tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

付加価値の定義、マクロとミクロ

2016年01月07日 11時58分19秒 | 経済
付加価値の定義、マクロとミクロ
 3回ほど前に付加価値について書きましたが、その続きです。
 我々は皆、付加価値によって生きています。原始の採集経済でも、採集という労働によって人間生活に利用できる経済的価値が生まれます。

 人間同士。最初は物々交換だったでしょうが、貨幣が生まれて、こうした労働も貨幣価値に置き換えられ、付加価値の額は貨幣によって表されることになったわけです。
 こうして日本国内で年間に生産される価値もGDPとして測られるようになりました。

 経済学によれば、生産と分配と支出は三面等価で、生産した価値が分配されて消費されることになります。
 この中で生活者である我々に最も解り易いのは「分配国民所得」(マクロ)です。生産された価値は、生産に貢献した「生産の3要素(土地、労働、資本)」に分配されます。
  雇用者報酬=労働への分配、通常これば最大で日本では7割程度
  営業余剰=資本への分配で企業利益などの総合計
  財産所得=土地建物などの賃貸料収入
これが付加価値のすべてです。国民経済計算では極めて明快です。
 (注:国民所得は、GDPー原価償却と理解してください。GDP=粗付加価値、国民所得=純付加価値)

 ところが産業、企業レベル(ミクロ)の付加価値になりますと、統計によって、付加価値の定義がかなり違っていきます。
 財務省の「法人企業統計」、経産省の「工業統計表」、中小企業診断協会の「中小企業の財務指標」などなどで、定義はそれぞれです。

 統計の趣旨によって、定義が違うのでしょう。工業統計表では「付加価値は製造業で作られる」という趣旨でしょうか、サービス部門の付加価値は全部工業に入ってしまう定義になっています。
 企業統計では、金融費用はその企業の付加価値に入りますが、実はその金融費用は金融機関の収入になって、そこから金融機関従業員の人件費が払われるわけです。ですから、法人企業統計では金融業は別になっています。「中小企業の財務指標」では、付加価値と言わず「加工高」としています。

 アメリカでも経営が利益中心になって EVA(Economic Value Added、経済的付加価値)などという言葉が、全くの誤解のもとに使われていたりします。

 企業は利益で生きている(利益が出なければ潰れる)のですから利益の重要性はわかりますが、企業が利益を出し潰れないように頑張って「何をするのか」を考えれば、社会を豊かで快適なものにするという企業理念が明確になり、そのためには、企業が創造する価値「付加価値」が最も大切、という企業の存在意義に行き着くのではないでしょうか。