tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

経団連「経労委報告」:賃上げで消費を

2016年01月20日 11時55分14秒 | 経営
経団連「経労委報告」:賃上げで消費を
 昨19日、経団連は2016年版の「経労委報告」を発表しました。
 もともと日経連時代から、この報告書は、その年の春闘賃上げについての経営側の基本方針が示されるものでしたが、今年もその役割を意識しつつ、年収ベースで昨年を上回る賃上げをと、アベノミクスの目指す、日本経済活性化の方向を後押しするものとなっている感じです。

 日銀の黒田総裁も連合の新年交歓会に出席、「物価と賃金が両方上がるような賃上げが望まれる」という趣旨のことを言われたようで、河津連合会長も微妙なニュアンスの発言でそれに応えられたようですが、今や、日本経済を救うのは賃上げというのが日本のリーダーの共通認識となっているようです。

 もちろん賃上げが素直に消費拡大につながるかというと、現実に平均消費性向の低下がみられますように、話は簡単ではありませんが、春闘の基本課題は、企業にどこまで賃上げができるかという問題です。

 経団連はその分野の専門団体ですし、語り掛けるのは、必ずしも賃上げに賛成ではない企業経営者ですから、発言は些か慎重になるのは当然でしょう。

 昨年は、いわゆる黒田バズーカ(日銀の追加金融緩和策)で、景気上向きムードの中でしたが、今年は国際情勢の不安定を映した年初来の株価暴落の中での発表です。やはりトーンは賃上げを支持しつつも、慎重さを増す企業にも配慮したものとなっているようです。

 今年は「賃金の一律引き上げ(ベースアップ)」についての表現は昨年より弱くなり、「ベアに限らす、様々な選択肢が考えられるといった表現で、企業の多様な選択に任せるといった感じになっています。

 多様な選択といえば、当然ボーナス、各種手当(特に少子化対応を意識した子育て対応に言及など)ということになるのでしょう。しかし昨年より環境はよくありません。ボーナス増などは難しい企業が多いでしょう。
 非正規従業員の正規化の問題は、当然固定的な総額人件費の増加につながるものですが、総額人件費管理の中で、ベアはともかくこれに力を入れよう(?)というのであれば、それは日本経済社会の安定化(消費性向にも多分好影響)のための素晴らし発想でしょう・・・。

 昨年から今年にかけての日本経済を取りまく国際情勢の変化の中で考えれば、日本経済の成長にベースを置くベースアップ、その時々の企業の収益の変動に連動するボーナスなどといった人件費決定の基本を踏まえた、誰にも理解しやすい方針であってほしいと思います。現に多くの企業はそうした対応でしょう。

 設備投資、研究開発投資の促進に触れているのは、経済団体としては当然と思われますが、その根底を支える人間への投資、教育訓練投資をもう少し前面に出さないと、最近続発する、従業員の教育や技能訓練などの不足による事故は無くならないような気がします。