tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

経団連会長「採用選考に関する指針」から撤退を表明

2018年09月05日 16時42分46秒 | 就活
経団連会長「採用選考に関する指針」から撤退を表明
去る3日、経団連は大学生の就職活動について出していた指針を2021年春入社の学生の就職活動から廃止するという方針を示しました。
 未だ、経団連としてではなく会長の意見という事のようですが、早速、政府、経済団体、大学その他から 色々な意見が出て来ています。

 何時のものブログでは書いていますが、企業を職務の集合体とみる欧米の考え方と、企業は人間の集団とみる日本の考え方の違いから、日本では新卒一括採用という習慣が取られてきています。
 
 企業もその考えは変えず(ただし正社員と言われる人達が対象、非正規社員は欧米流の職務別採用)、学生も、大学もそれに慣れ親しんでいますから、企業は新卒をまとめて取りたいし、学生は卒業式の後は4月1日から会社勤めと考えて学生生活を送っています。

 平成不況の真只中、就職氷河期などと言われた時期に卒業した学生の中には、そうした希望の就職が出来ず、非正規を転々として、日本流に言えば「定職にもつけず」社会に不適応になって、問題になるといった後遺症は未だに残っています。

 今は未曽有の人手不足と言われ、企業は優秀な新卒採用に血眼ですから、皆、他社に先駆けて新卒学生の選考や内定をしたいのは当然でしょう。
 経団連の指針は、仁義なき採用競争は避けたいという事で、公平、公正、透明な採用を目指し、選考や内定の解禁日を決めて、皆で守りましょうといっています。

 しかし現実はどうでしょうか、「指針」は、経団連の約1500の会員企業には徹底できても、それ以外の企業は採用活動は勝手に出来るという事になってしまったようです。
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 これでは経団連傘下の企業だけ割を食う事になりかねません。他社の内定を取っても、あとから経団連傘下企業(主として大企業)の内定をもらえれば、そこに決めるという学生も多いでしょう。しかしそれも公平、公正、透明なのかなどとなりそうです。

 報道によれば、中西会長は「経団連が采配することには極めて違和感がある」と言われていますが、まさに本音でしょう。

 「就職協定」といわれた時代には、文部省や労働省、大学側の組織、大企業中小企業の代表なども関わって、経団連(当時は日経連)が幹事団体になって、議論を繰り返しつつやっていたようですが、それでも、最後には、1996年、就職氷河期の中でやめています。その後、大学側と企業側の協議で「倫理憲章」(大学側は「申合せ」)となりこの所、経団連の「指針」となったという事でしょう。

 いずれにしても、前々から「高速道路の80キロ制限標識」などと言われ、ほとんど守られないものでしたから、廃止の話は常にあったようです( それでも無いよりは良いのではという意見もあったようです)。
 考えてみれば、 根本原因は「企業は人間集団」と考える日本の経営思想、それが生まれる日本的な「人間中心の哲学」にあるのでしょう。

 それが日本的経営の原点で、日本の強さの源でしょう。その結果である新卒一括採用方式を「善し」としながら、就職問題の在り方を模索するのも、困難でも、まさに日本らしさの表れでしょう。
 自分中心をある程度譲歩し、全体についてベストな方法を、学生、大学、企業を中心に、文殊の知恵で考え続けてほしいと思う所です。