司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

電子提供措置をとる旨の定款の定めの設定による変更の登記にまつわる異聞

2022-08-15 17:40:10 | 会社法(改正商法等)
 今年の6月,上場会社の多くは,全株懇の定款モデルに倣って定款変更決議を行い,次のとおりの定款規定の新設を行っている。

定款
 (電子提供措置等)
第○条 当会社は、株主総会の招集に際し、株主総会参考書類等の内容である情報について、電子提供措置をとるものとする。
2 当会社は、電子提供措置をとる事項のうち法務省令で定めるものの全部または一部について、議決権の基準日までに書面交付請求した株主に対して交付する書面に記載しないことができる。


 この点,法務省が公表している通達によれば,「原則として定款の文言どおりに記録する」(別紙記録例1の(注)参照)ものとされている(ただし,登記されるのは,第1項のみで,第2項は,登記されない。)。

 ところが,別紙記録例では,「当会社は株主総会の招集に際し~」と,「当会社は」の後の読点がないのである。

cf. 電子提供措置をとる旨の定めが登記事項となることについて by 法務省
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00166.html#anchor2

 上場会社は,整備法第10条第2項の規定により定款の変更の決議をしたものとみなされるので,上記のような条件付き定款変更決議を行った場合であっても,同条第7項の「第2項の規定により定款の変更の決議をしたものとみなされた場合に該当することを証する書面(当該株式会社の代表者の作成に係る証明書)」を添付書面として登記の申請を行うのが大半であると思われる。というか,整備法の規定によれば「添付しなければならない」のである。

 しかし,この証明書による場合,定款の文言が不明であるので,登記所によって,別紙記録例のとおり,読点なしで登記されてしまう「おそれ」がある。

 そのような事態が頻発するとすれば,上場会社としては,定款の文言どおりに記録されることを欲するであろうから,そのようなリスクを回避するために,株主総会議事録と株主リストを添付書面とする方法を選択することを検討してもよいと思うが,上記のとおり,整備法の規定によれば「添付しなければならない」のであるから,コンプライアンス的には難しいのではないか。

 本来,法文や公用文の用法からすれば,「当会社は」の後に読点を置かないのは,甚だ違和感があるところである。

 というわけで,申請人である上場会社が,通達が示している「当該株式会社の代表者の作成に係る証明書」を添付書面として登記の申請をした場合であっても,申請人が申請情報の別紙に「当会社は、株主総会の招集に際し~」と読点を置いて申請したときは,申請どおりの内容で登記がされることを希望する次第である。

 ユーザー・フレンドリーな,柔軟な対応を期待したい。
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