旬刊商事法務2022年8月5日号(商事法務研究会)に,実務問答会社法第65回「電子メール等の方法による取締役会の決議の省略」が掲載されている。筆者は,塚本英巨弁護士。
「取締役の同意の意思表示を電子メールの方法により行うことは認められるか」という点については,「電子メールに係る情報は,受信者(会社)側において,その使用するサーバやパソコン等の電子計算機のハードディスク等の記録媒体を用いて調製するファイルに記録されるため,電磁的記録に記録されるものに該当するのが通常」(129頁)であるとして,「認められる」と解説されている。
「取締役の同意の意思表示を,電子決裁システムを利用して行うことは認められるか」という点についても,「この場合の同意の意思表示に係る情報は,サーバまたはパソコンのハードディスク等の記録媒体を用いて調製するファイルに記録されるものであるため,電磁的記録に記録されるものに該当する」(129頁)として,やはり「認められる」と解説されている。
すなわち,電子メールの方法による同意の意思表示等については,株式会社においては本店に備え置く義務(会社法第371条第1項)があることから,株式会社が支配管理するサーバ等に格納して保管される必要があるものである。
cf.
平成28年3月30日付け「LINEを使って取締役会を開催(?)」
会社法
(取締役会の決議の省略)
第370条 取締役会設置会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる。
(議事録等)
第371条 取締役会設置会社は、取締役会の日(前条の規定により取締役会の決議があったものとみなされた日を含む。)から十年間、第三百六十九条第三項の議事録又は前条の意思表示を記載し、若しくは記録した書面若しくは電磁的記録(以下この条において「議事録等」という。)をその本店に備え置かなければならない。
2 株主は、その権利を行使するため必要があるときは、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
一 前項の議事録等が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二 前項の議事録等が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
3~6 【略】