植田総裁が22日の衆院予算委員会で「日本経済はすでに(デフレではなく)インフレ状態にある」と発言されたことが注目を集めています。
全国消費者物価の先行指標である東京都区部の速報では前年同月上昇率が12月の2.4%から1月は1.6%に下がり21カ月の続いてきた実質賃金低下の記録がストップするかもしれないという物価鎮静化の中での発言ですから、些か奇異と感じた方も多いと思います。
植田総裁の発言では、今春闘の結果に注目という事ですが、そうした意味で考えますと、日銀が金融政策の転換点を睨みつつ現状をどう理解しているかが見えるように思います。
このブログでは、一昨年から続いた生活必需品の一斉波状値上げは終息しつつあると理解し、今後消費者物価の上昇が起きるとすれば、差し当たって、今春闘の賃上げの高まり、賃上げ価格転嫁の「公認」による賃金インフレと見て来ています。
このブログの提言では、平均賃金10%の上昇で、5~6%のインフレ、4~5%の実質賃金上昇にしても日本経済の国際競争力には問題なく、後はインフレを2%に抑える本来のインフレ目標に努力すればいいとしています。
恐らく、植田総裁は今春闘における労使の賃上げついての意欲の高さ、政府が公正取引委員会を通じて、賃金上昇の価格転嫁を容認するという指針を出しているといった状況から判断し、今年は国民経済生産性を超える賃金コストの上昇で、日本自体の「自家製賃金インフレ」が起きるという判断をされての発言と理解すべきと思っています。
勿論、こうした形でこれまでの「賃金上昇不足の自家製デフレ」から脱出できれば、日本経済正常化への第一歩が踏み出せるので、大変結構で大いに支持したいところです。
昨年の場合は、政労使が共に賃上げに積極的と言いながら、結果は平均賃金の1~2%程度上昇にとどまり、折からの食料を始めとした生活直結品目やサービスの一斉波状値上げで、実質賃金は下落を続け、デフレムードからの脱出が出来ませんでした。
しかし、今年は2つの好条件があります。消費者物価の値上げの動きが一巡し、賃金上昇が物価上昇に食われる可能性が小さくなりそうなこと、もう1つは公正取引委員会の賃上げの価格転嫁の指針発表で、賃上げが下請け部品産業や中小零細企業など広範囲に広がる可能性があることです。
経済計算でいえば、賃上げの価格転嫁を確りやっても「便乗値上げ」が無い限り、物価上昇が賃金上昇を追い越すことはないのです。結果、デフレムードも消えそうなのです。
という事で、少し余計な事を書きますが、ここで日銀が金融正常化を進めれば、日本は正常な資本主義国にな戻るのです。金利が認められなかった中世から金利が機能する資本主義経済になって、技術開発と相まって、経済発展が可能になったのが経済の歴史です。
金利は経済活動の成果の健全な所得(インカムゲイン)です。金利が確り機能しないと資本主義はゼロサムゲームの「キャピタルゲイン」指向のマネー資本主義に堕します。 日本は、「39,000円・40,000円」を目指すより、1%でも高い実質経済成長を目指しましょう。株価は後からついて来ます。