司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

外国人の人名について登記上使用することができる漢字

2022-08-17 17:14:36 | 国際事情
 不動産登記や商業登記の申請をする際に,人名に使われている文字が登記上使うことができる文字であるのか,悩むことがあるであろう。

「現在,日本人の氏に使える漢字は5万5271字(戸籍統一文字),日本人の名に使える漢字は2998字(常用漢字+人名用漢字)が定められています。それとは別に,日本に住む外国人の氏名に使える漢字は,法務省によって1万3287字(入国管理局正字)が定められています。たとえば「髙」は,日本人の氏・外国人の氏・外国人の名には使えますが,日本人の名には使えない,という不思議な状態になっています。戸籍や住民票においては,3種類の異なる「正字」が併存している」(後掲・安岡)

cf. 安岡孝一「人名用漢字・異体字の歴史とは?【法律・戸籍制度における「正字」の変遷】」 by 日本医事新報社
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=3860

 なるほど,

1.戸籍統一文字・・・日本人の氏に使える漢字
2.常用漢字+人名用漢字・・・日本人の名に使える漢字
3.入国管理局正字・・・日本に住む外国人の氏名に使える(日本に住む外国人が住民票や在留カード等の氏名に使える)漢字 ※「出入国管理庁正字」と称するべきか。

ということである。

「新字体」と「旧字体」については,

「一般に今使われている「国」のように画数の少ない簡略化された漢字のことは「新字体」,昔使われていた「國」のように画数の多い難しい漢字のことは「旧字体」と称されます。昭和24(1949)年,それまで使われていた難しい字体をやめて,簡単な字体を使うようにと,内閣が国民に告示したのが「当用漢字字体表」です。「当用」というのは,「当面用いる」という意味で,実は漢字自体の使用をやめさせるということも視野に入れての名称でした。その「当用漢字字体表」の中で,簡略な字体に改められていた漢字が「新字体」です。新字体は昭和56(1981)年,内閣告示の「常用漢字表」にそのまま引き継がれました。今度は「常用」ですので,「常に用いる」漢字として制定されました。そして現代でも新字体が「正しい漢字」(ここでは教育上,一般的にという意味で)として使用されるに至った訳です。」(後掲・銭谷)

cf. 銭谷真人「「国」と「國」のように,昔と今とで形がちがう漢字があるのはなぜですか」by ことば研究館
https://kotobaken.jp/qa/yokuaru/qa-55/#:~:text=%E4%B8%80%E8%88%AC%E3%81%AB%E4%BB%8A%E4%BD%BF%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%81%A6,%E7%94%A8%E6%BC%A2%E5%AD%97%E5%AD%97%E4%BD%93%E8%A1%A8%E3%80%8D%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

 そして,「刘」と「劉」についての歴史は,こちら。

cf. 安岡孝一「人名用漢字の新字旧字 第104回 「刘」と「劉」」
https://dictionary.sanseido-publ.co.jp/column/%E7%AC%AC104%E5%9B%9E-%E3%80%8C%E5%88%98%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%80%8C%E5%8A%89%E3%80%8D

「刘」の字は,日本では使われない簡体字のように思われがちであるが,従来から「劉」のいわゆる略字(「新字体」の位置付け)として用いられており,戸籍統一文字に含まれている(常用漢字及び人名用漢字には含まれていない。)。

cf. 戸籍統一文字情報検索システム
https://houmukyoku.moj.go.jp/KOSEKIMOJIDB/M01.html
※ 文字番号は,022410 である。

 また,入国管理局正字(出入国管理庁正字)にも含まれている。

cf. 出入国管理庁正字検索システム
http://lapse-immi.moj.go.jp:50122/NKS/search.pl?select=&mode=code_search&sel_code=0&str_code=5218

 外国人の方の氏について,登記上「刘」の字を使うことができないとする登記所があると仄聞するが,戸籍統一文字に含まれていて,日本人の氏として登記することができるのであれば,外国人の氏としても登記することができなければおかしいのではないか。

 入国管理局正字(出入国管理庁正字)の全てについて,外国人の人名として登記上使用することが困難であるとしても,外国人の人名に用いられている文字が「戸籍統一文字」(日本人の氏に使える漢字)又は「常用漢字+人名用漢字」(日本人の名に使える漢字)である場合には,登記上使用することができるという取扱いをすべきである。

 そういう取扱いであると理解していたのであるが・・・。

 なお,中国在住の中国人の「刘」さんについて,中国の公証人が作成した邦訳により「劉」と登記がされた場合に,当該「刘」さんが日本に在留することとなり,入国管理の手続をすると,外国人住民票においては「刘」と記録されるので,登記上更正の登記をせざるを得ないという問題が生ずるという話も聞く。
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法務大臣閣議後記者会見の概要「旧統一教会問題関係省庁連絡会議に関する質疑について」

2022-08-17 15:29:24 | いろいろ
法務大臣閣議後記者会見の概要(令和4年8月15日(月))
https://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho08_00329.html

「いわゆる旧統一教会に関する問題について、今般、関係省庁連絡会議を設置することとしました。
 既に、総理からは、法務大臣を始めとする関係閣僚に対し、悪質商法などの不法行為の相談や被害者救済に、連携して万全を尽くすよう指示があったところです。
 これを受け、法務大臣である私の主宰の下、旧統一教会問題関係省庁連絡会議を設置し、本月18日(木)、第1回会議を開催することとしました。
 連絡会議の具体的な内容は、現在、検討中ですが、法務省としては、旧統一教会に関する相談や被害者の救済について、この会議を通じ、関係省庁と連携して、しっかりと取り組んでまいります。」

〇 旧統一教会問題関係省庁連絡会議に関する質疑について
【記者】
 冒頭の発言にもありましたが、旧統一教会をめぐる問題について、関係省庁からなる連絡会議を設置するとのことでしたが、会議を設置した後、どのようなスケジュールで取組を進めていくお考えでしょうか。

【大臣】
 まず会議の関係ですが、関係省庁ということで今のところ考えておりますのは、法務省、警察庁、消費者庁です。
 8月18日に第1回会議を開催しますが、今申し上げましたとおり、法務大臣が主宰することになりますのは、被害者の救済という意味で、人権相談もありますし、また法律的な援助、そういったものを法務省としてやっています。他の相談は、警察あるいは消費者庁でも受けていますから、様々な形での皆様からの被害相談が様々な省庁に寄せられることについて、そこでたらい回しになることがないように、迅速な被害者救済を行うことができるスキームは早急に作っていく必要があるだろうと思います。そしてその上で、各省庁でしっかりと情報を共有しながら、実態把握に努めていくことになってまいります。

【記者】
 冒頭の関係省庁連絡会議のお話ですが、これは大臣御自身も出席されるものかということと、法務省に各省庁の関係者をお招きして会議を開催するのでしょうか。

【大臣】
 場所は今調整中ですが、私自身が出席し、主宰させていただきます。

【記者】
 冒頭の関係省庁連絡会議ですが、救済の対象は、例えば二世信者の方も対象になるのでしょうか。

【大臣】
 もちろんそこは幅広く考えてまいります。例えば、元々の不法行為・違法行為によって、実際に破産に追い込まれ、非常に被害を被ったことについて、どのような法的な対応ができるかということについては、当人だけではなく、やはり二世の方々も含めてお話を聞いていくことが必要になります。その上で政府として、個別事案についてはどういう対応する、どういう窓口を作るかということですから、幅広く考えていく必要があると思います。

【記者】
 連絡会議について何点かお尋ねします。どれぐらいのペースで開かれるのでしょうか。また、結論が出るタイミングは想定されていらっしゃるのでしょうか。

【大臣】
 まず8月18日に第1回の会議を開きます。そして、被害救済も、「被害に遭った方々は、ぜひこの窓口に来ていただければこのような形の対応ができます。」というスキームを早急に出していく必要はあると思います。そしてそれと並行して、過去の事案も含めて把握しなければいけませんから、しっかりと実態把握も含めてやっていく必要があると思います。前者の件については本当に早急に、また後者の件も含めて、全体として、これだけ社会問題化しているところですから、スピード感を持ってやってまいります。

【記者】
 消費者庁の方で霊感商法に関する検討会議を立ち上げると河野消費者担当大臣が表明されていますが、こちらの会議との関わりは、現在想定されているのでしょうか。

【大臣】
 まさに連絡会議の具体的内容というのは検討中ですが、私も報道で、消費者庁の方で、そういったような会議を立ち上げるというお話も伺いました。当然、関係省庁連絡会議の中には、消費者庁も入ってきますので、そこにおける検討の成果も、この会議の中で当然反映されるものだと思います。

【記者】
 今回の会議で取り上げるのは、旧統一教会に関わるものだけなのでしょうか。それとも、それよりも少し幅広く、様々な宗教団体についても取り上げるのでしょうか。

【大臣】
 当面、旧統一教会にフォーカスをして取り上げてまいります。
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財産開示手続の期日に出頭せず,検察審査会が「起訴相当」

2022-08-17 11:19:21 | 民事訴訟等
讀賣新聞記事
https://www.yomiuri.co.jp/national/20220817-OYT1T50067/

 執行裁判所の呼出しを受けた財産開示期日において,正当な理由なく,出頭せず,又は宣誓を拒んだ開示義務者は,6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる(民事執行法第213条第1項第5号)。

 正当な理由なく出頭しなかったのは,明らかであろうから,地検が不起訴にしたのは,不可解である。
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