司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

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再転相続における相続放棄をすべき期間の起算点である「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」

2019-08-09 14:27:23 | 民法改正
最高裁令和元年8月9日第2小法廷判決
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88855

【判示事項】
民法916条にいう「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」とは,相続の承認又は放棄をしないで死亡した者の相続人が,当該死亡した者からの相続により,当該死亡した者が承認又は放棄をしなかった相続における相続人としての地位を,自己が承継した事実を知った時をいう


 原審(大阪高裁)は,

「民法916条にいう「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」とは,丙が自己のために乙からの相続が開始したことを知った時をいう。しかしながら,同条は,乙が,自己が甲の相続人であることを知っていたが,相続の承認又は放棄をしないで死亡した場合を前提にしていると解すべきであり,BがAの相続人となったことを知らずに死亡した本件に同条は適用されない。Aからの相続に係る被上告人の熟慮期間の起算点は,同法915条によって定まる。Aからの相続に係る被上告人の熟慮期間は,被上告人がBからAの相続人としての地位を承継した事実を知った時から起算され,本件相続放棄は熟慮期間内にされたものとして有効である。」

と判断していたが,最高裁は,

「甲からの相続に係る丙の熟慮期間の起算点について,乙において自己が甲の相続人であることを知っていたか否かにかかわらず民法916条が適用されることは,同条がその適用がある場面につき,「相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したとき」とのみ規定していること及び同条の前記趣旨から明らかである。」

として,上記のとおり判示している。

cf. 共同通信記事
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190809-00000060-kyodonews-soci


民法
 (相続の承認又は放棄をすべき期間)
第915条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。

第916条 相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第1項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する。

第917条 相続人が未成年者又は成年被後見人であるときは、第915条第1項の期間は、その法定代理人が未成年者又は成年被後見人のために相続の開始があったことを知った時から起算する。
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