tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

経常赤字、経常黒字のインパクトと対応策

2010年10月27日 10時10分25秒 | 国際経済
経常赤字、経常黒字のインパクトと対応策
 アメリカは、中国の経常黒字が、GDPの6パーセントにも達している、これは如何にしても大きすぎる、だからアメリカが赤字になるのだ、と考えているようにみえます。
 しかし、サブプライム問題発生以前のアメリカの経常赤字は、5パーセントを越えていました。

 しかも、中国のGDPは大きくなったといっても、アメリカに比べればまだまだ小さいわけです。ですから経常黒字の絶対額、経常赤字の絶対額を比べてみると、最近時点でアメリカの経常赤字が5,095億ドル(2010年上半期、年率)、中国の経常黒字が2、971億ドル(2009年)ということで、それぞれの赤字と黒字が世界経済に与えるインパクトは、アメリカのほうが絶対額でずっと大きいというのが実態です。

 これでは、中国の黒字を減らして、アメリカの赤字を消そうといっても、それはとても不可能でしょう。無理にやれば、今や世界の大きな市場でもある中国の経済力を「オーバーキル(over kill)」することになり、世界経済にとって大変なマイナスになるでしょう。

 日本に、プラザ合意で大幅な円高を強いて、日本経済に「失われた10年、20年」をもたらし、世界経済の発展の貢献するべき日本の経済力を弱め、日本社会の健全性まで毀損しましたが、日本の経常黒字もアメリカの経常赤字も基本的には変わらなかったというのが現実です。

 加えて、大きな問題は、国際金融資本の行動です。今の世の中、実体経済に関わる取引とは比較にならない巨大な金融資本が、高いレバレッジ、多様なデリバティブ、ノーベル賞級の金融工学を駆使して、世界経済のためではなく、自らの キャピタルゲインの実現を狙っています。
 「神の見えざる手」とは、およそかけ離れた金融マーケットでしょう。

 なぜなら、こうしたマネーゲームで、大きなキャピタルゲインを得るためには、金利や為替レートの変動は出来るだけ大きくなければなりません。市場が安定していたら彼らにビジネスチャンスはありません。過大な振幅を求める金融資本主義と安定した持続的発展を求める実体経済とは、全く相容れないものなのです。

 世界経済の安定的発展は、金融規制をどこまでやるかという問題と直結しています。 アメリカの金融規制法案、IMFの国際金融通貨委員会 などは、どこまでのことを考えているのでしょうか。
 本来、実体経済に奉仕することが金融の役割だったはずです。にも関わらず、資本主義の鬼子 、国際金融資本は、資本主義が危殆に瀕するまでに大きく育ってしまいました。

 こうした現実の中で、今、G20は、IMFは何をすべきか、関係各位に本気で、世界経済、資本主義の将来を見据えた論議をして欲しいものです。