tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

より良い経済社会と春闘の役割

2016年01月28日 10時53分47秒 | 経済
より良い経済社会と春闘の役割
 新春早々に連合の交歓会があり政労使の代表者が出席、一昨日、昨日は経団連の「労使フォーラム」が開催されて、労使の代表が意見を述べあいました。
 マスコミはいよいよ「2016春闘始まる」として、労使代表の意見を紹介しています。

 春闘は何の為に行われるのでしょうか。戦後の賃金闘争の発足時は、イデオロギー対立と「食える賃金」といった絶対困窮に近い労働者の生活改善の要求だったでしょう。 
 戦後10年昭和30年代に入り「もはや戦後ではない」といわれた時期に春闘方式は発足、高度成長の中で、昨年を上回る賃上げといった経済闘争に進み、経済成長、賃上げ、インフレの並行する時期はオイルショックのパニックまで続いたように思いもいます。

 第一次オイルショックで、経済はゼロ成長に落ちインフレだけ進む、という経験を通して、日本の労使は、賃金と経済の相互関連性に目覚め「ジャパンアズナンバーワン」と言われた労使に信頼関係で「より良い経済社会を創る」というレベルにまで進化したといえるのではないでしょうか。

 この進化は、プラザ合意以降の強いられた円高の中での「失われた20年」を通して維持され、日本経済・日本産業は、まさに労使の協力で、長期のデフレ不況に耐え、経済・社会の劣化をほぼ最小限に食い止めてきたように思います。

 2013年以降の日銀の政策変更で、円高から脱出した日本経済ですが、その後の復活の中で、健全な発展を取り戻すと期待された日本経済・社会は逆に劣化の度を進めているように思われます。

 具体的な現象面では、かつて一億総中流と言われた日本経済・社会が、経済回復後にも依然として「格差社会化」を進めていることです。

 象徴的な統計数字を上げれば、経済の復活とともに減少(復旧)すると予想された非正規労働者の比率が、逆に上がり続け、さらに、この豊かな日本社会で、生活困窮者の問題が顕在化、昨年、厚生省が「生活困窮者の支援制度」を始めるといった状態です。

 かつて春闘が、労使の主張は90パーセント同じ、などと言われたように、如何に労使の信頼と協力でより良い日本経済・社会を作るかというレベルまで進化してきていたことを考えると、この「経済回復の中での」現状に些か不満を感じる方も少なくないのではないかと思われます。

 今年の春闘はこんな状況の中で始まっています。労使交渉に政府が介入、いわば三つ巴の異形の春闘ですが、本当により良い社会の建設に貢献する結果になるのでしょうか?

 賃上げさえすれば経済が良くなるだろうと昨年を上回る賃金上昇を喧伝しているのは政府(政府の賃金交渉介入は国際的に見ても異常)、
 それに対して、現状の経済・経営の実態を客観的に見て、昨年より要求基準を切り下げる労働組合、
 政府の要請を受け、傘下の主要大企業に、形はともかく金額だけは昨年より多く出してほしいという経団連、
2016年春闘は端的に言ってこんな構図です。

 「昨年より高い賃上げ」というのはかつて労働組合の主張でした。何か噛み合わない労使の主張、間に割り込んだ政府の思い込み「賃上げ=経済好循環」は当を得ているのでしょうか。
そのあたりをもう少し見て行きたいと思います。