tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

気になるインフレへの理解の不足

2010年10月06日 15時58分43秒 | 経済
気になるインフレへの理解の不足
 長い間デフレばかりを経験してきた日本経済ですので、インフレとはどんなものでどのようにして起こるのか忘れてしまった人が多いのでしょうか。
あるいは、学生時代に習った、マーシャルの貨幣数量説だけでインフレを考えているせいでしょうか。

 その辺りはよく解りませんが、様々あるインフレ を、10把ひとからげにして、「インフレはみんな同じ」と考えているような発言が多くなっているように思えてなりません。

 インフレターゲット論などは典型的なのかもしれませんが、単純に、インフレは金融政策で起こせるものと考えているように思えます。金融政策ではインフレは起こせない場合もありますし、起こせるのは(土地バブルなどの)特定のインフレに限られるという事がわかっていないようです。

 今回の日銀の追加金融緩和では「この金融緩和政策は、デフレが解消する(インフレ率が1パーセント程度になる)まで続ける」という事のようですが、インフレ率が1パーセントというのをどう理解すべきでしょうか。この辺りを誤らないことが大事のような気がしています。

 日本の物価がほぼ国際並みになって、デフレを脱した「いざなぎ越え」の時期から見て、円は3割ほど上がりました。日本のコストと物価は国際的に見て3割上がったという事です。いざなぎ越えの時のような国際物価との均衡状態を取り戻すためには、この3割ほどの格差が解消しなければなりません。

 これは簡単なことではありません。日本経済のコストの7割以上が人件費です。国際的に見れば、この2年、ゼロ成長の中でで3割賃上げをしてしまったのと同じことになります。為替レートの切り上げは、ホームメイドインフレの原因である賃上げと同じ効果を持つのです。上げすぎた賃上げは、何年かかけて下げねばなりません。現実には、デフレがそれをやってくれるのです。

 日銀が考えているのはGDPデフレータが上がるようなインフレでしょう。それは、賃金が上がることによってしか起こりません。今回も予兆が仄見える資産(土地)インフレや、国際資源価格の高騰による輸入インフレはGDPデフレータには関係ありません。

 国際経済と日本経済の関係において、インフレ問題を論じるときは、賃金コストの変動で論議すべきでしょう。そして、国際比較での賃金コストは、「賃上げ」でも「円高」でも同じように(円高の方が徹底した形で)上がります。
 円高の時は物価も同時に同じ率で上がりますので、デフレ圧力がすぐに来ることになります。