tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

賃上げと円高の共通点と相違点:その3、日本の場合

2010年10月11日 12時46分43秒 | 国際経済
賃上げと円高の共通点と相違点:その3、日本の場合
 今朝のニュースでも中国人民銀行」の周小川総裁は、ワシントンで「人民元を上昇させるだけで世界経済の問題は解決しない」と述べ、人民元の大幅な引き上げを否定しています。
 食べすぎで下痢を起こし、体力を消耗しているアメリカが、中国に「お前も絶食(減食)して体力を落とせ」といっているようなものですから、本当の問題解決の方法が別であることは自明でしょう。

 ところで、日本は、プラザ合意の際、中国と違い、「ハイ、ハイ」と円高を容認した結果、極端な円高を強いられ、「失われた10年」を経験することになりました。
 問題は2つあって、1つは円高容認の前に、「アメリカも双子の赤字をきちんと治してくれれば」という条件をつけること、もう1つは、例えば、「$1=¥190程度までの円高なら容認する」といった明確な意思表示をすることだったのでしょう。

 無条件で「ハイ、ハイ」と言ったので、アメリカのキリギリス 生活は是正されず、ついにはサブプライム・リーマンショックで世界経済を混乱に陥れることになり、一方、円は限度を超えて大幅に上昇し、日本経済は壊滅的な打撃を受けて、世界経済に貢献する力もか弱いものになりました。

 何度も繰り返しますが、プラザ合意後の2年間で円は2倍に切り上がり($1=¥240→120)、賃金も物価も(それ以外のコストも)例外なしに2倍になり、日本は、世界一の高賃金・高物価国になったわけです。

 もし日本がプラザ合意の円高の代りに「2年間で2倍」の賃上げをしていれば、賃金コストに関する限り、2倍の円高と同じです。しかし賃金以外のコストはそこまで上がりませんし、物価は後から賃金コストプッシュでじりじり上がることになり、しかし十分には上げきれず、多分、ヨーロッパのようにスタグフレーション気味になっていたでしょう。

 一方、円高の場合は、賃金以外の国内コストも、物価も同時に2倍になります。国内では、物価が上がった意識は全くありませんが、国際的には物価が2倍ですから、国際取引に曝されているところから「デフレ圧力」で物価が下がり始め、賃上げもしなかったのに賃下げ圧力となり、やがてそれはタクシー代や旅館の宿泊代、新聞料金、理髪料などなど、全経済分野に及びます。これが失われた10年です。
 
 賃上げも円高も、結果的に起こるのは、同じ賃金コストアップですが、その先は、賃上げなら「インフレ」か「スタグフレーション」に、円高なら「デフレ」に、という事になります。
 そして、デフレのほうが、経済・社会にずっと 悪影響が大きいことは、経験で明らかです。