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tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

7月消費者物価、インフレ心理収まらず?

2023年08月18日 12時16分33秒 | 経済
今朝、総務省統計局から2023年7月度の消費者物価指数が発表になりました。
このブログでは毎月の動きを見ていますが、今年に入って一層高まってきた生活必需品関係のインフレマインドは収まる気配がないようです。

マスコミの報道では対前年上昇率3.1%とし、昨年8月以来3%を超えたままといった上昇を強調するものと、6月の3.3%から0.2ポイント下がったと指摘するものとあります。

3.1%という数字は「生鮮食品を除く総合」で、「総合」は3.3%の上昇で6月とかわらず、「生鮮食品とエネルギーを除く総合」は4.3%の上昇です。
7月は、生鮮食品が高値で、電気・ガスなどのネルギーが下がったことを反映しているとの説明ですが、昨年来の3指数の動きは下図の通りです。

「生鮮を除く総合」(赤)と「総合」(青)お天気や漁獲量、鶏卵などの価格の動きで差がでるわけですが、通常は大体並行しています。6月は同じ3.3%の上昇でした。

    消費者物価3指数の対前年上昇率(%)

                     資料:総理府「消費者物価指数」

問題は、「生鮮とエネルギーを除く総合」(緑)の動きで、この所、青と赤はほぼ横ばいですが、緑はなかなか上昇が止まらない事です。
緑の線は、輸入エネルギー価格の変動や、気象状況による生鮮食品の市況の影響も受けない、国内の一般的事業活動による物価の変動とみることが出来ます。

アメリカでも、食品とエネルギーを除く総合」という指数が発表されていて、これは消費者物価の核心という意味で「コアコア」と呼ばれています。
アメリカのコアコア指数は一時7%近くまで上がって、FRBがインフレを抑えるべく金利を大幅に引き上げたことはご承知の通りです。

7月のアメリカのコアコア指数は4.7%に下がっていますが、FRBは、まだインフレ心理は収まっていないと金利引き上げの姿勢を維持、お蔭で異常な円安になり、日銀も困っているようですが、日本のコアコア指数が4.3%になっても日銀はインフレと言いません。

多分、日銀は、日本の場合は一時的なもので早晩自然に収まるという見方のようですが、もう日本の消費者物価が上昇を始めて、1年半以上になって、日本のコアコア指数は上昇傾向を維持しています。10月には、また日用品の一斉値上げがあるようです。

消費者物価の3指数全体の長期の動きは下図の通りです。

       消費者物価3指数の推移(2020年=100)

                     資料:上に同じ

 上がるのが少し遅れた分、緑の線は上がり続けるのかもしれません。それにしても、そろそろ安定方向に転じるはずと思っていますが、コアコアの中でも生活必需品は10%前後の上げ幅を続けているのを見ますと、一部にインフレマインドが生れている可能性なしとしません。(円安定着ならインフレ・賃上げ容認という政策もあるわけですから)


このままでは、賃金が多少上がっても、物価上昇に食われてしまう状態ですので、政府の公共料金政策も、日銀の金利政策も、的確な対応を早期に国民に周知する必要がるように感じるところです。

2023年4~6月期GDP速報:年率換算6%成長というが

2023年08月16日 18時10分25秒 | 経済
昨8月15日、内閣府より今年4~6月のGDP第一次速報が発表になりました。

マスコミ報道では季節調整値の対前期比実質成長率が中心の解説が多く、実質GDP成長率1.5%、年率換算では6%成長と順調で、3四半期連続の実質プラス成長、実額GDPも史上最高といった記事が多いようです。

確かに昨年秋以来、世界的にコロナ終息の気配となり、日本経済も何となく元気を取り戻すような気配になり、春闘の結果も高めになっていました。

しかし、この4~6月の四半期GDP速報をつぶさに見れば、どうも手放しで喜べる状態ではない面もあります。

このブログでは、最近3か月という短期の動きではなく、この1年の各四半期の対前年同期の伸び率を見ることでもう少し趨勢的な動きを重視していますが、そのあたりの問題点も含めて見ていきたいと思います。

先ず、昨年4~6月期に対し今年4~6月期のGDPは実質2%の成長で前1~3月期と同じです。今年に入って実質2%ペースの実質経済成長を維持しているという事です(以下数字は全て実質ベースです)。

2%成長でも、これまでから見れば順調と言えるでしょう。
ではどの分野で成長しているかと言いますと2%の成長のうち、国内需要の分が0.8、海外需要(純輸出=輸出-輸入)で稼いだ分が1.1で計1.9です(四捨五入の関係で0.1%合わない)。

外需は輸出の増えた分が0.7、輸入が減った分が0.4で、計1.1です。円安もあり輸出は順調、輸入はかなり減ったという事です。

ぉう見てきますと、先ず、国内経済活動でより海外との経済活動でGDPを稼いでいることが解ります。

次に国内需要ですが、2%の経済成長への内需の貢献分(寄与度)は0.8です。そしてこれを民間需要と公的需要に分けますと、民需が0.6で公需が0.3で計0.9です(これも四捨五入のせい)。

民需の0.6の内、民間の消費支出は僅か0.1、住宅建設が0.1、企業の設備投資が0.5で、計0.7(これも四捨五入・・)です。

公需は、政府の消費支出が0.1、政府の設備投資が0.2で、計0.3という事になっています。

ここまで見てきますと、マスコミの解説にあります「消費は増加しているが、消費者物価の上昇で実質質成長率には貢献していない」という指摘は「その通り」でしょう。

しかし日本中の家計消費の、この1年間の実質GDP成長2.0%への寄与度が僅か0.1で、政府の消費支出の寄与度0.1と同じでしかないというのは一体何故?、と驚きです。

同様に、日本中の企業の積極的な設備投資の寄与度が、2%成長の中の0.5で、政府の設備投資の寄与度が0.2とその4割相当もあるというのも驚きです。

政府の設備投資( 正確には政府固定資本形成)がこのところ急激に増えているのも気になります、前年同期比実質(%)で2022年4-6月▲9.2、7-9月▲5.1、10-12月▲2.4、2023年1-3月+3.0、4-6月+4.7と毎期急伸です。(防衛装備品でしょうか?

政府の発表する統計に問題があるとは言いませんが、この様な民間停滞、官公需要と外需でもつ日本経済というのは、政府としても本気で「問題だ」考えるべき事ではないでしょうか。

輸入物価下落、企業物価安定、消費者物価上昇

2023年08月11日 13時47分24秒 | 経済
昨日、日銀から輸出入物価と企業物価の7月分が発表になりました。
マスコミの報道では企業物価の対前年上昇率が7カ月連続で低下しているといった企業物価の安定傾向が指摘されています。

企業物価というのは、以前は卸売物価と言われていたもので、日本経済が成長していた時代には卸売物価は余り上がらずに消費者物価がいつも上がっているというのが常識でした。

卸売物価は物が中心の物価ですから、日本の製造業は生産性が上がるので、卸売物価は余り上がらず、一方、各種サービスなどを含む消費者物価は毎年生産性上昇以上の賃上げがあるので常に賃金インフレ傾向でした。

以下、毎月続けている所要3物価、輸入物価、企業物価、消費者物価の3指数の最新の動きを見てみましょう。

      主要3物価指数の推移

                    資料:日本銀行、総務省

先ず、主要3物価の原指数の動きです。
輸入エネルギー価格の影響の大きい輸入物価(青線)は昨年夏から下がり続けです。最近下げ止まった感じですが、これは円建てなので、円安のせいで下げ止まりですが、契約通貨建てではもっと下がっています。今の円安は些か異常で(アメリカの利上げ志向のため)、一時的でしょう。

企業物価(赤線)は輸入物価下落の影響で今年に入っては殆ど横這い、微かな下げです。当初輸入価格の転嫁が進まず、今春あたりから政府や財界も価格転嫁促進を言うようになりました。
価格転嫁が遅れたのが価格が下がらない要因ならば、今後次第に下がるでしょう。

消費者物価(緑線)は、7月までのグラフにするため、総務省の消費者物価統計の内、発表の早い東京都区部の速報です。これは昨年春からずっと上昇続きです。
原因は皆さんご承知の、アベノミクス下で価格転嫁が困難だった反動ともいえる業界ぐるみ一斉値上げの波状展開のためです。

コロナもあり、消費者物価は上がらないものなどと思われていましたが、輸入物価、企業物価の上昇は当然消費者物価にも影響が及んできます。値上げ我慢が限界にきて爆発したのが波状一斉値上げの繰り返しというのも解りますが、最近の値上げ幅が、生活必需品中心に年率10%前後という状況は、些か問題でしょう。家計調査の中では、既に需要減退の傾向もみられるようです。

これを対前年同月の年間上昇率に引き直したが下図です。

      主要3物価の対前年同月上昇率(%)

                  資料:上に同じ

円安があっても、輸入物価は下落です。企業物価は上昇期から安定期に入ったので、対前年同月の上昇率は下がります。消費者物価だけは、相変わらず上昇基調を維持しているようです。企業物価と上昇率が逆転するかもしれません。

これからの電気料金の値上げはどうなるのかも心配ですし、10月から値上予定が食料、飲料など6305品目(NHK「サクサク経済」)という報道もあります。
消費者物価の上昇は、まだ続きそうな気配ですが、価格機構(消費者の購買心理)がどこまで許容するかがカギになるのでしょう。

家計支出は生活防衛型に、物価上昇を警戒

2023年08月10日 14時30分19秒 | 経済
昨日、総務省から2023年6月度の家計調査(家計収支編)が発表になりました。
マスコミでは「消費支出は前年同月比4.2%減」といった家計の厳しい状況の指摘が見られます。

勿論これは物価上昇分を差し引いた実質値で、名目値がこんなに減ったら大変ですが、実は名目値も、この4月から前年を下回っているのです。
6月の二人以上世帯の消費支出は、名目値でマイナス0.5%、実質値でマイナス4.2%なのです。勿論この差が物価の上昇3.7%になるわけです。

下にグラフを出していますが、このブログでは、昨年来、勤労者所帯の平均消費性向が上がって来て、家計の消費意欲が日本経済を支える状態になってきたと分析していたのですが、今年に入って家計が生活防衛的になってきたように感じられます。

勿論、理由は、物価の上昇が予想外に酷く、食料、飲料、日用品などの生活必需品の価格は10%前後の上昇になっているからでしょう。
それに、春闘賃上げも、マスコミを賑わす大手企業はともかく、全体的には意外に低いように思われます。

家計が防衛的になっているのは、食料への支出が平均価格上昇8.1%に対し、名目支出が4.2%増にとどまり、実質消費は3.9%減少していること、家具・家事用品については支出10.5%減らし、価格上昇分を差し引けば、実質購入量は 17.6%減少していること、子供の習い事などが入る教育の名目支出額は、それらの皺寄せでしょうか8.4%の節約になっているといった状態です。

消費支出の活発化が見られるのは教養・娯楽で、これはコロナ明けで伸びている旅行(特に海外)外食(飲み会・パーティーなど)ぐらいです。

世帯の収入も調査している「2人以上勤労者世帯」について見ますと、対前年6月で世帯主収入は4.1%の減、で6月ですから賞与など(内数)も2.9%の減になっています。
毎月勤労統計の6月は、現金給与総額+2%、賞与等+3%で、この差の原因はサンプルや定義の違いはありますが、特定できません。

家計調査の数字では非消費支出(税・社会保険料など)が4%減で、可処分所得は1.4%減、消費支出は0.7%減少と、上記の2人以上総世帯の0.5%減少より更に防衛的です。

      平均消費性向の推移(二人以上勤労者世帯、単位:%)

                 資料:総務省統計局「家計調査」

可処分所得が減った分までは財布の紐は閉められず、結果的に毎月観測を続けている「平均消費性向」は41.1%と昨年6月の40.8%よりわずかに高くなっています。

数字上の平均消費性向の上昇はギリギリ確保されましたが、これはこのブログが期待している、家計の消費意欲の回復という前向きのものではないようです。

昨年来の消費意欲の回復を、生活必需品中心の10%前後という、些か行き過ぎた値上げの動きが水を差すという、日本経済全体か見れば、望ましくない形になっているようです。

政府や日銀は、こうした状態を一体どう見ているのでしょうか。「今後も注意深く見守る」だけでいいのでしょうか。

国際収支の行方、円レートの行方は?

2023年08月08日 13時16分35秒 | 経済
今年の3月、「日本の国際収支は大丈夫か?」を書きました。
丁度発表された1月の経常収支が、未曾有の大幅赤字を計上したからです。

その際、今後も動きを見ていきますが、未だあまり心配する事はないのではないでしょうかといった感じで書いていました。

今日、今年上半期の経常収支が黒字になったという報道がありましたが、やはりまだ日本は、アメリカのような万年赤字国には、未だ、ならないよう頑張っているようです。

この1年半ほどは国際的なエネルギー価格の高騰などもあり経常赤字の月も出始め、何と無く心配でしたので、財務省の国際収支統計でそのあたり様子を見てみました。

結果は、下の図のような状況です。茶色の柱の貿易収支は昨年来マイナス幅の大きい月が多くなり、マスコミも貿易収支の赤字化を報告していました。

      経常収支、貿易収支、第一次所得収支の推移(単位億円)

                     資料:財務省「国際収支統計}

一方、常に黒字を稼いでいるのは第一次所得収支で、これは課外投資の収益で外国から受け取る利子や配当です。貿易赤字が第一次所得収支の黒字より大きくなりますと経常収支は赤字転落となります。

実はこのほかに、万年赤字のサービス収支(海外へのパテント料の支払いや海外映画の輸入代など)、第二次所得収支(海外への援助・贈与など:当然赤字に計上です)がありますが、グラフにしても目立たない程度のものです。

この1年半の動きを見ますと、下図で、貿易赤字の大幅な月が多いことが解ります。茶色の柱が下に伸びて、上に出ている第一次所得収支の柱の長さに近づくと、青い柱の経常収支が低くなり、10月や12月や今年1月のように、経常収支のゼロやマイナスの月が出て来ることになります.。

      輸出額、輸入額の推移(単位億円)

                        資料:上に同じ

こうした傾向も今年に入って2月からは貿易収支の赤字幅が小さくなったことで経常収支の黒字幅が確保され、矢張り現状では、日本の国際収支は、海外の資源価格が安定すれば黒字基調という事が見えてきたように思います。

という事で、赤字幅を広げた貿易収支について輸出と輸入の状況を見てみますとこれは下の図で、青い輸出の柱は、それほど低くなったわけではありませんが、茶色の輸入の柱が随分高くなり、その差である貿易赤字が拡大したことが解ります。

傾向的に輸出は伸びず、傾向的に輸入が増えるのであれば、これは赤字国への道ですがそうではなさそうです。

しかし、モノには限度があって、あまり経常黒字が大きくなると、アメリカ始め赤字国の目が険しくなります。

一方今後、欧米はインフレが鎮静化すれば金利を下げるでしょうし、日本では日銀が金利引き上げをしなければならない立場にあるようですから、これは円高材料で、円高は貿易赤字要因ですから、適切な舵取りが要請されるところでしょう。

余計なことを書きますと、インバウンドはますます増えるようですが、人気のあるmade in Japanを観光客が購入した分は「輸出」になるのだそうですから、輸出が増えるかもれませんね。

今年も原爆忌を迎えて:世界の平和を考える

2023年08月07日 14時19分52秒 | 経済
今年も原爆忌を迎えて
今年も8月6日の広島原爆忌、9日の長崎原爆忌を迎える時期になりました。

マスコミは原爆の悲惨さを伝えてくれます。丸木伊里、丸木俊夫妻の「原爆の図」制作の際のことなどを聞けば、丸木美術館のすさまじい絵とともに、原爆が人間に与える恐ろしさを改めて強く感じます。

今年はG7も広島でありました。皆揃っての献花も行われました。しかし一方で、現実の世界を、見ればロシアの原爆の使用に言及する「脅し」は次第にエスカレートするようで、核の抑止力は破綻したという見方が一般的になりつつあるようです。

そうした悲惨さを招く原爆は使わない事にしようと「誰も」が考えれば、原爆を使うことはなくなるのです。

全ては、人間の心の問題なのですが、人類世界には極く少数ながら、場合によっては原爆を使いたくなる人がいるのです。

今人類の中でそれを考えているのはロシアのプーチン大統領という事になるわけですが、現実問題として、プーチンが何故原爆使用に言及するようになったかを考えてみますと、それはロシアの領土を広げたいという所に原点があり、クリミア半島併合で成功、それに自信を得て、今度はウクライナ全土の併合を考えたのでしょう。

しかし、これはウクライナの強力な抵抗にあい、それだけではなくヨーロッパを始め自由世界全体の反対にあい、成功の見込みが立たなくなって、いわば窮余の一策で、原爆使用に言及という事なのでしょう。

ここまで来ると、人間の常識は勿論、国連の存在も、国際法も無視し、己の欲求追求の一途という視野狭窄の異常な精神状態になっていくのでしょう。

クリミア半島併合を阻止しなかった事がプーチンの領土拡大欲求を刺激したことは否めない所でしょう。これは国連にも世界人類全体にも責任があるのでしょう。

ここで本気で考えなければならないのは、国連憲章の第2条の4項、「武力や威嚇による国境、政治的独立の変更は謹まなければならない」という条項でしょう。

いま世界では、国連安保理の常任理事国の2か国、ロシアと中国が、これに関わる問題・欲求を持っています。
ロシアは原爆に言及し、中国は原爆には言及していませんが力による台湾併合には、国内問題と言い張って言及しています。しかし、明らかに「政治的独立」に違反でしょう。

最終兵器と言われる原爆は、戦争がエスカレートした時、問題になるのでしょう。ならば、戦争を激化させない努力、戦争を起こさない自制心、国家間の紛争を「未然に」摘む努力が国連・世界人類にとって最も必要なのではないでしょうか。

更に考えれば、国家間の主要な紛争の原因は、歴史的にも、今日的にも、領土問題、土地の領有権に発するものが最多でしょう。

国連は、国連憲章の第2条4項を、人類の平和共存のための最も基本的な考え方として如何に国々のリーダーの心の中に定着させるかを当面する至上命題として、いかに困難であっても、世界の知恵を糾合して取り組むべきではないでしょうか。

金融経済学、労働経済学とインフレ問題

2023年08月01日 14時19分49秒 | 経済
金融経済学、労働経済学とインフレ問題
政府、日銀は2%インフレ目標を掲げています。政府はインフレが2%になれば、それだけ経済活動が活発になるのだからそれが望ましいと言ってきました。

日銀は、インフレが2%になれば、ゼロ金利では経済合理性に反するから、金利を上げて国債や銀行預金にもそれなりの利息が付いて金融が正常化するようになる、インフレ2%は金融正常化への入り口としているようです。

最近の国際情勢では、原油などの資源の値上げ利がきっかけになって、アメリカやヨーロッパでは、10%前後のインフレが起き、政府も中央銀行もインフレ抑制に躍起です。

国際経済情勢が各国経済に及ぼす影響は欧米も日本も同じはずです。日本はインフレにならないと言われてきましたが、この所、日本の消費者物価も上がっています。
2%を超えて、3%台になっていますし、食料品や日用品などの生活必需品は10%前後上がっているのが現状です。

しかし政府も日銀も、インフレ目標が達成されたと喜んでいませんし、日銀も金融正常化に積極的になるわけでもなく、国債金利の変動幅をを0.5%広げた程度です。

しかし、市中銀行は、住宅ローンの金利を引き上げに動くようで、現実は今までのゼロ金利ではなくなりそうです。預金金利を上げるところも出て来るかもしれません。

やっぱり日本も部分的には(値上げし易い所では)インフレになっているのではないでしょうかと思ってしまいます。

インフレの原因には大きく2つの意見があって、金融経済学では、モノよりおカネが増えればモノとカネのバランスが変わってインフレになると考えます。

一方労働経済学では、企業の人件費などのコストが上がると利益が減るので利益確保のために物価を上げるからインフレになると考えます。

日本でも金融緩和でインフレになった時代もありました。カネの足りない戦後はそうでした。第一次石油危機まではそんな雰囲気がありました。
そして第一次石油危機の時は、石油の値上がりに慌て、30%の賃上げをして20%を超えるインフレになりました。最近のアメリカやヨーロッパと同じ(よりひどい)でした。

しかし、そうした経験から学び、慌ててインフレを起こすことをやめました。

第二次石油ショックの時は、落ち着いてインフレは最小限に抑えました。
しかし政府が金融の大幅緩和をやったので、余ったマネーが土地バブルを起こしました。しかし1991年バブルは崩壊して大変苦労しました。

この2回の経験で、日本は石油が上がってもインフレは起こさない、金融超緩和でも地価は上らないという経済を作りました。
では、今の異次元金融緩和のカネはと言いますと多分株式市場や湾岸マンションに少し、後は銀行経由で日本銀行への預金でしょう。使われていないのです。

政府がそれを借りて、いっぱい無駄遣いをしているという批判もあります。

何処かで実体経済の活性化のための政策が故障しているのでしょうね。
(前回もそのあたりを少し書いています。)

物価鎮静は一進一退、問題は「生鮮を除く食料」

2023年07月29日 11時12分50秒 | 経済
一昨日、東京都区部の7月中旬消費者物価指数の速報が発表になりました。マスコミは3.0%の上昇としているものが多いようでした。
正確には、対前年比上昇率で「総合指数」3.2%、「生鮮食品を除く総合」が、3.0%、「生鮮食品とエネルギーを除く総合」は4.0%という事です。

      全国と東京のコアコア指数の推移

                    資料:総務省統計局「消費者物価指数」

図でご覧いただくように、このブログで問題にしている「生鮮食品とエネルギーを除く総合」、いわゆる「コアコア指数」は、6月の3.8%より上がって4%の上昇になってしまいました。そろそろ落ち着くかと思っていた予想は外れました。

東京都区部の数字は先行指標ですから、全国の7月も上がる可能性が大きいように思いますが、一体何が上がっているのでしょうか。

    消費者物価10大費目別の対前年上昇率:東京7月速報と全国6月

                        資料:上に同じ

この図は消費者物価の10大費目について、東京都区部の7月と全国の6月の対前年上昇率を並べたものですがどちらにしても、この所上昇率の高いのは食料、家具・家事用品、それに教養娯楽です。

教養娯楽はコロナの終息で、飲み会やイベント、旅行などの復活によるものと、プラスしてインバウンド活況の影響もあるのでしょう。

をれ以外の2つは、日常的な生活必需品というべきものでしょう。昨年来の家計消費の活発化 (これもコロナの終息の影響?)の中で、長年消費不振で値上げを我慢してきた業界・企業が一斉値上げに踏み切った結果でしょう。

この値上げの波は、昨年春から始まり、秋から今年にかけて上げ幅を広げながらまだ続いています。特に著しいのは生鮮を除く食料で、2022年の 年平均の上昇率は3.8%でしたが、12月には7.4%の上昇と急速に上げ幅を広げ、今年6月には9.2%と1割近い上昇になっています。

個別品目で見ますと6月時点では鶏卵の35%(これは生鮮食品で鳥インフルという特殊事情があります)、酒、炭酸飲料、ハンバーガー、食用油などの17%、アイスクリームの12%、から揚げの10%など、食生活に密着したもの中心に、些か異常な値上がりという感じのある品目が結構みられる状態です。食料以外では洗濯用洗剤の18%などもあって、値上げの波は生活必需品に狙いを定めているようにも感じられるとこです。

ここまで来ると、それぞれに事情はあるとしても、家計のサイドから見れば些か常識を欠いた値上げという感じになるのではないでしょうか。

こうした中に、駆け込み・便乗値上げの色彩を帯びるような感じのものが出て来ますと、一斉値上げムードもそろそろピークという感じもしないでもありませんが、予断を許しません。日銀はようやくインフレの中身にに気づいての金利政策に動き、円高、株価一時暴落といった状況もありましたが、他方では、42円という未曾有の大幅な(4%)最低賃金の引き上げもあり、秋以降、新たなコストアップ要因となるでしょう。

6月から大幅値上げすると言っていた電力料金はどうなったか、統計上の影響はまだ見られませんが、バラバラな方向の違う政策が今後も、為替変動といった海外発の問題も含めて、一体この物価問題をどうしようとしているのか、政府の一貫性のある進むべき方向を見定めた政策がますます必要になって来るような気がするところです。



2023年度GDP政府年央試算の検討

2023年07月22日 11時17分59秒 | 経済
2023年度GDP政府年央試算の検討
一昨日、内閣府から2023年度の政府経済見通しの年央試算が発表になりました。

2023年度の政府経済見通しは、1月に閣議決定され発表されていますが、今回は同じ閣議決定ですがその後の状況変化を勘案、新たに年央試算として発表されたものです。

前書きでは、世界経済の下振れリスク、物価上昇、金融市場の変動等を要注意としながらも、「賃金と物価の好循環」を目指すとと もに、人への投資、グリーン、経済安全保障などの分野における官民連携で の国内投資の持続的な拡大を図ること等により、成長力の向上と家計所得の 幅広い増加に裏打ちされた「成長と分配の好循環」の実現を目指す、と述べています

しかし、すでにマスコミでも報道されていますように、今回の試算では、実質経済成長率は1月発表の1.5%から1.3%に引き下げられているのです。

民間企業の動きや、消費需要の活発化などの現状を見れば、敢えて引き下げる状況ではないように感じますが、何が引き下げの原因なのか見てみますと、多少意外な点があるように思えます。

先ずこの所の成長を支えているように見える民間消費支出ですが、1月試算の2.2%増から1.6%増に引き下げ、民間住宅も1.1%から0.3%に、民間企業設備も5.0%から3.0%に引き下げられています。

その結果、民間需要の経済成長率への寄与度は2.0ポイントから1.4ポイントに低下です。
正に民需不振で経済成長鈍化の様相です。

残るのは公需(政府需要)と外需(貿易収支)ですが、公需の方は前回の見通しマイナス0.5ポイントからプラス0.2ポイントに増加、民需が駄目なら公需で補うという感じです。

そして外需はマイナス0.1ポイントからマイナス0.3ポイントに拡大(貿易赤字拡大)の見通しです。

結局寄与度のポイント数は内需(民需と公需)で1.6ポイント、外需がマイナス0.3ポイントの合計1.3ポイントで経済成長率1.3%が成り立っているのです。

消費需要の伸びを小さく見ているというのは物価上昇に食われてという事なのでしょうか、消費者物価の上昇率は1.7%から2.6%に大幅修正(見通し甘かった)になっています。

民間企業設備についても大幅引き下げで、5.0%の見通しを3.0%に引き下げています。半導体関連投資の盛況、ソフトウェア投資の活況、産学協同のスタートアップの活発化や日銀短観の企業の投資態度などから見ると些か首をかしげます。

それに引き換え、公的固定資本形成はマイナス0.5%(減少)の見通しが2.2%の増加に変わっています。この半年の間に、政府は、固定資本投資を大幅な増加に見直したという事になります。

これが防衛装備の増強と関係するのかは触れられていません
若しそうであれば、これは、上記の「成長と分配の好循環」には役に立たないものでしょう。この数字は、引き続き今後も注意が必要なところです。

昨年来の消費者物価上昇、沈静化の兆しか?

2023年07月21日 11時27分52秒 | 経済
今朝、総務省統計局から6月の消費者物価指数が発表になりました。

実は、はこのブログでは、6月の消費者物価指数の発表を、期待を込めて待っていました。

というのは、6月の消費者物価指数の先行指標である東京都区部の6月中旬の速報が、先に発表され、その中の「生鮮食品とエネルギーを除く総合」(いわゆるコアコア指数)がこれまでの一方的な上昇から減速に変わっていたからです。

コアコア指数は海外情勢や天候の影響を受けないという意味で、日本経済に内在するインフレ傾向を表すものですから、これが落ちつかないうちは、日本経済にインフレの黄信号が点いているようなものです。

これが安定化に転じれば、昨年来の消費者物価の高騰(海外よりはまともですが)という状態が正常化の方向に向かい、長年のゼロ金利、異次元金融緩和政策の正常化の方向も見えてくると考えているからです。

ところで結果は、東京都区部の先行指標が示したように、昨年春以来の一方的上昇が止まり微かですが上昇幅縮小の気配を見せることになりました。

消費者物価指数そのもののグラフと、対前年同月上昇率のグラフを下に示しましたが、上のグラフでは、緑色の線のコアコア指数の上昇角度は弱まり、下の対前年同月上昇率では、5月の4.3%から6月は4.2%と上昇率低下を1年半ぶり示しています。

消費者物価3指数の動き

                  資料:総務省統計局「消費者物価指数」
       
      消費者物価3指数の対前年上昇率(%)

                         資料:上に同じ

このブログでは、この動きが昨年春以来の食料や日用品の一斉値上げの波状進行が、この所、消費者の中に少し行き過ぎではないかという意識を生み、沈静化のプロセスに入る兆しと読んでいますが、7月以降の数字が、その予測に沿ったものになることを、日本経済の正常化、健全化への希望も込めて望んでいるところです。

この消費者物価の毎月の「実態追跡」のページも、も少し続けてみたいと思っています。

昨年来の世界のインフレ騒ぎも終息へ?

2023年07月13日 14時26分21秒 | 経済
この2年ほど、世界中がインフレ騒ぎになりました。
ヨーロッパは、ロシア産の原油を買わない(買えない)といった事情もあり、OPECはチャンスと考えたのかどうか知りませんが、原油価格が値上がりし、アメリカ、ヨーロッパは10%前後のインフレになりました。

このインフレ傾向は、まず輸入インフレという形で、日本にも波及してきました。実体は下の図でご覧いただく通りです。

          主要3物価指数の推移(2020年基準)

                      資料:日本銀行、総理府
   
真っ先に手を打ったのはアメリカで、政策金利を思い切って引き合上げ、FRBはインフレ鎮静に賭けたようです。

FRBの気迫に押されたこともあり、1970年代の石油危機からのインフレからスタグフレーションの記憶もあったのでしょうか、比較的順調に鎮静に向かったようです。
ヨーロッパも、アメリカの真剣さに刺激され、何とか後を追いかけているように見えます。

いずれも景気の落ち込まない程度のところでインフレ鎮静化となれば、金利の無理な引き上げも必要なくなり、経済の正常化が見えてくるという事で、政府も中央銀行も、一応の安心感に行きつきそうとの感じではないでしょうか。

こうした状態はマネーマーケットにもすでに反映されていて、金利の引き上げ可能性が小さくなればドル高は避けられる、日本にとっては150円に近づいていた円レートが130円台にまで円高になるという状況に進んでいます。

日本はどうかと言いますと、鵜入物価、企業物価は国際価格を反映しますが、消費者や関連企業の行動が欧米とは大分違いますが、世界的なインフレの中で、(コロナもあり)不況に苦しむ業界が、一斉値上げの繰り返しという形で、一拍遅れて値上げの限界の瀬踏みに入り、遅れた漸進的値上現象が起きました。

一方、消費者も、こうした値上にはある程度の理解を示したようで、この波状値上げが昨年、今年と、足掛け2年にわたって続きましたが、消費者の容認にも限界があるようで、そろそろ鎮静化の様子が出てきたようです(下図)。

          主要3物価指数の対前年上昇率(%)

                         資料:上に同じ

主要物価の対前年同月比を見ますと輸入物価の上昇は疾うに上げ幅縮小からマイナスに、国内の企業物価も今年に入って上昇幅が縮小、消費不振で値上げの遅れた消費者物価も上昇幅は頭打ちかという所に来たような感じです。

消費者物価については別途検討していますが、いわゆるコアコア指数の上げ幅が頭打ちから縮小に向かえば、この2年間のインフレ騒ぎも、日本でも収まる方向という事でしょう。

今後は、日米の金利差が縮まれば、円高がさらに進む事も考えられ、これも物価鎮静効果を持つでしょう。
そして日銀の金融正常化の出番も視野に入るのではないでしょうか。ゼロ金利時代が終わり、定期預金にまともな利息の付く時代が来るのでしょうか。

消費者物価上昇の行方を占う

2023年07月10日 19時54分33秒 | 経済
今の日本経済の重要な問題の1つは矢張り消費者物価の動きでしょう。

このブログでは、この所、消費者物価の動きを追ってきました。
その上で、指摘してきた問題は、消費者物価の主要3指数の中で「生鮮食品とエネルギーを除く総合」(いわゆるコアコア指数)の動きに注意しなければいけないという事でした。

といいうのは、生鮮食品はお天気次第で変動します。エネルギーは産油国の価格戦略で動きます。日本の農家や企業が努力してもし切れるものではありません。

しかし、生鮮食品の価格は天気が良くなれば下がりますし、原油価格なども上がり過ぎると下がります。しかも世界中で上がるので、影響は世界共通です。

この両方は手の打ちようが無いので、国内の物価政策で手の打てるのは上記の「コアコア指数」だけです。
つまり物価政策というのは、コアコア指数が安定(2%以下に)することが基本です。

コアコア指数が何故上がるかと言えば、要因は2つ、製品価格の内の「人件費(賃金)」の部分が増えるか、「利益」の部分が増えるかです。
賃金部分増によるのは「賃金インフレ」、利益部分増によるのは「便乗値上げ」などと言われます。共に国内要因によるインフレです。

今年5月までの1年間の「コアコア指数」の動き(対前年上昇率)を全国の動向と、先行指標である東京都区部の動向を並べてみたのが下のグラフです。

    消費者物価「コアコア指数」:全国と東京都区部(速報)

                      資料:総務省統計局「消費者物価指数」

日本の消費者物価が上がり始めたのは昨年からですが、加工食品、飲料、日用生活物資などの一斉値上げ、それも波状的に何回も上がりました。

その原因は、これまでの国民の節約志向、コロナによる消費需要の低迷で、輸入品や政府の最低賃金引き上げ政策などで上がったコストを製品価格に転嫁できず、企業としては利益が出なくなって苦しんでいたことなどがあります。

昨年からコロナの鎮静化もあり、国民の貯蓄志向から消費も重視しようという生活態度の変化もあり、これまでのコストアップを価格転嫁しようというムードが生まれ、「みんなで渡れば怖くない」といった心理もあって一斉値上げが始まったのでしょう。

そのあたりの感じがグラフにはっきり表れているようです。
消費者(国民)も、事情が解っていますから「多少の値上げも仕方ないね」と昨年来の物価上昇はある程度認めようという気持ちだったようです。

ところが今年に入ってモノによっては「ちょっと上がり過ぎ?」といった雰囲気も出、石油元売り会社が政府の補助金を貰いながら至上雄最高益を出したり、公共料金である電気・ガスなどの価格が大幅に上がったりという事も何か気になって来たようです。

毎月賃金統計の発表があるたびに、「賃金は上がったが、物価がもっと上がっているので実質賃金はマイナス」などという解説も続いたりして、消費者も敏感になったようです。

という事で上のグラフですが、6月に至って東京都区部の「コアコア指数」の対前年上昇率が下がりました。

これが、今後も続くかどうかは解りませんが、何と無く、消費者の気持ちと、やっと値上げで一息ついた企業の感覚が一致して、この辺で値上げは止め、別の経営戦略で消費者のインフレ懸念に応えようといったムードになって来たのでしょうか。

6月の全国の数字、7月の数字・・・と出て来れば、そのあたりの実態が見えてくると思うのですが。もし予想通りであれば、日銀総裁もきっと大喜びではないでしょうか。

平均消費性向は上がったが:家計調査2023年5月

2023年07月07日 14時44分38秒 | 経済
今日、総務省から家計調査の2023年5月期の「家計収支編」が発表になりました。

昨年来上昇傾向を示していた(2人以上勤労世帯の)平均消費性向が4月、前年比で低下したのを受けて5月の動きを心配していましたが、結果は90.2%という事で前年同月比2.6ポインとの上昇でした。

これで一安心、消費の堅調傾向は続くかなと思い、早速関連指標の動きを見てみました。
しかし、その結果は、どうも納得のいかない事が多く、手放しで喜んでいいのかどうかとも思われるものです。

平均消費性向の推移(2人以上勤労者所帯)

                   資料:総務省統計局「家計調査」

上のグラフでご覧のように、4月に前年比で下がって、昨年来の堅調な消費に変化でるかと思われましたが、5月の90.2%で4月の落ち込みを挽回した形です。そして過去二年もそうですが、5月というのは1年12か月の内で最も消費性向が高くなる月なのです。

3月は年度末で種々の支出が重なる、5月はゴールデンウィークで消費が増えるという傾向がはっきりで、6月、12月はボーナスが出るので、消費性向は低くなることもご理解の内でしょう。

それにしても、5月は春闘の賃上げが給料袋(今は振り込み)に反映する月で、今年は賃上げ率も高かったはずだからその影響はどうかと見てみました。平均消費性向は勤労者世帯ですから、一般所帯と違って、収入の方もチェックできるわけです。

その結果は予想外でした。世帯の実収入は昨年5月比で4.0%、世帯主収入で3.5%、定期収入で2.5%のマイナス(減少)なのです。

これは名目値で、物価上昇を差し引いた実質値では、それぞれ7.5%、7.0%、6.1%の大幅マイナスです。そして消費支出そのものも名目値で-1.0%、実質値で-4.6%と共にマイナスになっているのです。

収入が減ったが消費の節約が追い付かず、平均消費性向が上がってしまったとも受け取れるような状態です。

収入は増えないのにゴールデンウィークもあって物価上昇の中で、ついつい消費が増えてしまった、「来月からは少し節約しなければ・・・」、という事になりそうな感じです。

しかし、おかしいな、高めの春闘賃上げがあったのに、名目の定期収入が減っているのは。という事で、同じく今日、厚労省から発表になった「毎月勤労統計」の5月速報から賃金指数の動きを見てみました。
毎月勤労統計の賃金の時系列の動きは「賃金指数」で見ることになるわけですが、調査産業計の現金給与総額の前年比で、「一般労働者」3.0%、「パートタイム労働者」3.6%の上昇となっています。

毎月賃金統計は企業の支払う賃金で、家計調査は世帯に収入支出の調査ですから、統計数字の性格は違いますが、家計調査でも勤労者所帯の所帯主の収入という項目は毎月勤労統計の賃金指数と類似の性格のものでしょう。

毎月勤労統計では前年比プラス、家計調査では前年比マイナスというギャップは些か予想外です。
来月以降の数字の中から何らかの答えが出て来るのでしょうか、見ていきたいと思います。

変動相場制と日本経済/実体経済:前回の補遺(続)

2023年07月06日 20時25分03秒 | 経済
物価の安定が大事というのであれば、為替レートの安定も大事でしょう。変動相場制の下では、特に、マネー経済が巨大化している今日、為替レートを安定的に維持することは極めて困難になっています。
この問題にどう対応したらいいかという問題提起を前回してきました。

今回は最後に最も重要な問題として経済学的には物価の1つである賃金=労働力の価格について考えてみます。

賃金についても勿論「安定」が必要ですし、更には生産性上昇に基づいた上昇が必要という特別の性格を持ったものということが出来ましょう。

各国が生産性の向上と賃金の上昇のバランスのとれた経済運営をしていれば、理論的には為替レートは安定しているでしょう。
然し現実には、生産性の上昇より賃金の上昇の方が大きくなり賃金インフレが多くなります。

インフレ化した経済の国の為替レートは理論的にはインフレの昂進分だけ切り下がり、それによって競争力を維持するという事になります。

ところで問題は、経済合理性のある為替レートの変動ではなく、個別の国の金融政策や思惑に左右される国際金融取引等により、インフレの実態と関係なく為替レートが大幅に動き、実体経済の方を為替レートに合わせる必要が生じる場合もあるという事です。

日本の経験でいえば、プラザ合意で、2年間で為替レートが2倍、100%の円高になった経験、また黒田バズーカで1年半の内に為替レートが50%の円安になった経験おなどです。

実体経済が変わらずに、為替レートが大きく円高と円安に変化したのですが、日本の経済金融政策は残念ながら、この変化に対して、ともに失敗だったと言わざるを得ません。
具体的には1990年代前後の「失われた20年」そしてアベノミクス以来の10年などです。

さらに言えば、この1年ほどで110円レベルから140円レベルの円安になった円レートに対して、円レートが正常化するまで静観という今の状態もそうではないでしょうか。

為替レートは時間がたてば正常化するという考え方が現実的でない事は経験済みです。

理論的には円高の時には円高分だけ賃金を切り下げる、円安の時には円安の分だけ賃金を切り上げるというのが結論になるのかもしれませんが、それが現実的に可能でない事は、経験の教えるところです。

ならば選択肢は限られてきます。矢張り為替レートを各国の金融政策やマネーマーケットの動きに任せるという「今の変動相場制」には、いずれかの方法で、通貨価値の安定に努力するというディシプリンを組み込むことを考えるべきでしょう。

経済価値のベースが安定して初めて健全で安定した各国経済、世界経済のスムーズな発展が可能になるのではないでしょうか。

変動相場制と日本経済/実体経済:前回の補遺

2023年07月05日 13時42分44秒 | 経済
前回は日本の政府、日銀が「為替レートの変動についてあまりにも受け身ではないか」と気になると書きました。

第一に指摘してのは、為替レートがプライスメカニズムを通じて適切な水準に落ち着くなどという事は期待できない現実です。

嘗ては「マネーの世界」実体経済の活動の潤滑油として、いわば実体経済活動の摩擦を減らし経済活動がスムーズにするという役割が中心でした。

しかし今は違います。マネーマーケットの資金量は実体経済の取引額と何ケタも違うような巨大なものとなり、マネー経済だけで成り立つビジネスも盛況でその失敗が実体経済に深刻な打撃を与えるようなマネー経済vs実体経済の、必ずしもwin=winではない関係になっています。(リーマンショックなど)

為替レートは長期には実体経済の反映かもしれませんが、短期には(ときにはかなり長期にも)マネー経済の動きで決まり、実体経済と乖離する事も「常態」でしょう。

そして、マネー経済のマネーも実体経済のマネーも同じものですから、為替レートの変動は一国の実体経済の物価、端的には消費者物価にも直接影響します。

各国の政府は、物価の安定には大変な神経を使っています。今のアメリカ、ヨーロッパの情況を見れば明らかです。

しかし、アメリカが消費者物価安定のために金利引き上げをやれば、それは直ちに為替レートの変動を齎し、諸外国の物価安定に大きな問題を生じます。途上国などでは急激なインフレの発生につながります。

いずれの国においても、物価の安定は政府・中央銀行にとっての至上命令ですが、いわば、それぞれの国の経済力のレベルを表すはずの為替レートが、経済実態と関係なく急激に変わるようなことでは、当該国にとっては(メートル原器の長さが伸び縮みするようなもので)当然経済活動の混乱を齎します。

どの国にとっても、物価の安定が大事であれば、当然どの国にとっても、為替レートの安定は同様に大事なのです。

こうした為替レートの変動は、マネーマーケットにとってはビジネスチャンスにもなるわけですから、変動相場制は、マネービジネスを育てるという面では、大きな役割を晴らしているのでしょう。

しかし、ご承知のように、マネービジネス、マネー経済は、本来、付加価値を移転させるだけで、付加価値を創出することはないのです。
人類社会の豊かさを増進する原資は、経済活動で付加価値として創りだされるのです。マネーゲームが生み出すキャピタルゲインは、付加価値ではないのです。

変動相場制がもたらす為替レートの変動について、国際経済社会がいかに考え、取り扱うかは、こうして資本主義の根幹、その存在意義に関わるものだという事を、改めて確り考える必要があるのではないでしょうか。