tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

円高を止める具体的方法-4

2011年01月20日 11時46分41秒 | 経済
円高を止める具体的方法-4
 今年も日本経団連がいわゆる「経労委報告」を発表し、連合との間で、トップ会談をキックオフに、例年の「春討」が行われる時期に入りました。

 連合の基本的な方針は、長期的には(賃金水準・名目GDPが最高だった)1997年の賃金水準回復を目指し、1パーセント程度の総収入(含賞与・手当など)増を要求する、非正規労働者の正規を上回る賃上げに取り組む、という事のようですが、単産、単組に下りると、引き上げは要求しないところも多く、定昇実施が要求の実質になりそうで、一方、経団連のほうも、定昇実施は認めるといっていますから、大方の方向はもう決まったようなものでしょう。

 ということで、今年も賃金の上昇はゼロ近傍でしょうが、円高阻止のためには、賃上げをしたほうがいいという意見は、結構多いようです。

 以前、ロナルド ドーア氏が日本の新聞に寄稿した記事に、「日本がデフレを脱却するには賃上げをしてインフレにすれば、いいのではないか。そうすれば為替も円安になり日本経済はうまくいくと思う。」と言った趣旨のものがあって、「そんなに旨くいくものでしょうか」と感じた記憶があります。

 最近でもある地方紙で、大学の先生が「今必要なのは内需拡大で、そのためには家計の収入が増えなければならない。それには賃上げこそが必要なのだ」と書いておられるのを見ました。

 「内需拡大のために賃上げを」という意見はエコノミストや評論家といった第三者には結構あるのですが、賃上げを要求する当事者の連合やその傘下の労組が、あまり強くそうした主張をしないのです。何故でしょうか。
 
 多分賢明な日本の労組は、今の状況で無理に大幅賃上げをすれば、企業の収益を圧迫することは明らかで、賃上げで企業収益が減れば、雇用へのマイナスの影響が更にひどくなるだろう。
 さらにこんな状況では賃上げをしても消費拡大には直結しない、多分、将来不安から貯蓄に回る部分が大きく、賃上げが内需拡大につながる保証はなく、企業収益悪化、雇用不安助長では元も子もない。
 国民は萎縮して消費は伸びず、生活防衛、貯蓄指向で黒字が拡大すれば、円高につながりかねない、と確りと先を読んでいるのでしょう。

 過去の研究でも、個人消費の伸びは、賃金の上昇とはあまり関係なく、雇用の安定とより関係があるという事のようです。
 今の状況で賃上げをしたら、どんなことが起こりそうかを、次回、少し丁寧に考えて見ましょう。