tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

公的年金運用の基本

2014年03月25日 23時12分57秒 | 経済
公的年金運用の基本
 最近また、公的年金の運用問題が論議されているようで、新聞紙上でもいろいろな意見が見られます。

 大体こういった議論が活発になるのは、景気が多少とも上向いて、株価が上がり、堅実な国債運用ではいかにもリターンが少ないので、多少リスクがあっても運用ポートフォリオの中で株式などの比率を増やした方がいいのではないかといった雰囲気になった時ということになっています。

 株式市場の方でも、GRIF(年金積立金簡易運用独立行政法人)が買い出動するといった噂で 日経平均が動いて見たり、新聞の識者の意見の中に、「GRIFは株式市場のためにあるのではない」などという意見があったりして、何か違和感を感じるのは私だけではないでしょう。

 厚労省の資料を見ても解りますように、年金の計算は22世紀の初頭までシミュレーションがされていて、偶々今株が上がっているからどうこうといった論議の前に、もっと本質的な論議があってしかるべきでしょう。
 ごく短期間のキャピタルゲインの極大化を狙うようなマネーゲーマーまがいの論議は別の所でやってほしいように思ってしまいます。

 以前、こんな話を聞いたことがあります。
「1626年オランダ人がマンハッタン島をインデアンから26ドル相当の金額で買い取った。今はマンハッタン島の地価は大変なものだから、これは大儲けだ、という人がいる。しかし、26ドルをそのまま銀行に預けておけば、利息が付いて、今のマンハッタン島の地価総額とあまり変わらない額になっている。」

 計算で確かめてはいませんが、金利というのはばかにならないというのも事実です。日本がプラザ合意で長期不況に陥る前は、企業は軒並み退職金の原始を活用して厚生年金基金制度を導入し、健全運用でプラスアルファの給付をして、退職者は喜びました。まともな金利がつけられればそれが可能だったのです。

 今の公的年金の惨状は、少子高齢化が主因でしょうけれども、国債の利回りが、ゼロ金利政策のせいで異常に低いことの影響も甚大です。だから株式運用でリスクを取っても稼げといった意見が出るのでしょう。

 しかし、合計特殊出生率1.3人台、ゼロ金利政策が今後100年続くでしょうか。これらは、日本人の努力次第で、やろうと思えば、10年20年30年かけてより良い数字を出せるような日本にすることで変えられるものではないでしょうか。

 年金は本来、日本経済の発展の中で健全に支払っていくべきものでしょう。株が上がってきたから株式運用を増やせというのも、窮余の一策かもしれません。しかしマネー資本主義に堕したアメリカと違って、日本には、伝統的に「浮利に走らず」という健全な金銭感覚があるのです。インカムゲイン(額に汗したカネ)とキャピタルゲイン(あぶく銭)を識別する意思と能力は備わっています。

 理想論という批判はあるでしょう。しかし日本は日本らしい王道を、堂々と進み、世界の規範になるべきではないでしょうか。