tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

慶州G20: 過度な経常収支の不均衡の是正

2010年10月23日 22時11分16秒 | 国際経済
 韓国の慶州で開かれていたG20は、このところのG20の中では出色の出来だったのではないでしょうか。

 世界中が、通貨の切り下げによる国際競争力の強化は怪しからんといいう論調で一致するといった状態が、アメリカのドル安政策と共に起こり始め、アメリカ自身、中国の人民元切り上げをいいながら、ドルの切り下げをすることの評判の悪さを悟ったのでしょう。
 
 「近隣窮乏化政策」などという古い言葉まで持ち出されては、為替レートで議論することは難しくなったようで、新しく考え出されたのが「過度な経常収支の不均衡の是正」でした。
 マスコミの中には、これも人民元切り上げを別の形でいっているといった論評をしているところもあるようですが、これは本質的に違う展開になると考えるべきでしょう。

 GDP比4パーセント以下にするという数値目標は合意されなかったようですが、ご都合主義の見え隠れする4パーセントといった数字よりも、各国は万年黒字、万年赤字といった経済運営を是正する努力をしようという基本的なメッセージは極めて大事だと思います。

 このブログでも「 アリとキリギリス」にたとえて、以前からその点を指摘していますが、キリギリスの大親分のアメリカの経常赤字は、2008年まではGDPの5~6パーセントでした。これがサブプライム・リーマンショックで住宅バブルが崩壊し、住宅担保の消費支出が剥げ落ちて、2009年には2.7パーセントに激減し、2010年上半期でも3.5パーセントです。

 アメリカがGDP比4パーセント以下という数値目標を出したのは、この数字を前提としたからでしょうが、みんなが望むようにアメリカの雇用や景気が早期に回復すれば、すぐにまた5パーセントに近づく可能性は大きいと思います。

 経常収支の対GDP比を問題にすることになると、アメリカ経済も大きな枠をはめられることになりそうです。まともに考えればアメリカの回復は遅れます 。しかしアメリカ経済が健全になり、世界経済に迷惑をかけないようになるためには、これは必須のプロセスでしょう。

 「経常収支の対GDP比を中・長期的にゼロに近づける」という経済運営のアプローチは、世界経済を安定させるためには大変優れたアプローチだと思います。
 日本の場合、今年度の政府経済見通しでは、この数字は3パーセントほどですが、今まで書いてきましたように、これを減らしていくことは日本にとっても大変重要 なことでしょう。

 ということで、このアプローチについて、次回から、少し考えてみたいと思います。