tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

賃上げ、金融政策と物価の関係 3

2014年03月17日 10時49分18秒 | 国際経済
賃上げ、金融政策と物価の関係 3
 最後に最も強力な「物価水準決定要因」が登場します。それは「内外価格差」です。
 国際化、グローバル化の今日です。電力のような国内限定の生産・消費構造のものや、TPPの例外5品目のように、政策的に、国内価格と国際価格が切り離されているもの以外は、モノであれ、サービスであれ、日本の国内価格だけが外国の水準より高いということは成立しません。

 例え言えば、隣の店でウチより安く売っていたのでは、ウチには誰も買いに来ないようなものです。
 国内のマーケットでも、今では、外国から安いものがいくらでも入って来ます。国際航空運賃、国際通信料金などでも国際競争は熾烈です。
 国内旅行の代金が高ければ、簡単に海外旅行に乗り換える時代です。高かった国内旅行の料金も今では随分安くなりました。

 つまり、日本の物価は常に海外物価と比較され、海外より物価が高ければ否応なしに下げざるを得ないのです。
 御存じのように、1985年のプラザ合意と2008年のリーマンショックで1ドルが240円から80円という極度な円高状態になり、その結果日本はコスト(含賃金)も物価も世界一高い国になりました。我々の経験した長期デフレというのは、そうした高コスト、高物価の状態から、賃金水準を下げ(非正規労働を増やし)、あらゆるコストカットをやり、リストラをやって、物価を国際価格並みに下げるプロセスでした。

 そして、その最後の仕上げが、昨年4月の日銀の政策変更による20円の円安実現だったというわけです。
 さてこれで日本の物価は国際価格並みになったのでしょうか。現実はまだら模様で、なった所はデフレが終息、まだ高い所はデフレから抜け切れていないというのが実態でしょう。

 内外価格差の解消は、
① 日本の物価が下がるか、
② 外国の物価が上がるか、
③ 円安になるか、
この3つの動向次第ということになります。

 現政権はアベノミクスの第3の矢でデフレ脱出などと言っていますが、それにはもう少しのコストダウン、価格引き下げが必要でしょう。それよりも、あと5円か10円、円安にすれば、デフレは多分雲散霧消でしょう。
 しかしそこまで行くと、「日本は為替操作国」というレッテルを張られるかもしれません。

 では、今、日本は、デフレ脱出のために何をしようとしているのでしょうか。その為のプレーヤーは政府であり、日銀であり、今春闘の渦中にある「労使」なのです。
 さて、日本の戦略はうまくいくのでしょうか。次回はその辺りを見てみましょう。