上昇に転じるか?

2018年10月05日 16時59分32秒 | 経済
勤労者所帯の消費性向上昇に転じるか?
 今日、総務省から家計調査報告が発表になりました。
 定点観測のようなつもりで、毎月、勤労者所帯の平均消費性向を追いかけていますが、今年の8月は75.7%で昨年8月の75.2%に比べて0.5%ポイントの上昇ということになりました。
 昨年8月から今年の8月までの13か月の数字はこんな状況です。



 月々の数字は季節変動その他変動が大きいので、傾向の判断には、対前年同月の変化を見ることになるのですが、今年は1月に前年比3%ポイントの上昇があり、年が明けて消費性向にも変化が出るかと期待しましたが、この期待は全く外れて、2月以降は毎月大幅な低下ということになり、勤労者の家計はますます倹約をして貯蓄の励むといった状況でした。

 春闘の賃上げもそれなりにありましたし、景気全体としては決して悪くないのに、サラリーマンの家庭は消費を抑え、貯蓄に精励ということで、サラリーマンの将来不安はここまで大きいのかと、迷走する政治に愛想が尽きる気分でした。

 夏のボーナスが比較的良かったせいでしょうか、あるいはこの夏の異常な暑さのせいでしょうか、7月から、消費性向の落ち込みは小さくなり、8月に至ってかすかながら上昇に転じたのは、確たる理由は掴めませんが、日本経済には良い影響が出てくるはずです。

 このブログでは、消費性向の低下、消費不振による経済の低迷について、今迄もいろいろな角度から見て来ましたが、基本的には格差社会化の進行、公的年金への不安、退職金や企業年金における不確定要素の拡大(確定拠出方式の導入など)少子高齢化についての政府やアカデミアの深刻化を予想する発言などなど多様な要因が絡み、さらには貯蓄しても貯蓄してもゼロ金利で貯蓄が増えない状態などもあるようです。

 貯蓄して将来に備えるという行動が一般的になると、消費不振が経済成長を阻害します。能天気と言われても、アメリカのように金を使ったほうが景気は良くなります。
 貯蓄しすぎもまずい、カネの使い過ぎもまずいということになりますと、では「どの程度使えば丁度いいのか」ということになりますが、1つの判断基準は経常収支でしょう。

 アメリカは経常赤字の国、日本は経常黒字の国です。日本の経常黒字は年に20兆円、GDPの4%近くです。そこまでは使っても、赤字にはならない。生かして使えば経済は活性化するのですが、さて、誰がどう使うかが難しいところです。

 「あなた使いますか」と言われれば、「我が家は老後のために貯蓄です」というのが今のサラリーマンの家計でしょう。
 誰もが、危険を冒して金を使ってしまうのは、例え日本経済のためによいといわれても賢明ではないと考えるでしょう。
 この問題の解決には、政府が、国民がの将来について、安心できるようなビジョンを示し、国民と共に実行するしかないでしょう。

 世界一金持ちと言われる日本ですが、政府は世界一の借金政府です。こんな変な組み合わせに長い年月をかけてしてしまったのはやはり日本の政治だったのでしょう。