tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

年功賃金考 その1

2008年09月06日 14時48分36秒 | 経営
年功賃金考 その1
 日本的経営の三種の神器は「終身雇用」「年功賃金」「企業別組合」といわれました。皆様ご存知のように、これは、J. アベグレンが1958年に「日本の経営」の中で述べ、後に、1972年、OECDの対日調査団がその報告書の中で取り上げて、世界的に有名なったものでした。

 日本が高度成長期からジャパンアズナンバーワンといわれるようになる過程で、日本の人事賃金制度や労使関係は世界の注目の的となり、海外から無数の調査団が、日本の成長の秘密を探ろうと訪日する中で三種の神器はさらに広まりました。

 今では日本自体の中でさえ、日本的経営など古臭くて役にたたないと考える人が多くなったようですが、本当にそうでしょうか。グローバリゼーションとローカリゼーションが交錯する中で、行きすぎた日本的経営の否定論からのゆり戻し現象も多く見られます。

 最も強く否定されたのは「年功賃金」でした。しかし日本の賃金はまだまだ年功的要素を多分に残しています。やはり日本の風土と日本人の文化に根ざしたものはなかなか否定仕切れないということでしょうか。

 能力主義を導入しても、どうしても年功的な要素が重視される形になってしまい、思い切って成果主義を入れれば、今度は、日本の企業の組織文化に合わないと否定されるのが実態です。

 かつて、日本経済が落ち目になる中で、年功賃金を否定するために言われたのは
「賃金が毎年上がるような制度は、高度成長の時ならいざ知らず、不況期には不可能」
というものでした。多くの人はそう思ったようです。

 しかし当時から、「年功賃金は企業が成長しなくても、毎年賃金が上げられるように設計された、大変ユニークな発想によるものではないのか」という意見はあったようです。

 かつての日本の土地価格や最近までのアメリカの住宅価格のように、確実に年々上がるものがあれば、国民は安心して前向きな生活が出来ます。 賃金が毎年上がるなら最高です。日本の企業は、戦前のパターナリズムと言われた時代から、そうした賃金制度を目指していたようです。