tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

動き始めた非正規の正社員化

2014年03月20日 11時53分18秒 | 労働
動き始めた非正規の正社員化
 このところ雇用についての良いニュースが続きます。求人倍率の上昇や新規学卒者の就職率の上昇、新卒採用を増やす企業の増加などなどですが、特に喜ばしく感じるのは、非正規労働者の正規化(正社員化)の動きです。

 昨年にはANAが 客室乗務員の一部正規化と今後の正規採用を発表し、2月には、スターバックスが契約社員800人全員を正社員化するとの報道があり、今回はユニクロ(ファーストリテイリング)が、パート、アルバイトの半数以上の16,000人を正社員化する方針を決定したという報道がありました。

 もともと正社員採用を基本にし、正社員が好きな日本企業が、非正規社員を全雇用の35パーセント以上にまで増やしたのは、超長期の円高デフレの中で、国際競争力維持のために已むに已まれず正規従業員を削減し、非正規を増やして平均賃金を下げるという、まさに窮余の一策として選択せざるを得ないという事情があってのことです。

 ですから、「いざなぎ越え」といわれた微かな景気回復の中でも、一部企業に正社員化の動きはありました。しかしリーマンショックによる一層の円高は、新たなコストダウンを企業に強い、非正規の増加は、格差社会という問題の原因と指摘されてきました。

 このブログでは以前から、景気の回復による雇用の正常化が企業の自主的な取り組みによって行われることがベストといってきましたが、20円幅の円安をベースにした景気回復の動きの中で、いよいよ雇用改善の動きが出てきたと、心から喜んでいます。

 各企業が一様に指摘しているのは、これまでは円高対応、企業サバイバルのためにコストダウンしか考えてこなかったが、日本経済の正常化の中で、改めて人材の確保・増強、教育訓練の徹底による人材育成、を今後の企業成長の重要な柱にしなければならないという、本来のあるべき企業と人材の関係への回帰です。

 一部には、日本企業は、コストダウンだけ考えて人材を使い捨てにするといった批判も聞かれました。しかし、本来日本の経営者・管理者は、本当に企業の長期的発展を考えるならば、その基本は人を育てることにあるという最も正常な視点を失ってはいないと思います。それこそが日本的経営の原点です。

 日本的経営の本質は
① 長期的視点に立った経営
② 人間中心の経営
の2本の柱から成り立っているというのは、かつて日経連(現日本経団連)が繰り返し主張してきたことです。経営は長期的視点に立てば、必然的に人間中心になります

 立法や政策ではなく、企業(労使)が自ら判断し、雇用の構造、雇用の質が正常化し、格差社会といったイメージも解消し、かつての一億総中流といわれ、所得配分のジニ係数がデンマークに次いで世界第2位といわれた日本に復元していくことを願う所です。