tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

景気回復策あれこれ  その5

2008年09月20日 10時14分31秒 | 経済
景気回復策あれこれ  その5
 財政政策も金融政策も、もう打つ手がなくなってしまった段階での「失われた10年」と言われた不況、それでも10年もたつと、何となく景気は持ち直してきました。政策がなくても、時間がたてば、景気は回復する?ということなのでしょうか。「景気はサイクルだから」などといった説明もありそうですが、もう少し構造的な中身を見てみましょう。

 「政府の景気回復策がなくても景気回復」の背後には、企業の血の滲む努力がありました。
世界一物価もコストも高くなった日本で、企業に要請されたのは「コストダウン」です。コストダウンで価格を下げ、海外との競争に太刀打ちできるようにする、輸出産業だけではありません、大は航空会社、電信電話会社からタクシーやホテル、レストランまで、日本中の企業が、カルロス・ゴーんさんではありませんが、「コストカッター」になりました。

 デフレ不況ですから、名目GDPは毎年下がり、企業の売り上げも毎年下がります。そのままでは、利益が無くなって、いつかは企業は潰れますから、企業は「売り上げが減ったら、コストをもっと減らして」利益が出るように(増えるように)、死に物狂いの努力をすることになります。

 こうして減収・減益(売上減・利益減)が続く中で、コストダウンに成功した企業の中に減収・増益(売り上げ減以上のよりコストダウンを実行)を記録する企業が出てきたのです。
 2002年にいたって、大企業の中に、「減収・増益」という企業が増えてきました。企業は利益が出れば、前向きの政策を取ります。こうして2002年から、景気回復の傾向が見えるようになりました。

 その一方で、中小企業の大半、不況業種、不況地域、などでは、まだまだ「減収・減益」の企業が多く、環境と、コストダウン力の違いが、企業間格差を拡大させることになったようです。政府が景気回復といっても、「回復なんてとんでもない」と、地方、中小企業などは言いっていました。

 企業間格差拡大の中で、弱いながら景気回復が始まったのです。この景気回復のためのコストダウンでは最大のコスト「人件費」(日本経済の要素費用=国民所得の7割は人件費)が重要な標的になりました。人件費のカットは、雇用削減や賃下げもありましたが、大きな効果を持ったのは「非正規従業員の増加」です。こうして発生した賃金格差と前述の企業間格差の両方の拡大から、「所得格差の拡大」がクローズアップされ、今に至っています。

 財政、金融の現状を見れば、当分、政府の経済対策は期待できないでしょう。不況克服は企業が自力でやるよりありません。21世紀になっても、政府の経済対策はマーシャル(金融政策)とケインズ(財政政策)を出ていません。経済学の貧困でしょうか。