tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

投機マネーの巨大化と時価会計

2009年03月14日 11時59分15秒 | 経営
投機マネーの巨大化と時価会計
 時価会計というのは、市場性のある金融商品(含むデリバティブ)の一部や販売用不動産などの企業の資産を評価する際に、その時点の市場価格で評価するという方式です。
 具体的にいうと、ある銀行の持っているA社の株が、昨年の3月末には1000円だったが、今年の3月末に300円に下がっていたら、その資産の価値を7割切り下げて評価し、評価損を計上しなければならないということです。今日のようにマネーゲームで株価が乱高下する時、時価が本当の評価価値なのでしょうか。

 日本はもともと取得原価で評価する「取得原価法」が中心で、「低価法」(低い時の価格で評価する)も使われていましたが、これらは、良い会社の株を長期に持っていれば、当然次第に値上がりするが、資産内容を過大に評価して人の目を欺くことのないように「会社はつつましく自分を評価せよ」という「保守主義」の原則に立ったものでした。

 それが、アメリカ主導の国際会計基準の中で、含み損益があるようでは企業の本当の内容がわからない。最も透明なのは時価評価であるということになったようです。確かにこれも理屈でしょう。

 「時価」とはなんでしょうか。昔は、すし屋にいくと、すしのタネごとに値段が書いてあって、「うに」と「いくら」のところだけ「時価」と書いてありました。時価は変動します。すし屋さんも一貫いくらで出せるか予想できなかったからでしょう。

 ところで、安定経営が大変大事な企業についても時価会計が導入されています。企業の基本理念であるゴーイングコンサーンの中心概念は安定と長期存続です。その資産評価が「時価」でいいのでしょうか。透明性という点から言えば確かにそれも理屈です。
 
 しかし、今の世の中、実需マネーとは比較にならない巨額な投機マネーが跳梁跋扈しているのはご承知の通りです。原油価格ではありませんが、数ヶ月のうちに倍以上にも半分以下にもなります。株価も似たようなものです。

 特に、金融機関のような、安定が最も大事な企業が、時価会計ですと、投機資金の活動で保有金融資産が乱高下しますから、BIS規制などはほとんど意味を持たないでしょう。

 アメリカでも今回の金融危機で時価会計の停止が一部導入されたようですが、時価会計主義がまずいのか、投機資金の横行がいけないのか、いずれにしても、ますます巨大化する投機マネーと時価会計主義は、今のままでは両立しないように思うのですが、どうでしょうか。