tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

年功賃金考 その2

2008年09月07日 17時49分06秒 | 経営
年功賃金考 その2
 年功賃金制度には、今では懐かしい言葉でしょうか、「定期昇給」というのがあって、毎年かなりの賃金が自動的に上がるのです。何故毎年賃金が上げられるのでしょうか。
 単純に考えればこういうことです。

 たとえば、生涯の平均賃金を月額30万円とします。初任給を15万円にして、1年勤続しないと給料が上がりませんから31年勤続するとして、その間定期昇給で毎年1万円賃金が上がり続けるとすれば、31年後には45万円の賃金になります。

30万円の月給を31年間もらっても、30×31は930万円、15万円から出発して毎年1万円昇給して31年勤めても、合計は930万円で同じです。もちろん1年は12ヶ月ですから、総額はその12倍ですし、ボーナスなどがあればその分多くなります。

しかし問題は、職務給(職務一定として)で同じ額を31年間払っても、15万円から45万円になる年功給で31年間払っても、「きちんと設計してあれば」、算術的には支払い金額は同じと言うことです。前回書きました「企業が成長しなくても年功賃金は可能との見方があった」というのはこのことです。

これが現実にどう可能かといった点についてはいろいろ論議があるでしょう。しかし昔の日本では、
「若い者に給料を沢山やっても、どうせ無駄遣いしてしまうだけだから、多いのはよくない。」
「所帯を持つようになったら、それなりの賃金になるというのがいいんだよ。」
「子供が出来ればまた金がかかるから、給料も増えていたほうがいいだろう。」
と言った温情主義(パターナリズム)の発想が、年功賃金の根底部分にあったようです。

 高度成長下の日本では、新卒欲しさに企業は競って初任給を上げました。しかし、年功賃金では初任給の引き上げは、最終賃金のダウンがないとバランスが取れません。平均賃金を支点にしたシーソーのようなものです。現実の企業社会での結果は皆様ご経験のようなことになりました。

 ところで、パターナリズムはとうに、時代遅れとして否定されているはずですが、結婚適齢期になればそれなりの給料、子供が学校いく頃にはそれなりの給料をと望む人が多いのも現実です。
日本の賃金制度はまだまだ揺れ動いていくのではないでしょうか。