先日、オーストラリアのモリソン首相が来日して菅総理や安倍前総理と会談を行い重要な協定の締結をしたのだが、それについての日本のマスメディア報道が相変わらず偏向的でおかしい。それについてジャーナリストの有本香氏が解説しているので、その内容を中心に紹介したい。
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共同通信の報道(2020年11月18日)
菅総理は米海兵隊トップのバーガー司令官と官邸で会談し抑止力強化の継続を確認した。両氏は海洋進出を強める中国を念頭に東シナ海で南シナ海で強化される一方的な現状変更の試みに深刻な懸念と強い反対を表明した。菅総理は「史上かつてなく日米同盟の抑止力・対処力の強化に向け引き続き協力を深めたいと伝達。一方、バーガー司令官は同盟の抑止力維持に向け変革を進め、一つのチームとして取り組みたい、とこれに応じた。
共同通信の報道(2020年11月17日)
菅総理は17日、オーストラリアのモリソン首相と官邸で会談し、西太平洋などへの軍事的拡大を続ける中国を念頭に安全保障協力の強化で一致した。会談後の共同記者発表で自衛隊とオーストラリア軍の共同訓練等に関する円滑化協定締結で大枠合意したと明らかにしました。また、経済分野での連携も確認し、特別な戦略的パードナーシップを深める方向性を確認したということです。日本の総理と外国首脳に依る国内での会談は新型コロナウィルスの影響で今年2月を最後に途絶えていて、9月に就任した菅総理にとっては初めて。菅総理が就任して最初で電話会談した相手もモリソン首相だった。
NHKニュースの概要(2020年11月17日)
安倍前総理は日本を訪れているオーストラリアのモリソン首相と都内のホテルでおよそ1時間会談し、アメリカやインドも含め安全保障分野での連携を強化していくことが重要だという認識で一致した。安倍前総理は11月にインド近海で行われた海上自衛隊とアメリカ、オーストラリア、インド
の各海軍に依る共同訓練マラバールに触れ、訓練が成功してよかったと述べた。安倍前総理は総理在任中にモリソン首相と3回会談しているほか、辞任表明後には電話会談でこれまでの友情と協力に感謝のいを伝えていた。
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18日の報道で、菅総理が海兵隊のトップと会談した、と伝えているが、この組み合わせの会談はレアであり、そんなにあることではない。
そもそも海兵隊というのは何か有事が起きた時にいの一番に駆けつける部隊である。その組織のトップと会談するというのは、現在の尖閣を中心に中国の侵略的な活動があまりにも活発化している実情がある一方で、アメリカの新政権(交代すると仮定して)の方向性が現時点では全く不明な状況である。その中で日米の連携をとにかく強くしなくてはいけないのであり、同時にそれを外に向けても見せなければいけない、ということで異例の会談になったのである。
オーストラリアのモリソン首相が今週の火曜日から来日しているが、これは元々は安倍政権時代の今年1月に来日の予定が延び延びになっていた、という経緯がある。ただ、今の時点でモリソン氏は来日すると帰国後に(ウィルス感染拡大防止の為に)2週間の自宅待機が課される事になる。そんな状況であるにも関わらず、電話会談ではなくてわざわざ日本に来るというのは「よほどのこと」なのである。
火曜日(17日)の午後に有本氏は安倍前総理に短時間だが会っている。それが安倍・モリソン会談の直後であった。安倍氏とモリソン氏は昼食を挟んで1時間の会談を行っている。その後で日豪首脳会談が始まっているが、その直前くらいのタイミングで会ったとのことである。
首脳会談の前に前首相と挨拶だけではない突っ込んだ話をする会談が行われるのは極めて珍しいことだ。菅政権も外交に関しては安倍路線の継承をしていく事になる。オーストラリア側も「安倍前首相と会いたい」と希望したようで、官邸もその方向で段取りをした事で先に安倍氏が会う、ということになったのである。
そもそも日本とオーストラリアの関係は安倍政権の7年8ヶ月でかなり深化させることができた。そして今回のマラバールも実施したように、日本・アメリカ・オーストラリア・インド、というこのクアッドの枠組みも今後はレベルアップをしていく、ということになる。そういう意味でオーストラリアは非常に重要なパートナーになった、ということであり、そうした基礎を作ってきた安倍前首相にまず会って意思確認をする…それから首脳会談に行く…という、このような段取りだったのである。
このような実際の動向に対して、マスメディアの取り上げ方はどうあったのであろうか。
今回のモリソン首相の来日と首脳会談は重要なことであるにも関わらず、この前掲の共同通信の記事も含めて日本の各紙の伝え方というのはどこかおかしい。今回の記事においては「部隊の訓練の円滑化で大筋合意をした」などというなんだかよく判らない書き方になっている。
日本がそういうことならば、オーストラリアのメディアはこれをどう伝えているのだろうか。オーストラリアは全国紙が2つくらいだが、そこでの報道は次のようになっている。
オーストラリア側ははっきりと「防衛協定」あるいは、訳語の問題だが、「安保条約」と言ってもいいくらいのニュアンスで書いているのである。見出しをそのようにしているだけでなく、最初の一文では「それに対して、歴史的な日豪の防衛協定に対して北京が激しく反応した」という見出しで書いており、「歴史的な」という部分をかなり強調しているのだ。
歴史的と言えるような防衛協定を日本とオーストラリアが締結したよ、と記しているのである。その為に我が首相(モリソン氏)はわざわざ日本まで行ってるんだ、というニュアンスで伝えているのに対して、日本のメディアはそのようなニュアンスが全く感じられない報道の仕方をしているのである。事の重要性を全然理解できていないかのような、軽すぎる記事になっているのだ。
有本氏も安倍前総理に会った時にモリソン首相の話を振ったところ、安倍氏は「いや、さっき会ってきたよ」と言っていたそうだ。防衛協定を含む話しについても「これは本当に大事なことなんだよね」と言っていたそうである。
それほど重大な用件だからこそモリソン首相は「帰国後の2週間自宅待機」を覚悟してでも日本に来て、直接菅総理と安倍前首相に会わなければならなかったのである。その重大性が日本のメディアでは全く報道されていないのだ。
挨拶や形式的な話とか打ち合わせ程度ならば、わざわざ日本までやって来ることはないだろう。せいぜいリモート会談で十分である。両首脳がちゃんと膝を突き合わせてこの問題を話し合って署名をしたという事が大事なのであるし、それだけ歴史的な出来事であるにも関わらず、この伝え方は酷すぎるのではないだろうか。
その歴史的な防衛協定に日豪双方が署名をした。そして中国がそれに対して激しく反発している。それを伝えているのは一般に言う「中国メディア」だが、このオーストラリア側記事では冒頭で「中国の宣伝機関」とはっきり書いている。中国メディアではないのだ。中国の宣伝機関は「日本とオーストラリアがこんな防衛協定を結んだことでそれなりの報いを受けるだろう」と怒りを表明している。さらに、「日本とオーストラリアはアメリカの道具なのか」と言って激しい憤りを見せている。しかしながら我々(オーストラリアと日本)はこのアジア太平洋を自由で開かれた地域として守り抜く為に両国で歴史的な防衛協定を結んだのである・・・このようにオーストラリアのマスメディアは書いているのだ。
これが事実であるにも関わらず、この共同通信をはじめとする日本のマスメディアはこの核心部分を伝える意思がまったく見られない。相当おかしい、と言える。
案の定、中国は反発してきているのだが、恐らく中国側が反発するだろうということを恐れるあまり、このような腰の引けた表現になっていると推測されるところである。だが、これでは真実がまったく伝わらないのである。今回の件を日本のメディア各紙はどのように伝えたか、下記にその比較を示す。
メディア各紙の見出しの比較
The Australian
「歴史的な豪日防衛協定に中国が反応」
朝日新聞
「日豪首脳が会談 軍事訓練に関する協定合意、中国を牽制」
産経新聞
「日豪首脳会談 「円滑化協定」に大枠合意 中国念頭「インド太平洋」推進
毎日新聞
「日豪、訓練円滑化で協定 首脳会談、大枠合意」
読売新聞
「『自由で開かれたインド太平洋』実現へ日豪で連携強化…首脳会談で一致」
豪紙は「歴史的な」と書いているのに、日本の各紙は「円滑化協定に大筋合意」といった既述にとどまっており、これでは何が何だか判らない。
訓練ということではマラバールを実施しているが、ここにアメリカは空母を出している。それだけ大掛かりな訓練である。元々はインドを含めた演習であるが、ここに日本の海上自衛隊も入って、オーストラリアも参加しているのだ。
これが一昨日の日豪首脳会談の日に「行われた」という発表を同時にしているのである。そうした一連の意味をもっときちんと伝えないと日本国民自体にもこの喫緊の状況や緊迫度合いが全く伝わらない。これは大問題である。
改めて日本のメディアがいかに中国に影響され侵食されているかが判る、というものであろう。
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共同通信の報道(2020年11月18日)
菅総理は米海兵隊トップのバーガー司令官と官邸で会談し抑止力強化の継続を確認した。両氏は海洋進出を強める中国を念頭に東シナ海で南シナ海で強化される一方的な現状変更の試みに深刻な懸念と強い反対を表明した。菅総理は「史上かつてなく日米同盟の抑止力・対処力の強化に向け引き続き協力を深めたいと伝達。一方、バーガー司令官は同盟の抑止力維持に向け変革を進め、一つのチームとして取り組みたい、とこれに応じた。
共同通信の報道(2020年11月17日)
菅総理は17日、オーストラリアのモリソン首相と官邸で会談し、西太平洋などへの軍事的拡大を続ける中国を念頭に安全保障協力の強化で一致した。会談後の共同記者発表で自衛隊とオーストラリア軍の共同訓練等に関する円滑化協定締結で大枠合意したと明らかにしました。また、経済分野での連携も確認し、特別な戦略的パードナーシップを深める方向性を確認したということです。日本の総理と外国首脳に依る国内での会談は新型コロナウィルスの影響で今年2月を最後に途絶えていて、9月に就任した菅総理にとっては初めて。菅総理が就任して最初で電話会談した相手もモリソン首相だった。
NHKニュースの概要(2020年11月17日)
安倍前総理は日本を訪れているオーストラリアのモリソン首相と都内のホテルでおよそ1時間会談し、アメリカやインドも含め安全保障分野での連携を強化していくことが重要だという認識で一致した。安倍前総理は11月にインド近海で行われた海上自衛隊とアメリカ、オーストラリア、インド
の各海軍に依る共同訓練マラバールに触れ、訓練が成功してよかったと述べた。安倍前総理は総理在任中にモリソン首相と3回会談しているほか、辞任表明後には電話会談でこれまでの友情と協力に感謝のいを伝えていた。
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18日の報道で、菅総理が海兵隊のトップと会談した、と伝えているが、この組み合わせの会談はレアであり、そんなにあることではない。
そもそも海兵隊というのは何か有事が起きた時にいの一番に駆けつける部隊である。その組織のトップと会談するというのは、現在の尖閣を中心に中国の侵略的な活動があまりにも活発化している実情がある一方で、アメリカの新政権(交代すると仮定して)の方向性が現時点では全く不明な状況である。その中で日米の連携をとにかく強くしなくてはいけないのであり、同時にそれを外に向けても見せなければいけない、ということで異例の会談になったのである。
オーストラリアのモリソン首相が今週の火曜日から来日しているが、これは元々は安倍政権時代の今年1月に来日の予定が延び延びになっていた、という経緯がある。ただ、今の時点でモリソン氏は来日すると帰国後に(ウィルス感染拡大防止の為に)2週間の自宅待機が課される事になる。そんな状況であるにも関わらず、電話会談ではなくてわざわざ日本に来るというのは「よほどのこと」なのである。
火曜日(17日)の午後に有本氏は安倍前総理に短時間だが会っている。それが安倍・モリソン会談の直後であった。安倍氏とモリソン氏は昼食を挟んで1時間の会談を行っている。その後で日豪首脳会談が始まっているが、その直前くらいのタイミングで会ったとのことである。
首脳会談の前に前首相と挨拶だけではない突っ込んだ話をする会談が行われるのは極めて珍しいことだ。菅政権も外交に関しては安倍路線の継承をしていく事になる。オーストラリア側も「安倍前首相と会いたい」と希望したようで、官邸もその方向で段取りをした事で先に安倍氏が会う、ということになったのである。
そもそも日本とオーストラリアの関係は安倍政権の7年8ヶ月でかなり深化させることができた。そして今回のマラバールも実施したように、日本・アメリカ・オーストラリア・インド、というこのクアッドの枠組みも今後はレベルアップをしていく、ということになる。そういう意味でオーストラリアは非常に重要なパートナーになった、ということであり、そうした基礎を作ってきた安倍前首相にまず会って意思確認をする…それから首脳会談に行く…という、このような段取りだったのである。
このような実際の動向に対して、マスメディアの取り上げ方はどうあったのであろうか。
今回のモリソン首相の来日と首脳会談は重要なことであるにも関わらず、この前掲の共同通信の記事も含めて日本の各紙の伝え方というのはどこかおかしい。今回の記事においては「部隊の訓練の円滑化で大筋合意をした」などというなんだかよく判らない書き方になっている。
日本がそういうことならば、オーストラリアのメディアはこれをどう伝えているのだろうか。オーストラリアは全国紙が2つくらいだが、そこでの報道は次のようになっている。
オーストラリア側ははっきりと「防衛協定」あるいは、訳語の問題だが、「安保条約」と言ってもいいくらいのニュアンスで書いているのである。見出しをそのようにしているだけでなく、最初の一文では「それに対して、歴史的な日豪の防衛協定に対して北京が激しく反応した」という見出しで書いており、「歴史的な」という部分をかなり強調しているのだ。
歴史的と言えるような防衛協定を日本とオーストラリアが締結したよ、と記しているのである。その為に我が首相(モリソン氏)はわざわざ日本まで行ってるんだ、というニュアンスで伝えているのに対して、日本のメディアはそのようなニュアンスが全く感じられない報道の仕方をしているのである。事の重要性を全然理解できていないかのような、軽すぎる記事になっているのだ。
有本氏も安倍前総理に会った時にモリソン首相の話を振ったところ、安倍氏は「いや、さっき会ってきたよ」と言っていたそうだ。防衛協定を含む話しについても「これは本当に大事なことなんだよね」と言っていたそうである。
それほど重大な用件だからこそモリソン首相は「帰国後の2週間自宅待機」を覚悟してでも日本に来て、直接菅総理と安倍前首相に会わなければならなかったのである。その重大性が日本のメディアでは全く報道されていないのだ。
挨拶や形式的な話とか打ち合わせ程度ならば、わざわざ日本までやって来ることはないだろう。せいぜいリモート会談で十分である。両首脳がちゃんと膝を突き合わせてこの問題を話し合って署名をしたという事が大事なのであるし、それだけ歴史的な出来事であるにも関わらず、この伝え方は酷すぎるのではないだろうか。
その歴史的な防衛協定に日豪双方が署名をした。そして中国がそれに対して激しく反発している。それを伝えているのは一般に言う「中国メディア」だが、このオーストラリア側記事では冒頭で「中国の宣伝機関」とはっきり書いている。中国メディアではないのだ。中国の宣伝機関は「日本とオーストラリアがこんな防衛協定を結んだことでそれなりの報いを受けるだろう」と怒りを表明している。さらに、「日本とオーストラリアはアメリカの道具なのか」と言って激しい憤りを見せている。しかしながら我々(オーストラリアと日本)はこのアジア太平洋を自由で開かれた地域として守り抜く為に両国で歴史的な防衛協定を結んだのである・・・このようにオーストラリアのマスメディアは書いているのだ。
これが事実であるにも関わらず、この共同通信をはじめとする日本のマスメディアはこの核心部分を伝える意思がまったく見られない。相当おかしい、と言える。
案の定、中国は反発してきているのだが、恐らく中国側が反発するだろうということを恐れるあまり、このような腰の引けた表現になっていると推測されるところである。だが、これでは真実がまったく伝わらないのである。今回の件を日本のメディア各紙はどのように伝えたか、下記にその比較を示す。
メディア各紙の見出しの比較
The Australian
「歴史的な豪日防衛協定に中国が反応」
朝日新聞
「日豪首脳が会談 軍事訓練に関する協定合意、中国を牽制」
産経新聞
「日豪首脳会談 「円滑化協定」に大枠合意 中国念頭「インド太平洋」推進
毎日新聞
「日豪、訓練円滑化で協定 首脳会談、大枠合意」
読売新聞
「『自由で開かれたインド太平洋』実現へ日豪で連携強化…首脳会談で一致」
豪紙は「歴史的な」と書いているのに、日本の各紙は「円滑化協定に大筋合意」といった既述にとどまっており、これでは何が何だか判らない。
訓練ということではマラバールを実施しているが、ここにアメリカは空母を出している。それだけ大掛かりな訓練である。元々はインドを含めた演習であるが、ここに日本の海上自衛隊も入って、オーストラリアも参加しているのだ。
これが一昨日の日豪首脳会談の日に「行われた」という発表を同時にしているのである。そうした一連の意味をもっときちんと伝えないと日本国民自体にもこの喫緊の状況や緊迫度合いが全く伝わらない。これは大問題である。
改めて日本のメディアがいかに中国に影響され侵食されているかが判る、というものであろう。